平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説
(16)格関係に変更が生じることがないもの
1 「ギターを弾く」⇒「ギターが弾ける」
2 「窓を開ける」⇒「窓が開けてある」
3 「水を飲む」⇒「水が飲みたい」
4 「窓を開ける」⇒「窓を開けておく」
選択肢4だけ格関係が変わりません。こういう動詞の形態が変わると格関係が変わるのはヴォイス(態)って言います。
したがって答えは4です。
(17)間接受身文
間接受身は間接的に悪影響を被るものを主語に立てる表現です。通常主語は人間となり、主語から見て迷惑と感じることを表します。直接受身とは異なり、対応する能動文もありません。
能動文である「雨が降る」を間接受身文にすると「雨に降られる」になります。ここでは「私が雨に降られる」と言うこともできますが、能動文では「私が」に相当する格成分が存在しません。つまり、日本語の間接受身文では、もとの能動文で各成分になっていない要素をガ格にすえることができるということです。
したがって答えは3です。
(18)自動詞の受身文
迷惑の受身の中には、自動詞が受身となるものがあります。これらは自動詞の受身と呼ばれます。この知識があれば考えなくても解けます。
自動詞の受身文 | 対応する能動文 |
---|---|
赤ちゃんに 泣かれた。 | - |
雨に 降られた。 | - |
したがって答えは4です。
(19)授受表現「くれる」
「彼は私にプレゼントをくれた」では、受け手(私)から見た与え手(彼)の行為を描写しています。
したがって答えは1です。
(20)存在しない授受表現
表から分かるとおり、「あげる」と「くれる」は与え手がガ格を取っています。
「もらう」は受け手がガ格となっていますが、その受け手は自分ないし自分側の人、つまり内です。
dは話し手(内)から他者(外)に向かっています。受け手がガ格になってる上に、話し手(内)がガ格になってません。他の動詞とは違います。なので選択肢1が正しいのだろうと思われます。
1 これが答え。
2 表中cでは受け手がガ格をとっていますが、動詞では受身表現を用いていません。
3 表中bの「くれる」は話し手の視点から述べていますが、他者をガ格に据えています。
4 表中bの文では話し手も受け手として関わっていますが、ニ格が据えられています。ガ格にすると非文です。
したがって答えは1です。
ディスカッション
コメント一覧
いつもありがとうございます。
解き方の基本的ルールを教えて下さい。例えば、23年度試験1問題3(16)ギターを弾くを可能表現にする時、先生→「ギターが弾ける」としておられますが、「これをギターを弾ける」(が→を)同じく「水を飲む」も「水を飲みたい」としては、なぜ駄目かが教えて下さい。
この様な問題が解けなくて困っています。
>マシュマロさん
コメントありがとうございます! お答えします。
(16)は”格関係に変更が生じることがないもの”を選ぶ問題です。
1 「ギターを弾く」はマシュマロさんが言ったように「ギターを弾ける」でも良いんです。でも「ギターが弾ける」とも言えますよね。「弾く」の場合はヲ格を取っていたのに、可能表現になるとヲ格でもガ格でもよくなり、格関係に変更が生じています。「ギターを弾ける」しか思いつかなかった場合はうっかり格関係が変わらないんだと思って選択肢1を選んでしまうかもしれませんので注意が必要です。
3も同様です。「水を飲む」は「水を飲みたい」でも良いんですけど、「水が飲みたい」という言い方もありますね。ヲ格からガ格に変わるケースもありますので、格関係に変更が生じています。
こうして考えると選択肢4だけがどうやっても格関係が変わらなさそうです。
解き方としては… 実は網羅的です。”格関係に変更が生じるかどうか”を調べるために、いろんな格助詞に変えてみて文が作れるかどうかを試しています。そして「格関係が変わらないものもあるけど、変わるものもあるね!」という組み合わせを見つけたら、その選択肢は除外されます。
この問題に限らず、この検定試験ではとにかく例文、例文、例文。例文をたくさん作って検証することが重要です!
(16)
選択肢3は、〜たいとなっています。
たいは、形容詞なので、❲動詞が持っていた格関係〉に変更が生じるとは、関係ないと思いました。どうして、この解き方が間違いか教えてください。
すみません。先程の質問取り消しです。問題文は、ブォイスの問題と捉えないで解くのですね。
問題文を解釈するのが一苦労!!国語力不足!
もし、ブォイスの問題が出たら、たいは、形容詞なので、はじめから、外していいですか。