平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説

問1 ポライトネス理論

 ここではフェイスという用語が出てきてます。フェイスといえばポライトネス理論。この理論について知らないと、この問題を解くのは難しいです。

 ポライトネス理論 (Politeness Theories)
 会話において両者が心地よくなるよう、あるいは不要な緊張感がないように配慮するなどの人間関係を円滑にしていくための言語行動によって、人はお互いのフェイスを傷つけないように配慮を行いながらコミュニケーションを行っているとする理論のことです。ブラウン (P.Brown)とレビンソン (S.Levinson)によって提唱されました。ポライトネス理論における重要な概念にフェイスとポライトネス・ストラテジーがあります。

フェイス 人と人の関わり合いに関する欲求のこと。そのうち共感・理解・好かれたいことを望む欲求をポジティブ・フェイスといい、邪魔されたくない、干渉されたくないという自由を望む欲求をネガティブ・フェイスという。
ポライトネス
ポライトネス・ストラテジー
会話において両者が心地よくなるよう、あるいは不要な緊張感がないように配慮するなど、人間関係を円滑にしていくための言語行動のこと。そのうち、相手のポジティブ・フェイスを確保しようとする言語行動をポジティブ・ポライトネス、相手のネガティブ・フェイスを侵害しないようにする言語行動をネガティブ・ポライトネスと呼ぶ。

 他者に好かれたい、認められたい、近づきたいという欲求は、ポジティブ・フェイス。
 逆に、他者に邪魔されたくない、自分の領域に立ち入られたくないという欲求は、ネガティブ・フェイス。
 答えは2です。

 

問2 ポジティブ・フェイス

 下線部Aはポジティブ・フェイスについての問いです。

 選択肢1
 発話内容の断定性を弱め、明言を避ける表現のことをヘッジ(垣根表現)と言います。「たぶん」「かもしれない」「だと思うけど」「それはちょっと…」の「ちょっと」や「まあそうだけど…」の「けど」などなど。これは相手と距離を取ろうとするときに使う表現です。つまり、垣根表現は相手のネガティブ・フェイスに配慮したネガティブ・ポライトネス。

 選択肢2
 直接的な言い方は表現がきつくなりがちなので、相手と距離を取ろうとするときに用いやすいです。よってネガティブ・フェイスに配慮したネガティブ・ポライトネスです。

 選択肢3
 仲間に近づきたい、好かれたい、共感してほしいという気持ち(ポジティブ・フェイス)に配慮して、仲間内で用いられる言葉を使います。これはポジティブ・ポライトネスの例です。

 選択肢4
 習慣的に用いられる表現は形式的な場面で用いやすいので、相手に近づこうとする表現とは言えません。相手のネガティブ・フェイスに配慮したネガティブ・ポライトネスです。

 したがって答えは3です。

 

問3 ネガティブ・フェイス

 下線部Bはネガティブ・フェイスについての問いです。

 選択肢1
 相手を褒めています。相手の近づきたい、共感してほしいというポジティブ・フェイスに配慮した言語行動(ポジティブ・ポライトネス)です。

 選択肢2
 相手のノートの必要性、価値を認めています。相手の近づきたい、共感してほしいというポジティブ・フェイスに配慮した言語行動(ポジティブ・ポライトネス)です。

 選択肢3
 代わりがいるような表現、突き放すような表現は、相手の離れたい、干渉されたくないというネガティブ・フェイスに配慮したネガティブ・ポライトネスです。

 選択肢4
 自分も相手にお返ししようとしています。相手の近づきたい、共感してほしいというポジティブ・フェイスに配慮した言語行動(ポジティブ・ポライトネス)です。

 したがって答えは3です。

 

問4 協調の原理

 上の問でも説明しているように、これはポライトネス理論の話です。
 したがって答えは4です。

 

問5 注釈

 1 婉曲表現
 角が立つ直接的な表現や否定的な表現を避けた、穏やかな言い回しのことです。「死ぬ」を「息を引き取る」と言ったりするのがこれにあたります。

 2 慣用句
 2語以上の単語が固く結びつき、全く異なる意味を持つようになった表現のことです。例えば、「目がない」はその語が持つ意味を失い、「我を忘れるほど好きな様子」を表してます。元々の語の意味ではなくなっているので慣用句です。

 3 注釈表現(メタ言語表現)
 自分が述べる発話に対して解説者風の抽象的な説明をした表現のことです。「ちょっと説明長くなるかもしれないけど」や「聞いてないかもしれないけど」、「お取り込みのところ申し訳ありませんが」など。

 4 メタファー(隠喩)
 物事のある側面から連想した類似性に基づく具体的なイメージを用いて、抽象的な物事を表す比喩の一種です。「頭が真っ白になる」「足が棒になる」などなど。
 比喩表現については「日本語の修辞法について」で詳しくまとめてます!

 「こんな夜分遅く申し訳ありませんが」はまさに解説者風の言い方で、注釈表現です。
 したがって答えは3です。

 

問6 規範的な立場から見る敬語の使い方

 1 敬語の使い過ぎでうるさくなっています。このように言う人もいますが、規範からは逸脱してます。
 2 適切です。
 3 鈴木先生本人が電話に出るかもしれないので、このような聞き方は間違いです。規範から逸脱してます。
 4 「鈴木先生のお宅」であるかどうかを聞くべきです。規範から逸脱してます。

 したがって答えは2です。





2020年9月25日平成23年度, 日本語教育能力検定試験 解説