フィードバックと肯定証拠、否定証拠についてまとめ!
ここではフィードバックと肯定証拠、否定証拠についてまとめています。
間違いなどありましたらコメントください。
フィードバック (feedack)
フィードバック
学習者の発話に対して何らかの反応を示すことをフィードバックと言います。フィードバックはまず肯定的なものと否定的なものに分けられます。
肯定的フィードバック | 学習者の発話や書いたものに対して肯定的な反応を示すこと。学習者を褒めたりすること。 |
---|---|
否定的フィードバック訂正フィードバック | 学習者の誤った発話や書いたものに対して否定的な反応を示し、訂正すること。 |
訂正フィードバックは、暗示的か明示的か、インプット誘発型かアウトプット促進型かに分けられます。
暗示的フィードバックは会話の流れを保ったまま自然な応答の中でさりげなく訂正するタイプで、明示的フィードバックは誤用の存在をはっきりと示すタイプのフィードバックです。
インプット誘発型は学習者に正用を与えるタイプです。
アウトプット促進型は学習者に自己訂正を促すタイプでプロンプトとも呼ばれます。
暗示的 | 理解確認 | 学習者の発話に対して、自分の理解を述べ、正しいかどうかを確認する。 | 正用を提示するインプット誘発型 |
---|---|---|---|
リキャスト | 間違っている箇所のみを正しく言い直して提示する。 | ||
明確化要求 | 学習者の言っていることが理解できなかったことを伝える。 | 自己訂正を促すアウトプット促進型(プロンプト) | |
繰り返し(反復) | 間違っている部分や発話そのものをそのまま繰り返す。 | ||
明示的 | メタ言語的フィードバック | 文法を説明したり、情報を与えたりして間違っていることを教える。 | |
誘導(引き出し) | 途中まで文を与えるなどして、正しい言い方を引き出す。 | ||
明示的訂正 | 間違いがあることを指摘し、正しい言い方を提示する。 | 正用を提示するインプット誘発型 |
肯定証拠と否定証拠
学習者に与えられるインプットの分類
第二言語学習者に与えられるインプットは肯定証拠と否定証拠の2つに分類されます。
肯定証拠 | 学習者が実際に見たり聞いたりする正しい文法を用いた表現のこと。授業や母語話者などから受け取るインプットの大半を占める。 |
---|---|
否定証拠 | 第二言語学習者に与えられるインプットのうち、誤った文法のこと。授業や母語話者などから受け取るインプットは通常肯定証拠が大半を占めるため、否定証拠はインプットとして通常起こらない。ただし、第二言語学習者にとっては、誤った文法は指摘されなければ誤ったものだと気づくことができないことが多いため、学習者に否定証拠を与えることはフィードバックとして捉えられることもある。 |
明示的フィードバックの場合
学習者:教室では6人います。
教 師:「教室には」ですよ。
学習者:教室には6人います。
この学習者は範囲の「で」と存在する場所を表す「に」を混同しています(中国語母語話者にある誤用)。そのエラーに対して教師は明示的フィードバックを与えています。
ここで学習者は自分の言った内容に間違いがあるのだという否定証拠を受け取るとともに、教師から正しい表現についての肯定証拠も受け取っています。しかし、学習者は教師の言った内容を繰り返しているだけかもしれません。実際のところ「で」と「に」の使い分けに関する規則についての肯定証拠を得られていないこともあります。
【否定証拠】「教室では」が誤りであること
【肯定証拠】「教室には」が正しい表現であるという情報 (+「に」と「で」の使い分けについての規則に関する情報)
暗示的フィードバックがうまくいかなかった場合
学習者:教室では6人います。
教 師:教室では?
学習者:・・・?
上記の会話では、教師は暗示的フィードバック(プロンプト)を与えています。
暗示的フィードバックは、学習者がそれ自体をフィードバックだと気づかないこともありますが、気づいた場合は自分の言った内容に間違いがあるのだという否定証拠を受け取れます。
【否定証拠】「教室では」が誤りであること
【肯定証拠】-
暗示的フィードバックがうまくいった場合
学習者:教室では6人います。
教 師:教室では?
学習者:あっ、教室には6人います。
暗示的フィードバックは正しい形式を直接提示しないので教師側から直接肯定証拠を与えることもできません。しかし、上記の会話のように、学習者が自分の誤りに気付いて正しいものに修正できた場合は「に」と「で」の使い分けについての肯定証拠を受け取ることができます。
【否定証拠】「教室では」が誤りであること
【肯定証拠】「教室には」が正しい表現であるという情報 + 「に」と「で」の使い分けについての規則に関する情報
つまりまとめると…
明示的フィードバック直接的フィードバック | 否定証拠も肯定証拠も与えられるが、言語規則についての肯定証拠は直接与えられない。 |
---|---|
暗示的フィードバック | 否定証拠も肯定証拠も与えられるが、正しい表現についての肯定証拠は直接与えられない。 |
ディスカッション
コメント一覧
昨日プロンプトについてコメントさせて頂いた者です。明確化要求と繰り返しは暗示的フィードバックだと分類してらっしゃるのですが、完全攻略ガイドには「再度の発話を要求する」と「誤用をそのまま繰り返す」は明示的フィードバックに分類されています。そして、暗示的フィードバックにはリキャストしか書かれていないのですが、いかがでしょうか。何度もすみませんが宜しくお願い致します。
>本田さん
コメントありがとうございます。これについて詳しく説明しますね。
昨日のフィードバックについては以下の論文を参考にしました。
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/aiujltp/6/0/6_KJ00009967779/_pdf/-char/ja
・http://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/17603/1/kyoikujissen1911.pdf
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/aiujltp/1/0/1_KJ00006672939/_pdf/-char/ja
それによると研究者によって分類の立場が分かれるとのことですので、何が何に含まれるか、下位分類は何かというのは決められませんでした。
そこで、3つの論文の共通点で表を作成し、その表を使って過去問全てが正しく解けるかどうかを検証しました。結果全ての過去問が問題なく解けています! 現状不都合が生じていないので、私はこれでいいと思っています。
もし今年度の試験で新しく出題されたフィードバックの問題がこの表で解けなかった場合、この表は協会側の立場とは違うことになりますので、その時また修正するつもりです。すいません、私は赤本を持っていませんので詳しく分かりませんが… 赤本書いてる方たちもこうやって逆算して協会側の立場を探っているはずです。
当サイトは私一人で管理しておりまして、どうしても至らない部分があります…。 解説はどうか参考程度にお願いいたします。混乱された場合は「立場が違うんだなー」くらいに思っていただければと思います。
本田さんのようなコメントがあって修正するきっかけに繋がっております。重ねて感謝申し上げます。
もう見ておられないかもしれませんが、作成した表について誤りがありました…
明示的訂正は学習者に正用を提示するタイプのフィードバックに分類されます。再度表を修正しております。
・https://jalt-publications.org/files/pdf-article/jalt2013_054.pdf
ご返信ありがとうございます。承知致しました。いろいろな立場があるんですね..!こちらこそいつも詳しい解説をありがとうございます。本当にありがたく参考にさせて頂いています。