「基本的な生活」の「な」は省略可能? 「的」の用法について


 

「的」の用法について

「的」が持つ2つの用法

 「的」は大きく分けて2つの用法があります。

 一つは、名詞の後ろについてナ形容詞を作り、そのような性質を持っていることや、その方面に関わっていることを表す用法です。例文(2)(3)のように、「な」を使わず直接名詞を修飾することもできます。

 (1) 建設な議論
 (2) 科学見地
 (3) 公年金
 (4) 一般なお風呂の大きさ

 もう一つは「わたし的には」「個人的には」などの使い方で、「~にとっては/としては」に相当する意味を表す用法です。

 (5) この量はわたしには大満足です。
 (6) 彼には一度も会った事ないけど、イメージにはイケメンそう。
 (7) あの店人気らしいけど、個人には美味しいとは思わない。

 
 以上が「的」の基本的な使い方です。
 そしてこの間学生からこんな質問が来ました。

「比較的短期間での新型コロナウイルス感染症の効果的抑制と、人民の基本的生活の保障は並大抵ではなく、成し遂げるのに困難を極めた。」
この文の「効果的」と「基本的」にはどうして「な」が付いていないんですか?

 唸りたくなるくらいめちゃくちゃ良い質問です。

 

「基本的な生活」の「な」は省略可能?

 色んな用例集めて調べてみました。

~的+漢語 ~的+外来語
公的な年金 公的年金 潜在的なニーズ 潜在的ニーズ
基本的な人権の尊重 基本的人権の尊重 非言語的なコミュニケーション 非言語的コミュニケーション
知的な好奇心 知的好奇心 圧倒的なパフォーマンス 圧倒的パフォーマンス
心的な外傷 心的外傷 物理的なセキュリティ 物理的セキュリティ
衝撃的な体験 衝撃的体験 画期的なアイディア 画期的アイディア
論理的な構造 論理的構造 戦略的なマーケティング 戦略的マーケティング
社会的な制裁 社会的制裁 圧倒的なコストパフォーマンス 圧倒的コストパフォーマンス
画期的な商品 画期的商品 動的なサイト 動的サイト
先天的な疾病 先天的疾病 実践的なプログラミング 実践的プログラミング
爆発的な威力 爆発的威力 衝撃的なサプライズプレゼント 衝撃的サプライズプレゼント
衝動的な行動 衝動的行動 精神的なストレス 精神的ストレス
定期的な変更 定期的変更 感動的なプロポーズ 感動的プロポーズ
建設的な議論 建設的議論 画期的なペン △画期的ペン
静的な動詞 静的動詞 本格的なカレー △本格的カレー
偶発的な事故 偶発的自己 個性的なケーキ △個性的ケーキ
印象的な広告 ✕印象的広告 印象的なデザイン △印象的デザイン

 「的」の後ろに漢語が来るケースと外来語が来るケースで検証です。
 漢語、外来語が後続するパターンは、そのほとんどが「な」の省略が可能でした。

 まずは漢語。
 「公的年金」「基本的人権の尊重」「知的好奇心」「心的外傷」のように、特定の言い方で既に定着しているものはそのように言われることが多いですが、「な」を挿入したとしても何ら間違いではありません。また、調べた中での唯一の例外は「印象的な広告」です。「印象的広告」というと何だか違和感があります。

 次に外来語。
 外来語も漢語同様、その多くは「な」が省略可能でした。ただし「画期的ペン」「本格的カレー」「個性的ケーキ」はちょっと怪しい…。使われている例も見つけましたが、かなり少数な上に違和感が拭えません。推測ですが、「ペン」「カレー」「ケーキ」のように十分日本語として定着している外来語はもしかしたら「な」を省略しにくいのでしょうか。この辺りは要検証です。そして漢語と同じく「印象的デザイン」はやや疑問が残る結果になっています。

 

~的+和語
継続的な取引 継続的取引
圧倒的な近さ 圧倒的近さ
一般的なお風呂 ✕一般的お風呂
本格的な味 ✕本格的味
脅威的な形 ✕脅威的形
先天的な病 ✕先天的病
知的な人 ✕知的人
楽観的な考え方 ✕楽観的考え方
奇跡的なできごと ✕奇跡的できごと
性的な目 ✕性的目
消極的な言葉 ✕消極的言葉
具体的なやり方 ✕具体的やり方
抽象的な話 ✕抽象的話
印象的な人 ✕印象的人

 最後に和語です。
 和語は漢語、外来語とはうってかわって、そのほとんどが「な」を省略できない結果になりました。
 省略しても大丈夫だったのは「継続的取引」と「圧倒的近さ」です。他にも省略可能な例は存在すると思いますが、しかしながら「的」に和語が後続する場合は「な」を省略しにくいというのが原則のようです。

 

まとめ

~的な+漢語 ほとんどOK!
~的+漢語 ほとんどOK!
~的な+外来語 ほとんどOK!
~的+外来語 ほとんどOK!
~的な+和語 ほとんどOK!
~的+和語 ほとんどダメ…

 「基本的人権の尊重」のような固定表現はそのまま使うのが最も良いのですが、別に「な」を挿入したところで問題はありません。
 漢語、外来語、和語、全ての語種に共通して言えることは、「な」を省略すると違和感がある表現が出てくる(可能性がある)ということです。ですからもし困ったときは「な」を省略せずに使うこと。それが最も安全な方法です。

 





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