令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 BICSとCALP

 BICSとCALPはよく出題されるんで覚えておきたい用語です!

 BICS(生活言語能力)
 日常生活で最も必要とされる言語能力のこと。主に話したり聞いたりする能力が中心。日常生活の対人場面ではジェスチャーや表情、状況などの非言語情報が豊富にあるため、コンテクストに支えられているBICSの習得は認知的な負担が少なく、2年ほどで習得可能とされている。

 CALP(学習言語能力)
 教科学習などで用いられる抽象的な思考や高度な思考技能のこと。学習の場面では聞いたり話したりする能力も必要だが、BICSよりも読んだり書いたりする能力が特に必要になる。非言語情報があまりない低コンテクストの状態になりやすく認知的な負担が大きいため、習得には5~7年必要だとされている。

 
 選択肢1
 カミンズ (Cummins)が提唱した発達相互依存仮説では、第一言語能力と第二言語能力の転移の可能性について述べられています。これは母語が発達していると第二言語も発達しやすくなり、母語が未発達だと第二言語も発達しなくなるという考えで、その様子を二つの氷山にたとえました。二つの氷山(言語)は深層で共有基底言語能力を有しているとされています。
 「母語で培った認知能力が発達を妨げる」は間違い、逆です。正しくは「母語で培った認知能力は第二言語の発達に役立つ」です。

 選択肢2
 BICSもCALPも言語能力ですから、当然コミュニケーションを介して発達します。

 選択肢3
 BICSは日常生活で必要な言語で、言語そのものが理解できなくても、相手の表情や態度、状況などの非言語情報から意味を推測できたりします。つまり高コンテクストで場面依存的です。逆にCALPは学習場面で使う言語なので非言語情報が少なく、場面にあまり依存しない低コンテクストの状態になりやすいです。
 この選択肢は逆です。

 選択肢4
 上述している通り、BICSは2年程度、CALPは5~7年かかるといわれています。これも逆です。

 したがって答えは2です。

 参考:第二言語習得理論についてまとめ!

 

問2 リキャスト

 訂正フィードバックは、暗示的か明示的か、インプット誘発型かアウトプット促進型かに分けられます。
 暗示的フィードバックは会話の流れを保ったまま自然な応答の中でさりげなく訂正するタイプで、明示的フィードバックは誤用の存在をはっきりと示すタイプのフィードバックです。

 インプット誘発型は学習者に正用を与えるタイプです。
 アウトプット促進型は学習者に自己訂正を促すタイプでプロンプトとも呼ばれます。

暗示的 理解確認 学習者の発話に対して、自分の理解を述べ、正しいかどうかを確認する。 正用を提示する
インプット誘発型
リキャスト 間違っている箇所のみを正しく言い直して提示する。
明確化要求 学習者の言っていることが理解できなかったことを伝える。 自己訂正を促す
アウトプット促進型
(プロンプト)
繰り返し
(反復)
間違っている部分や発話そのものをそのまま繰り返す。
明示的 メタ言語的
フィードバック
文法を説明したり、情報を与えたりして間違っていることを教える。
誘導
(引き出し)
途中まで文を与えるなどして、正しい言い方を引き出す。
明示的訂正 間違いがあることを指摘し、正しい言い方を提示する。 正用を提示する
インプット誘発型

 1 相手の内容を繰り返して自己修正を促しています。プロンプトです。
 2 これは明確化要求だと思われます。明確化要求はプロンプトです。
 3 途中まで文を与えて正しい言い方を引き出そうとする誘導です。これもプロンプト。
 4 会話の流れを遮らずに正しい言い方を示している、これがリキャスト!

 したがって答えは4です。

 

問3 不安を軽減するための対応

 選択肢1
 文法的に正しい表現が言えるかどうか、そこが不安だからうまく話せなくなるって人は多いです。なので文法とかはとりあえずほっといて、単語単語でもいいから伝えることを優先してみてみたいな指導は良いと思います。

 選択肢2
 日本での日本語を母語としない児童生徒に対する指導では、日常会話ができるようになるまで教科学習の支援を行わないのは現実的ではありません。
 どちらも同時に支援していくべきです。

 選択肢3
 不安軽減のために児童生徒の母語を使うことはいいことです。児童生徒が分かってる言葉で話しかけてあげるのも重要。

 選択肢4
 文化や規範を押し付けるのは好ましくありませんし、日本語を使うように指導することは逆に不安を感じさせてしまいます。

 したがって答えは1です。

 

問4 喪失されやすい順序

 母語(第一言語)を失うことを言語喪失 (Language attrition)と言います。
 この研究に関するものを見つけられずにいるので根拠は示せませんが、音は耳に残るので忘れにくいのかもしれません。言葉を使わないとあれ何て言うんだっけのように語彙を忘れやすくなりますが、語順や活用などはそれよりも覚えやすいのでしょう。私はこのように理解することにしました。

 したがって答えは4です。

 

問5 母語保持

 バイリンガル教育は2つの言語能力を育成するための教育で、到達目標によって2つに分けられます。

最終目標は
一言語使用
(消極的)
移行型バイリンガル教育 家庭で使用する言語から社会で使用する言語に移行して、社会に同化させるために行われる。
サブマージョン・プログラム 少数派言語の学習者を多数派言語のクラスに置いて多数派言語しか使用せずに行う教育。サブマージョンは「沈める」の意。
最終目標は
ニ言語使用
(積極的)
維持型バイリンガル教育 家庭で使用される少数派言語と社会で使用される多数派言語を同時に伸ばし、アイデンティティの強化を図る教育。
イマージョン・プログラム 学校で二つの言語を使い分け、第一言語を維持しながら第二言語を習得させるとともに教科学習も行う教育。イマージョンは「浸す」の意。

 選択肢1
 イマージョン教育の目的は言語能力を育てることです。もっともらしいことを書いていますが、イマージョン教育の目的は母語保持じゃないです。目的が違います。

 選択肢2
 取り出し授業はクラスのレベルに追いつけない学習者に対して、在籍学級以外の教室で個別に行う授業のことです。取り出し授業は言語能力を育てることが目的であって、母語を保持させるために行うんじゃないです。

 選択肢3
 正しいです。若ければ若いほど言語は習得しやすくなりますが、それを使う環境にいないと忘れやすいです。

 選択肢4
 読み書きのほうが保持が難しいです。母語喪失は最初は読み書きから始まり、最後に残っているのはわずかな口頭能力です。そういうもんなんだなーって覚えてください。

 したがって答えは3です。

 





2020年10月5日令和元年度, 日本語教育能力検定試験 解説