令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 社会的リソース

 突拍子もなく「社会的リソース」という言葉が出てきていますが、リソースとは自律学習で学習者が利用する学習に役立つもののことを指しています。学習者が利用するリソースは、人的リソース、物的リソース、社会的リソースに分けられます。

人的リソース 教師、友人、クラスメイト、地域住民…
物的リソース Webサイト、動画、教科書、辞書、新聞、美術館、博物館、デパート…
社会的リソース SNS、地域社会、コミュニティ、アルバイト、職場、サークル活動、ボランティア活動…

 1 人的リソース
 2 社会的リソース
 3 物的リソース
 4 物的リソース

 したがって答えは2です。

 

問2 ティーチャー・トーク

 1 ティーチャー・トーク
 教師が学習者に対してする話し方のことです。学習者のレベルによってその話し方は変わります。

 2 ラポート・トーク
 自分の主観や感想を交えて相手の情緒に働きかけることで共感を得ようとする話し方のことです。

 3 ケアテイカー・スピーチ/育児語(caretaker speech)
 大人が乳幼児に対して話しかける時に用いる独特な口調や言葉遣いのこと。独特の抑揚をつけて話され、ジェスチャーなどを頻繁に伴う傾向があり、スピードもゆっくりではっきり話し、同じ語や句を繰り返す特徴があります。
 育児語は保護者が幼児に教える言葉で、幼児語は幼児が使う言葉。

 4 インナー・スピーチ(内言語)
 思考活動において心の中で用いられる、実際に音声となって発されない言語のことです。

 相手は「学習者」で、コミュニケーションを図りやすくする話し方なので、ティーチャートークに間違いありません。
 したがって答えは1です。



問3 指示質問

 質問の分類はこうなってます! 特に出題されているのは提示質問と指示質問です。

質問者が
知っているか
どうか
提示質問
ディスプレイ・クエスチョン
質問者が答えを知りながら尋ねる質問形式のこと。
指示質問
レファレンシャル・クエスチョン
質問者が答えを知らない状態で尋ねる質問形式のこと。
答え方の
自由度
オープン・クエスチョン 相手が自由に考えて答えることができる質問のこと。「どう」「なぜ」などを用いた質問がこれにあたる。
クローズド・クエスチョン 相手の答える内容が限定されている質問のこと。「はい」「いいえ」で答えられるYes/Noクエスチョンと、択一形式のオルタナティブ・クエスチョンに分かれる。

 1 作れるかどうかを聞いているので、答えは作れるか作れないかの二択。クローズド・クエスチョンです。
 2 自分が知らない情報を聞いているので、指示質問です。
 3 答え方の自由度は高そうなのでオープン・クエスチョン
 4 答え方の自由度は高そうなのでオープン・クエスチョン

 したがって答えは2です。

 

問4 板書の留意点

 1 時間がかかるので、必要なことだけ板書すべきです。
 2 出てきた単語を記すだけでなく、理解を促すために絵や図を描いたり、ポイントなどあれば板書するべきです。
 3 書く内容は教案を作る段階である程度想定しておきつつ、学習者の反応で臨機応変に変更していくべきです。
 4 正しいです。

 試験の出題者は、先生はしっかり教案作って教案に沿ってやっていきましょうみたいな考え方が好きみたい。経験からすると、教案作りこみ過ぎると授業って柔軟性なくなってつまらなくなりがち… このあたりは先生の裁量ではあります。
 
 したがって答えは4です。

 

問5 絵教材

 絵教材は、何か絵が描かれている大きめのカードみたいなもの(絵カード)のことです。リンゴが書かれているカードを見せて、それがキューとなり何か練習をするような使い方をします。

 1 正しいです。絵カードやフラッシュカードはその課で必要なものだけ使い、その提示順に注意し、テンポよく見せます。
 2 あらかじめ全て貼っておくのではなく、適切なタイミングで見せるべきです。全部見せたらフラッシュ感ない…
 3 手書きの絵というのも興味は引けるんで賛成! でもそれで分かりづらくなるくらいなら分かりやすいものを使った方がいいです。
 4 絵で単語を導入する場合、その物事だけが書かれたものを使うべきです。周囲の物も細かく書かれていると、かえって分かりやすさが失われることもあります。

 したがって答えは1です。

 




2023年8月26日令和元年度, 日本語教育能力検定試験