令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説
(6)言語記号の恣意性
1 言語記号の蓋然性
調べても見つかりませんでした。
2 言語記号の恣意性
言語の文字や音声(シニフィアン)が、それが指し示す意味内容(シニフィエ)との間に必然的な繋がりがないこと。例えば、赤くて丸い果物を「りんご」と書いたり、[riŋŋo]と呼んでいるのは、昔からそのように呼んでいるからに過ぎない。日本語では[riŋŋo]と発音するものの、別の言語では別の呼び方をされているのはこのためだとされる。
3 言語記号の経済性
言語記号にはその使用の負担を軽減したりするような働きがあるというもの。例えば、「りんご」を「赤くて丸い果物」と表現するのは前者の方が短くて済み、さくらんぼ等との混同も回避できる。多くの略語が生まれた理由や、ら抜き言葉などの時代に伴う言葉の変化も言語記号の経済性から説明することができる。
4 言語記号の構成性
調べても見つかりませんでした。
「必然的な関係がない」が恣意性のことですね。
したがって答えは2です。
(7)日本語のオノマトペの特徴
「くるくる」と「ぐるぐる」、「ころころ」と「ごろごろ」等に見られるように、清音のほうは比較的軽めのものを、濁音のほうは重めのものを表します。
したがって答えは1です。
(8)擬態語
オノマトペは以下のような分類があります。
擬態語 | 擬態語 | 動きの様態や状態を表すもの。キラキラ、ねばねば、キョロキョロ、ぐにゃぐにゃ、さらさら… |
---|---|---|
疑情語 | 人の感情や心理的側面を表すもの。イライラ、わくわく、るんるん、カンカン、メロメロ… | |
擬音語 | 擬声語 | 人の声や鳴き声を描写したもの。ワンワン、チュンチュン、カーカー、わーわー、ニャーニャー… |
擬音語 | 人の声や鳴き声以外の自然界の音を描写したもの。ドンドン、ビリビリ、びゅーびゅー、コンコン、ゴロゴロ… |
1 おそらく擬音語。ささやき声は聞こえるので。
2 擬情語
3 擬態語
4 擬音語
したがって答えは3です。
(コメントでのご協力ありがとうございました!)
(9)擬音語と擬態語
選択肢1
「草むらからがさがさと音がする」の「がさがさ」は実際に聞こえる音を表しているので擬音語、「足の裏ががさがさになる」の「がさがさ」は状態を表しているので擬態語です。また、「蜃気楼がゆらゆらと揺れている」のように「と」を使っても擬態語を表す用法もあるので、「と」だから擬音語、「に」だから擬態語とは言えません。オノマトペの後接成分が「と」なら擬音語も擬態語もありえます。
選択肢2
ここでいうゼロ形態 (zero morpheme)とは意味はあるが形式がない形態を指します。ギリシャ文字の「Φ(ファイ)」で表記します。例えば、「歌聞く」では本来あるべきヲ格が省略されており発音はされません。しかし、ヲ格があっても無くても意味は変わらないため、言語学では「歌 Φ 聞く」というように、”ゼロ格がある”と考えます。「びりびり破く」と「びりびりと破く」は意味が同じなので、ここにもゼロ形態があると見なせます。
「ゆらゆら揺れる」「びりびり破く」のように、ゼロ形態だとしても擬音語、擬態語を表すことができますし、「がさがさと音がする」のように、「と」がついても擬音語を表せます。この選択肢は誤りです。
選択肢3
擬音語「ぎゃあぎゃあ」は「ぎゃあぎゃあと泣く」のように「泣く」という動作の様子を修飾しています。
結果を修飾してるわけじゃありません。
それに、選択肢には「擬態語」と書いてますけど「ぎゃあぎゃあ」は擬音語の用法しかありません。その点から見ても間違い。
※コメントでのご指摘ありがとうございました!
選択肢4
「かちんかちん」は物の硬さを表す擬態語で、「かちんかちんに凍る」のように結果を修飾する場合は「に」が必要。なのでこの選択肢は正しいです。
したがって答えは4です。
(10)接尾辞
選択肢1
接尾辞「つく」は擬態語・擬音語について、その状態になってくる様子を表します。まごつく、いらつく、いちゃつく、うろつく、ぐらつく、ざわつく、べたつく、むかつく、もたつく、よろつく等、たくさんあります。
選択肢2
きらきら → きらめく 等だと思います。
そのほか特定の名詞について、「~のような感じがする」という意味を表します。これは春めく、謎めく等ですが、これはオノマトペとは関係なさそう。
参考:【N1文法】~めく/めいて/めいた
選択肢3
接尾辞「なる」は存在しません。「連なる」「重なる」などの「なる」は動詞の一部分で、接尾辞の「なる」じゃないので勘違いしないように。
選択肢4
接尾辞「張る(ばる)」は、その様子が通常の程度を超えていることを表します。角ばる、格式張る等…
格式張るはちょっとオノマトペではないんですけど、角ばるは「かくかく」というオノマトペとイメージが同じですので、たぶんこれを指しています。
したがって答えは3です。
ディスカッション
コメント一覧
こんにちは。私も今年の試験を受験し、(8)はやはりよくわかりませんでした。
私もブログに自分なりの解説を書いており、
http://tomoto335.hatenablog.com/entry/nihongo-jltct-2019-answer-1-1
この問題について納得いく理由を探していたところ、「日本語オノマトペ語彙の語源について」という論文を見つけました。
http://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=BD00002469&elmid=Body&fname=KJ00003971927.pdf
この論文では、最初からオノマトペとして成立した「真正オノマトペ」と、他の言葉から生まれたオノマトペっぽいものとを区別しています。「しぶしぶ」は「しぶい」の形容詞語幹の繰り返しなので後者であり、つまり厳密にはオノマトペではない、という理屈なのではないか?というのが今の私の理解です。いずれにしても、日本語教師の基礎知識としてこんなものが必要か?というとそうではないと思いますが。(苦笑)
上のブログの受験体験記にも書きましたが、試験勉強にあたりそうじさんの解説には大変お世話になりました。少しでも御恩返しになれば幸いです。
追加情報です。
「オノマトペに見る漢語の影響 : 和語系オノマトペと漢語系オノマトペの関わり」という論文にも関連する記述がありました。
https://juen.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=5588&item_no=1&page_id=13&block_id=30
この論文によると、天沼寧による擬音語・擬態語辞典では、「名詞・副詞・動詞の連用形・その他の品詞の一部などを二つ重ねて畳語にしたもの」は「形はにているが、擬音語・擬態語としないもの」とされているそうです。またその具体例として「あかあか」「いきいき」「うすうす」「しぶしぶ」が挙げられているとのことです。これは私の前のコメントで参照した論文よりも直接的な、根拠らしい根拠と言えるかもしれません。
>Tomotoさん
コメントありがとうございます! この問題は手がかりが全くなかったので、答えだと思う選択肢3の根拠を示していただいて助かりました。まだ正答が3だと確定したわけではないですが、もしご指摘のような理由で「しぶしぶ」が擬態語ではなかったとすれば、日本語教育能力検定試験のオノマトペに対する態度が明らかになり、今後の対策にも繋がりそうです。本当にありがとうございました!
リプライありがとうございます!お役に立ててよかったです。そうですね、本試験の立場が解明できて後進の人たちの助けになると素晴らしいですね。今後ともよろしくお願い致します!
先生、いつも解りやすい解説をしていただき、大変有り難く助かっています。
令和元年度、問題Ⅰ 3b(9)選択肢3の先生の解説について質問させて下さい。
私は、選択肢3は[ぎゃあぎゃあと]は、擬態語ではなく擬音語だと思い×で、4[かちんかちんに]は擬態語というところだけで、4を選択しました。
選択肢3の[ぎゃあぎゃあと泣く]という使い方をすれば、擬態語になるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
>CHIKAさん
こんにちは! お答えします。
選択肢3の「ぎゃあぎゃあ」は確かに擬声語です! 「ぎゃあぎゃあと泣く」としても擬声語です。
選択肢3には「擬態語の用法」と書いてますが、確かにこれだけ見れば間違いって分かりますね! 全く気付きませんでした。そういう観点で3を排除するのは問題ありません。
でも選択肢4は気を付けてくださいね。「かちんかちん」は擬態語の用法が確かにありますけど、だからといって「擬態語」と書かれてる4を選択するのは危なく見えます… 結果答えは合っていますが、「結果を修飾する」の部分にノータッチだと間違えるかもしれません。
選択肢3の解説については更新しておきます。ご指摘ありがとうございました!
先生、早速のお返事ありがとうございました。
指摘をしたつもりは全くなく、先生の解説を見て、問題文は最後まで読まなくてはいけないと、改めて認識しています。肝に命じます。他の方々の解説を見ていますと、ここまで丁寧に解説されているのはなかなかなく、非常に有り難く感謝しております。これからも、先生の解説で勉強頑張っていきます。また質問もするかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。
はじめまして。昨年、まったくの独学から勉強を開始し挫折しそうになった時、どんなテキストよりも分かりやすい、このサイトに巡り会えて勉強を継続しています。おかげさまで、今では、このサイトが私にとっての「スキャフォールディング」で、楽しく勉強を続けられるようになりました。本当にありがとうございます!!
過日、2万円以上も交通費をかけて、某大手教育会社の「2019問題無料説明会」へ行ってきたのですが、あまりにもお粗末な講義でガッカリでした。帰宅後、説明会で聞いた内容のメモを元に復習しているのですが「?」の連続で、そんな時もこのサイトの解説を読んで納得しています。問題の解答だけでなく周辺情報まで深堀りした説明にも感激です。これからもよろしくおねがいします。
>Hiroshiさん
コメント頂きありがとうございます。とても嬉しいです!
2019年度の問題はまだ全て解説できていませんが、今年中に全てまとめるつもりです。ただ来年3月に発売される2019年度の試験問題を見るまでは誰も正答を知らないので、今まとめている解説は参考程度に留めていただければと思います。何か少しでも疑問点などありましたらぜひコメントください。
https://jpnculture.net/jogo-onomatopee/
https://core.ac.uk/download/pdf/147852557.pdf
しぶしぶは、分類の仕方によっては擬情語に分類されるようです。
>匿名さん
貴重なコメントありがとうございます! こんな言い方があるなんて知りませんでした!