平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 文章理解における予測

 1 文化によって予測する内容が変わることもあります。
 2 正しいです。予測は自動的に生じることが多いです。
 3 予測は先行文脈から得られる情報の範囲を広げ、内容の理解を促進します。
 4 予測は、正しいことが確認されなくても、文章理解に貢献できます。

 したがって答えは2です。

 

問2 文章理解に関わるスキーマ

 その話題に関して既に持っている知識をスキーマ(既有知識)と言います。読解の際に用いるスキーマは形式スキーマと内容スキーマに分けられます。
 形式スキーマとは、文法などの言語形式に関する知識のことです。
 内容スキーマとは、読み手自身の経験や知識などから構成された社会的・文化的な内容の背景知識のことです。
 読み手はこの2つのスキーマを用いて読み進めていきます。

 したがって答えは1です。

 

問3 橋渡し推論

 推論とは、読解において文章中に明示されていない情報を予想することです。橋渡し推論と精緻化推論に分けられます。

 橋渡し推論とは、直接表現されていないことを、文脈や既有知識によって理解することです。

向こうで一輪車を練習してた子供が大きい声で泣いていた。私は近づいて、「大丈夫?」と声をかけた。

 このような文章の中で、「子供は一輪車から落ちて怪我をした」という推測が橋渡し推論にあたります。橋渡し推論は読解中に常に行われており、正しく推論できなければ理解に大きな支障が生じます。

 精緻化推論とは、文章から読み取った事柄をもとに具体的なイメージを膨らませることです。主人公の顔、髪型、表情、性格、様子を想像したりするのがこれにあたります。想像したイメージは人によって異なります。橋渡し推論とは異なり、精緻化推論ができなくても理解には影響しません。

 1 正しいです。「一輪車を練習していた」と「子どもが泣いていた」の間にある整合性を高めるために、「転んで怪我をしたのではないか」という推論が橋渡し推論です。
 2 正しいです。「一輪車を練習していた」と「子どもが泣いていた」の間の繋がりを埋めるために行われるのが橋渡し推論です。
 3 精緻化推論の説明です。
 4 正しいです。「一輪車を練習していた」と「子どもが泣いていた」の間で省略された部分を推測するために行われるのが橋渡し推論です。

 したがって答えは3です。

 

問4 心的表象

 読み手がテキストを読んで記憶に残ったもの心的表象(mental representation)といいます。テキストを理解するときの心的表象には、「表層的記憶(surface memory)」、「命題的テキストベース(prepositional text base)」、「状況モデル(Situational Model)」の3つのレベルがあり、これら全てが一貫性のある心的表象を形成することによって、テキスト理解がなされます。

表層的記憶/表層形式
(surface memory)
テキストに提示されたそのままの単語やその語順の記憶のことです。最も記憶に残りにくいのはこのレベルの記憶です。語や文の意味が理解できなくても記憶できます。
命題的テキストベース
(prepositional text base)
テキストの意味そのものの記憶のことです。テキストの命題がネットワークを形成することによって得られる文の意味が記憶されていると考えられています。語や文の意味が理解できなければ、このレベルの表象は形成できません。
状況モデル
(Situational Model)
テキストに記述された情報に読み手のスキーマから関連する情報を付け加え、精緻化されたイメージなどの記憶のことです。このレベルの記憶は最も記憶に残りやすいです。

 1 表層形式
 2 命題的テキストベース
 3 命題的テキストベース
 4 状況モデル

 したがって答えは1です。

 





2019年7月18日平成23年度, 日本語教育能力検定試験 解説