平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説
問1 「誤用」の捉え方
誤用についての考え方はどう変わっているのか。一応文章中にヒントがあります。
以前は「排除されるべきもの」だったんですが「近年は…」とあります。逆接的な表現ですので、排除されるべきじゃないという考え方になったのだと推測できます。
答えとしては「必然的なもの」と考えられるようになってきているみたい。
したがって答えは3です。
問2 非文
非文とは、文法的に間違っているために成立しない文のことです。
1 不要な「だ」があるので文法的に間違ってます! 「おいしい」をナ形容詞だと思っているのが原因の誤り(過剰般化)です。
2 文法は間違っていませんので、非文ではありません。
3 文法は間違っていませんので、非文ではありません。ただの倒置法。
4 文法は間違っていませんので、非文ではありません。「手伝ってくれました」というべきですが、「手伝いました」としています。これは問3で出題される「語用論的な適切さに関わる誤用」です。
したがって答えは1です。
問3 語用論的な適切さに関わる誤用
ここでいう語用論的な適切さに関わる誤用とは、文法的には正しいものの、コミュニケーション上の不適切な表現によるもののことを指します。こういうときにこういう表現使っちゃダメ、なんでこう言わないの? 不自然、不適切! みたいなやつです。
1 教師に対して謝罪もなく、代替案の提示もありません。語用論的誤りです。
2 目上に対しては「手伝ってあげますよ」ではなく、「手伝います」「手伝いましょうか」などのより丁寧な言い方をするべき。語用論的誤りです。
3 「私にとって」というべき。語選択の誤りです。
4 目上なので「いらっしゃいませんか」などと言うべき。語用論的誤りです。
したがって答えは3です。
問4 ローカルエラーとグローバルエラー
学習者の誤用は、つい間違えてしまったというタイプのミステイクと、言語能力が不足していることによって起きるエラーに分けられます。エラーはさらに以下に分けられます。
程度 | グローバルエラー全体的な誤り | コミュニケーションに大きな支障が出るエラーのこと。「これはAさんにもらったプレゼントです」が「これはAさんがもらったプレゼントです」になるようなエラー。 |
---|---|---|
ローカルエラー局部的な誤り | コミュニケーションに影響が少ないエラーのこと。「私は学校で勉強をします」が「私は学校に勉強をします」になるようなエラー。 | |
原因 | 言語間エラー言語間の誤り | 母語による影響で生じた誤りのこと。中国語母語話者が「宿題をします」を「宿題を書きます」と言ったり、「薬を食べます」と言う等。 |
言語内エラー言語内の誤り | 母語とは関係なく、第二言語の学習の不完全さから生じた誤りのこと。「雨が降りました」と「雨を降りました」と言う。言語内エラーには過剰般化や簡略化などがある。 |
1 | グローバルエラー | ローカルエラー |
---|---|---|
2 | ローカルエラー | グローバルエラー |
3 | ローカルエラー | ローカルエラー |
4 | ローカルエラー | ローカルエラー |
したがって答えは2です。
問5 ロールプレイにおける、その場で訂正を行わない理由
ロールプレイでは、言語を用いて課題を完遂することが求められるコミュニカティブな活動です。たとえ文法や表現が間違っていたとしても、完遂できればいいとするのがロールプレイの考え方です。学習者が誤った発話をしてもその場で訂正するとテンポが悪くなってしまいますので、細かい訂正はロールプレイ終了後に行います。
したがって答えは3です。
問6 コミュニケーション・ストラテジー
コミュニケーション・ストラテジーという言葉が出てきてます。これは自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるストラテジーのことです。以下の6つに分けられます。
言い換え | 言えない表現を本来正しくないけど似ている表現で表したり、作り出した語で表したり、特徴や要素を描写して表すこと。 |
---|---|
借用 | 言えない単語や文全体を母語や他の言語を使って表すこと。(意識的転移) |
援助の要請 | 言えない表現を質問して教えてもらうこと。 |
身振りの使用 | 身振り手振りなどの非言語手段を用いること。 |
回避 | 使い慣れない形式や自信のない形式を使わないようにすること。より簡単な自信のある表現を選ぶこと。表現できなくなり、途中で言うのを中断すること。 |
下線部Eは上記表の「回避」と同じです!
したがって答えは1です。