ヴォイス、アスペクト、テンス、モダリティについてまとめ!
語形変化による意味の変化を分類したものを文法カテゴリー(文法範疇)と言って、ヴォイス、アスペクト、テンス、モダリティがあります。
文法カテゴリー
ヴォイス
ヴォイスとは、動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる表現のことです。
文 | 対応する能動文 | |
---|---|---|
受動態 | 田中が先生に叱られた | 先生が田中を叱った |
使役態 | 息子に掃除させる | 息子が掃除する |
使役受動態 | 私が先生に早退させられる | 私が早退する |
可能態 | 彼がギターが弾ける | 彼がギターを弾く |
自発態 | 昔のことが思い出される | 昔のことを思い出す |
相互態 | 私が彼と殴り合う | 私が彼を殴る |
「田中が先生に叱られた」の格表示は[-ガーニ]ですが、能動文「先生が田中を叱った」では[-ガ-ヲ]になってます。動詞の語形変化によって格関係が変わってます。こういうのがヴォイス。
アスペクト
アスペクトとは、動き動詞の動きの局面の取り上げ方を表す表現のことです。
(1) 食べるところだ (直前)
(2) 食べているところだ (進行中)
(3) 食べたところだ (直後)
その動きに時間的な幅がないと動きの局面を取り上げることができないので、動きではなく、状態や性質を表す動詞や動きを表さない静的述語にはアスペクト表現は現れません。
(4) ✕本があっている
(5) ✕猫が居っている
(5) 山がそびえている
(6) 彼は学生だ。
(7) 彼はカッコいい。
状態動詞「ある」「いる」は動作を表さないので、進行中を表すアスペクト表現「~ている」が使えません。
「そびえる」は形容詞的な使い方をして性質や様子を表す動詞で、動作を表しているわけではありません。だから「そびえている」の「~ている」は進行中ではなく、見せかけ。
「学生だ」は状態や性質を述べているのでこういう静的述語にもアスペクト表現は現れません。
テンス
テンスとは、文が表す事態の時間関係を定める文法カテゴリーです。大きく非過去形と過去形の2つに分けられます。
非過去形(ル形) | 過去形(タ形) | |
---|---|---|
動詞述語 | 食べる 食べます食べている 食べています | 食べた 食べました食べていた 食べていました |
イ形容詞述語 | 眠い 眠いです | 眠かった 眠かったです |
ナ形容詞述語 | 静かだ 静かです | 静かだった 静かでした |
名詞述語 | 猫だ 猫です | 猫だった 猫でした |
複文におけるテンスは少し複雑です。
彼は「合格した」と言っていた。
主節「言う」は発話時よりも過去の出来事なのでタ形を使っています。
一方、従属節「合格した」は主節「言う」よりも前に起きた出来事なのでタ形を使っています。
彼は「合格してやる」と言っていた。(結果はまだ不明)
上の例では、主節のテンスは発話時を基準に決まり、従属節のテンスは主節事態の成立時を基準に決まっています。
このように、発話時との時間的前後関係で決まるテンスは絶対テンス、主節時との時間的前後関係で決まるテンスは相対テンスと呼びます。主節は絶対テンスで、従属節は基本相対テンスです。従属節の種類によっては絶対テンスになることもあります。
モダリティ
文は命題とモダリティに分けられます。
(1) 本を読んでいた。
(2) 本を読んでいました。
(3) 本を読んでいたらしい。
(4) 本を読んでいただろう。
(5) 本を読んでいたよ。
(6) 本を読んでいたのだ。
「本を読んでいた」はその文が伝えたい内容そのものであり、これが命題です。命題の後ろにはモダリティ形式が付加されて、文の述べ方や性質が変わります。付加されるモダリティ形式を取り除けば共通部分の命題だけ残ります。なので命題はその文の客観的な部分、モダリティはその文の主観的な部分と言われたりもします。
モダリティのうち、命題に対する話者の認識や判断を表すものは対事的モダリティ、聞き手に対する態度を表すものは対人的モダリティと呼ばれます。