日経平均が~円を回復、「~に回復」じゃないの?

 アナウンサー「日経平均株価が1万9000円 回復しました。」

 ニュースを見ていて、この「を」はどういう意味だろう。「に」を使った方が自然なんじゃないか、と思いました。

 (1) 雪が雨変わった。(雪变成了雨。)
 (2) 子供を公務員したい。(想让孩子当公务员。)

 格助詞「に」には変化の結果を表す用法があり、変化の結果1万9000円になった、あるいは1万9000円に到達したと解釈できます。
 「に」でもいいのに、なぜ「を」を使うんでしょう。

 

「回復する」は自他を兼ねる

 
 「回復する」は自動詞でもあり、他動詞でもある自他動詞です。

 (3) 怪我から回復する。(自動詞用法)
 (4) 病気が回復する。(自動詞用法)
 (5) 天候が回復する。(自動詞用法)
 (6) 機能が回復する。(自動詞用法)
 (7) 機能を回復する。(他動詞用法)
 (8) 名誉を回復する。(他動詞用法)
 (9) 信用を回復する。(他動詞用法)
 (10) サンフランシスコ平和条約により日本は主権を回復した。(他動詞用法)

 「回復する」は”一度悪い状態になったものが、元の状態になること”と説明されますが、上記の例文から見ると、①身体的な怪我や精神的な病が治ること②失われたものを取り戻すこと、の2つの意味があるように感じます。

 冒頭の「日経平均株価が1万9000円 回復しました。」の「を」は、他動詞用法で1万9000円台を取り戻したことを表しているといえます。

 

「~を回復」と「~に回復」の違い

 では、例文(11)(12)の場合は何が違うのか。

 (11) 1万9000円を回復した。
 (12) 1万9000円に回復した。

 「に」を用いているほうは自動詞用法。「に」は結果、到達点ですから、1万9000円がその結果であることを明確に表しています。一方「を」を用いると、1万9000円は結果や到達点ではなく、株価変動上の通過点として扱われています。この点が両者の違いになり得るでしょう。

 ただ、一つ疑問が。
 「を」を用いている(11)は他動詞用法です。他動詞は意志を持って行われる動作を表すので、動作主が意志的に1万9000円を取り戻したと考えたいのですが、反発で株価が上昇したのが意志的なのかどうかは甚だ疑問です。他動詞用法ですが、自動詞の要素もある気がしないでもない。この辺りは私も全く分かりません。

 そもそもニュースで使われているくらいですから文句のつけようなんてない正しい日本語です。「に」でも「を」でも正しいですし、違いも微々たるものですから本来意識する必要はないのでしょう。

 





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