相対時間名詞と絶対時間名詞からみる「明日」と「翌日」の違い

 日本語の時間名詞は、その時間を指し示すための基準となる時点の違いによって3種類に分けられます。

 

相対時間名詞と絶対時間名詞

相対時間名詞

 今日、明日、昨日、明後日、一昨日、来月、先月、来年、朝などの今が基準(発話時が基準)となって示される直示表現や、1時間、1か月などの時間的な量を表すものは相対時間名詞と呼ばれます。相対時間名詞は通常ニ格を伴わず、副詞的に用いられます。

  (1) 明日、試験があります。
  (2)✕明日に試験があります。
  (3) 朝、散歩をしました。
  (4)✕朝に散歩をしました。
  (5) この1か月間、毎日練習してきた。
  (6)✕この1か月間に毎日練習してきた。

 

絶対時間名詞

 ~年、~月、~日、2019年、7月などは基準となる時点が必要なく、直接その時点を指定することで時間を表すため、絶対時間名詞と呼ばれます。絶対時間名詞は通常ニ格をとります

  (7) 3時に出発しよう。
  (8)✕3時出発しよう。
  (9) 東京オリンピックは2020年に行われる。
  (10)✕東京オリンピックは2020年行われる。

 ただし、絶対時間名詞が文頭にあり、その時点に何かが起こったことを述べる場合には、ニ格を伴わずに現れることもあります。

  (11) 2020年に東京オリンピックが行われる。
  (12) 2020年、東京オリンピックが行われる。
  (13) 1989年、時代は平成に移った。

 

相対時間名詞と絶対時間名詞の中間的な性質を持つ時間名詞

 一方、発話時以外のある時点を基準とした「翌日」「前日」「次の日」や、一定の時間的な幅を持つ「春」「夏」「江戸時代」「故障中」「~の間」などは相対時間名詞と絶対時間名詞の中間的な性質を持っています。これらはニ格をとったりとらなかったりするのが”中間的な性質”と言われるゆえんです。

  (14) その翌日に事件は起きた。
  (15) その翌日、事件は起きた。
  (16) 東京オリンピックは夏に開催される。
  (17) 東京オリンピックは夏開催される。

 また、「一年前」のような名詞は、いかなる時点も基準にできます。

  (18) 1年前、ここで事故に遭った。
  (19) きっかけはその日の1年前にさかのぼる。

 例文(18)の「1年前」は、今を基準とした1年前を指しているので、相対時間名詞として扱われます。(19)はその日を基準とした1年前を指しているので、中間的な性質を持つ時間名詞です。「~後」や「~後」のような言い方は、前後関係によって分類が変わるようです。 

 さらに、「一年前の昨日」のような言い方もあります。ここでは「一年前」を基準としているはずなので「昨日」は使えず、「一年前の前日」というべきだと思うのですが、通常は「一年前の昨日」と言われます。この表現における「昨日」は、”今を基準とした一年前”を基準としています。そもそも「一年前」が今を基準としているため、「翌日」よりも「昨日」が選択されるのだと思います。

 

「明日」と「翌日」の違い

 学生がたまに間違える「明日と翌日」「昨日と前日」のような対立は、この相対時間名詞と絶対時間名詞や基準となる時点から説明できます。

 「明日」は発話時が基準、「翌日」は任意の時点が基準になります。

  (18) 試験の翌日、合否が発表された。
  (19)✕試験の明日、合否が発表された。
  (20) 今日がダメなら、明日行こう。
  (21)✕今日がダメなら、翌日行こう。
  (22) マラソン大会の翌日は、好きなものを好きなだけ食べたい。

 上述したように、「翌日」はある任意の時点を基準として述べる時間名詞です。例文(21)は「今日」を基準とした「翌日」を用いていますが、これは誤りです。これら発話時以外のある時点を基準とする時間名詞は、唯一発話時(今)だけを基準とすることができません。ただしそれ以外は基準にできるため、(19)や(22)のように過去も未来も示すことができます。

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