「今」はごく近い未来も過去も表せる不思議な語
(変な音が聞こえて)
私:今の音、何だろう?
学生:今? さっきじゃないですか?
以前こんな会話をしたことがあります。
その時に「今」という言葉は、現在だけではなく過去も未来も表せるんだと気づきました。
①現在・現代
「今」の最も基本的な意味は「現在/現代」です。これは説明不要の用法でしょう。
(1) 「今何してるの?」「今テレビを見てる」
(“你现在干嘛呢?”“我现在正在看电视。”)
(2) 今なら半額です。
(现在的话是半价。)
(3) 今は我慢の時だ。
(现在是忍耐的时候。)
②ごく近い未来
以下のような場面ではごく近い未来を表すために「今」を用います。「あと少し」「もうすぐ」等に言い換えることができるケースです。
(4) 「あと何分かかりそう?」「もうすぐです。今着くところです。」
(“接下来还需要几分钟。”“很快,马上就到了。”)
(5) 「荷物お届けに参りました。」「はい、今行きます。」
(“我来给您送快递。”“好的,马上去。”)
(6) 「ご飯できたよ。ゲーム早く終わりなさい。」「今終わる。ちょっと待って。」
(“饭做好了,快点结束游戏吧。”“马上就结束了,等一下。”)
③ごく近い過去
さらに以下のような場面では、ごく近い過去を表すために「今」を用います。「さっき」が表す時間よりもさらに”今”に近い時間帯を指します。
(7) 「映画見てるの? 最初からにして一緒に見よう?」「今見始めたばかりだよ。」
(“你正在看电影吗,从头开始我们一块看吧。”“我刚刚开始看。”)
(8) 「(何かの音を聞いて)今の音、何の音かな?」
((听到有声音)“刚才的是什么声音?”)
(9) 「(すれ違った人を見て)今の人、どこかで見たことあるような…」
((看着刚擦肩而过的人)“刚才那个人感觉好像在哪见过。”)
(10) 「今見たことは全て忘れろ。他の人に話すなよ。」
(“把你刚看到的事都忘掉,不许和别人说。”)
ごく近い過去を表す「今」と「さっき」の違い
「今の音、何?」と「さっきの音、何?」では、音が聞こえた時から現在までの時間的距離が異なります。
(変な音が聞こえてすぐ)
A:今の音、何だろう?
B:何だろうね。交通事故でも起きたのかな。
音が聞こえてすぐの場合は「今」が使えます。
(変な音が聞こえて)
A:…それで、Cに告白されたんだって。
B:ホント? あの二人ならお似合いかもね。
…ところでさっきの音何だろう?
音が聞こえてすぐではない場合、例えば話の途中で中断できず、一言二言やり取りしてから変な音に話題転換する等の場合は「さっき」が使えます。
自然な会話のために「今」を使えるようになりましょう!