平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説
(11)発話を意味的に関連あるものにする仕組み
2文目に省略されているものがあるにも関わらず意味が分かるのは、お互いに意味的に関連のあるものにする仕組みを持っているからだそうです。
試しに文脈を取り払って2文目だけを見てみると、「とても軽くて、よく飛んだ。」で何を言っているか分かりません。何が軽くて飛んだのかが不明だからです。主語を加えて「竹とんぼはとても軽くて、よく飛んだ。」とすれば分かります。つまり主語が省略されています。
したがって答えは3です。
(12)結束性
1 結束性
文と文の間に文法的・語彙的な結びつきがあること。「庭に少年がいる。彼は何かを探しているようだ。」の文では、少年と彼は同じ人物を指しています。このとき1文目と2文目には指示詞「彼」による結びつきがあるため結束性が高まり、正しく理解することができるようになっています。
2 一貫性
文章中の照応関係や因果関係によって、文が表すテーマが全体を通して一貫していることです。
3 文法化
動詞や名詞の実質的な意味が失われ、機能的な表現へと変化することです。例えば、「”資本論”という本」の「いう」は、元々の「言う」の意味が失われ、文法的な機能を持つようになっています。形式名詞の「こと」「もの」「わけ」なども文法化によって実質的な意味が失われたものです。
4 文脈化
文脈化の意味はよく分かりませんでしたが、こちらに書かれている内容がそうなのでしょうか?
参考:年少者日本語教育実践の観点―「個別化」「文脈化」「統合化」
「文と文を関連づける仕組み」とあります。これが結束性のヒントになります。
したがって答えは1です。
(13)代名詞
代名詞とは、名詞または名詞句の代わりに用いられる語です。「これ」「それ」「あれ」「私」「あなた」「彼」などのことです。特に人を指すものは人称代名詞と呼ばれます。
各選択肢に含まれる代名詞が、1文目と2文目の関係を表しているかどうかを見ていきます。
1 2文目で突然「彼女」が出現しています。「彼女」が指しているものがよく分からないので、前後の文の繋がりが見えません。
2 2文目で突然「彼女」が出現しています。「彼女」が指しているものがよく分からないので、前後の文の繋がりが見えません。
3 2文目の「彼」が1文目の「友達」を指しているのだろうと推測(橋渡し推論)できます。文と文が繋がり、結束性が高まっている例です。
4 2文目で突然「彼」が出現しています。「彼」が指しているものがよく分からないので、前後の文の繋がりが見えません。
したがって答えは3です。
(14)前方照応と後方照応
指示詞は会話現場にあるものを指す現場指示と、言語的文脈の中に存在するものを指す文脈指示に分けられます。文脈指示はさらに先行文脈の一部を指し示す前方照応と、後続文脈の一部を指し示す後方照応に分けられます。
現場指示 | 「このゲームおもしろい」「その本取って」「あの人の名前は?」 | |
---|---|---|
文脈指示 | 前方照応 | 「直前になって突然の雨、こんなことってある?」 |
後方照応 | 「昨日こんなことあったのよ、外出しようと思ったら突然の雨。」 |
指示詞は「現場指示か文脈指示か」でも対立してますし、「前方照応か後方照応か」でも対立してます。どちらを選びましょう…
問題文には「指示する対象語との関係」とあります。指示する対象語が先行文脈にあれば前方照応、後続文脈にあれば後方照応。対象語との位置関係では前方照応と後方照応に分けられます。
したがって答えは1です。
現場指示と文脈指示は指示詞と対象語の関係で分類したものではなくて、指示詞が指すものが目の前にあるかどうかで分類したものです。
(15)推論
言語的要素が談話のまとまり(結束性や一貫性)をもたらす場合もありますが、推論によってまとまることもある。その推論によるものはどれですかという問題です。
選択肢1
指示詞「それ」が「熱」を指しています。言語的な要素で2つの発話が繋がり、結束性を高めています。
選択肢2
「おなかすいた」と聞いて、もしかしたら何か食べたいのかな?と推測し、「台所にカレーがあるよ」と言ってます。推論によって2つの発話が繋がり、結束性を高めています。これが答えです。
また、「おなかすいた」と言って何か食べたいことを暗に伝える行為は間接発話行為と言います。
選択肢3
「渋谷へ行こうよ」に対する「(渋谷)混んでるよ」では、言語的要素(主語「渋谷」)で2つの発話が繋がっています。
選択肢4
「(クマのぬいぐるみは)お子さんへのプレゼントですね」と、主語が省略されています。言語的要素で2つの発話が繋がっています。
答えは2です。