平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 ナチュラル・アプローチ

 ナチュラル・アプローチ
 1980年代初頭に注目され、テレル(T.Terrell)によって提唱された教授法。幼児の母語習得過程を参考にした聴解優先の教授法。クラッシェン(S.D.Krashen)のモニターモデルの緊張や不安のない状態で大量に理解できるインプットを与えれば言語習得が促進されるという仮説に基づき開発された。

 学習者が自然に話し出すまでは発話を強制せず、誤りがあっても不安を抱かせないために直接訂正しないなどの特徴がある。この点はコンプリヘンション・アプローチの考え方を引き継ぐ。発話が行われるまでの間は聴解練習のみ行われ、発話は強制されない。その間、教師の発話や動作、絵などから言語習得を進めていく。

 
 ここで出題されているシラバスは以下の種類に分けられます。

構造シラバス 言語の構造や文型に焦点を当てて構成されたシラバス。オーディオリンガルアプローチやサイレントウェイで用いられる。
機能シラバス 依頼する、慰める、同意する、拒否する、提案するなどの言語の持つ機能に焦点を当てて構成されたシラバス。
場面シラバス 「レストランで注文する」や「スーパーで買い物をする」などの使用場面に焦点を当てて構成されたシラバス。
トピックシラバス
話題シラバス
ニーズ分析などを踏まえ、学習者の興味がある内容や実社会で話題になっている話題を中心に構成されたシラバス。
スキルシラバス
技能シラバス
言語の四技能(読/書/話/聞)の中から、学習者に必要な技能に焦点を当てて構成されたシラバス。
タスクシラバス
課題シラバス
言語を使って何らかの目的を遂行することに焦点を当てて構成されたシラバス。ロールプレイなどがこれにあたる。
概念・機能シラバス 機能シラバスと実際のコミュニケーションの場面を組み合わせて構成されたシラバス。依頼する、慰める、同意する、拒否する、提案するなどの言語の持つ機能を用い、実際にコミュニケーションが行われる場面で目標を達成するような活動を進めていく。コミュニカティブ・アプローチで行われるゲームやロールプレイ、シミュレーション、プロジェクトワークなどのこと。

 
 選択肢1
 ナチュラル・アプローチはまず聴解優先なので、教師は学習者に話を聞かせたり、その話題に関する問いかけをしたりします。話題シラバスと合っています。

 選択肢2
 ナチュラル・アプローチはフォーカス・オン・ミーニングですので、文型よりも意味を重視しています。構造シラバス(文型シラバス)は文法を中心的に教えるシラバスでフォーカス・オン・フォームズです。考え方が合いません。

 選択肢3
 ナチュラル・アプローチは学習者が自主的に話すまで待って、その間は聴解を優先します。四技能の育成を目的とする技能シラバスとは考え方が違います。

 選択肢4
 ナチュラル・アプローチはまず聴解を優先するので、タスクを課すようなシラバスは用いません。

 したがって答えは1です。
 この問題は教授法ちゃんと分かってないと解けないので難しいほう。

 参考:外国語教授法の変遷についてまとめ!

 

問2 コミュニティ・ランゲージ・ラーニング/CLL

 コミュニティ・ランゲージ・ラーニング/CLL
 カラン (Curran)が提唱した、カウンセリング理論を外国語学習に応用して開発した教授法。カウンセリング理論は学習者が誤りを犯すことへの心理的な不安を和らげるために用いられる。また、不安軽減のため、媒介語の積極的な使用を認めている。カウンセリング・ラーニング/カウンセリング・ランゲージ・ラーニング(Counseling Language Learning)とも呼ぶ。
 教師がカウンセラー、学習者がクライアントとなり、丸く座って自分たちで決めたテーマについて外国語で話し、メンバー全体で課題を解決していく。カウンセラーは適切な援助をするにとどまる。

 「媒介語は積極的に使用する」ときたらコミュニティ・ランゲージ・ラーニングです!
 「媒介語は一部OK」なのはオーラル・アプローチです。

 
 1 オーラル・メソッドは媒介語の使用を部分的に認めています。
 2 ナチュラル・メソッドは幼児の母語習得過程を再現した教授法の総称です。
 3 これです! 積極的に媒介語を使ってもいいのはCLLです。
 4 「ダイレクト」という言葉がある通り、GDMは媒介語を使用しません。

 したがって答えは3です。

 外国語教授法についてはすごく煩雑なのでこちらに詳しくまとめています!
 参考:外国語教授法の変遷についてまとめ!

 

問3 オーディオ・リンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチ

 オーディオリンガル・メソッド
 戦後1940年代から1960年代にかけて爆発的に流行した教授法。アーミーメソッドの口頭練習の成果が評価され、音声中心の練習であるパターン・プラクティス(pattern practice)が生まれた。パターン・プラクティスやミムメム練習、ミニマルペア練習によって、目標言語を無意識かつ自動的、反射的に使えるようになることを目標とする。音声・文法の正確さと自然な発話速度を特に重視している。

 コミュニカティブ・アプローチ
 それまでのダイレクトメソッドやオーディオリンガル・メソッドなどの非現実的な教授法を否定し、言語教育は現実的な場面を想定した会話の中で行われるべきという考え方から生まれた教授法。オーディオリンガル・メソッドとは異なり、母語話者並みの発音やスピードを求めず、正確さよりもコミュニケーション能力の育成を中心とする。概念・機能シラバスを用いた現実のコミュニケーションと同じような活動を教室で行い、その活動を通して文法や単語を身につけていくことを目標とする。また、インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の3つの要素がコミュニケーションの本質であるという考え方に基づき、これらの要素を盛り込んだ活動を行うのが特徴的。フォーカス・オン・ミーニング(言語の意味重視)の教授法。

 
 選択肢1
 構造主義とか機能主語とか難しいんですが…
 オーディオリンガル・メソッドはフォーカス・オン・フォームズの教授法なので言語形式(文型)中心です。つまり言葉の「構造」に注目しているものです。コミュニカティブ・アプローチはフォーカス・オン・ミーニングの教授法なので意味中心です。つまり言葉の「機能」に着目しているもの。この選択肢は正しいです。

 選択肢2
 オーディオリンガル・メソッドは特に口頭能力を重視していて、書き言葉は重視していません。
 コミュニカティブ・アプローチもコミュニケーション重視で、つまり口頭能力を重視しています。

 選択肢3
 オーディオリンガル・メソッドは易しい文型から順に導入していきます。そうじゃないと普通ついていけないですね。
 コミュニカティブ・アプローチはコミュニケーション能力の育成を中心とするので、そのたびに必要な文型を導入していきます。現実で使うような表現を取り扱い、その順序はあまり意識されません。

 選択肢4
 そのようです。ちょっと詳しく分かりませんが…

 不適当な組み合わせを選ぶ問題なので注意してください。こういう出題の仕方はめちゃくちゃ珍しいです。
 選択肢2のオーディオリンガル・メソッドの記述だけが間違っていますので、答えは2です。

 参考:外国語教授法の変遷についてまとめ!

 

問4 プロジェクトワーク

 プロジェクトワークとは、学習者が主体となって計画をし、資料や情報を集めたりして、グループごとに一つの作品にまとめる学習方法。報告書、新聞、発表、映像などを作る。現実性の高い活動なので、実践的な日本語を学べる。

 1 自己研修型ではありません。コミュニカティブな活動なので周囲と協力して行っていきます。
 2 正しいです。例えば出身地ごとに分かれて故郷を紹介する動画を作ってね!という活動では、動画を作るというタスクを達成することが求められます。
 3 正しいです。情報収集の過程で読んだり聞いたりします。インタビューをすれば聞く、話す力も必要です。活動の過程で様々な技能を必要とします。
 4 正しいです。プロジェクトワークはコミュニカティブな活動なので、言語形式の正しさ、正確さよりも内容面のほうが重視されます。

 したがって答えは1です。
 ~型という言葉が4つ出てますが、これは別に覚える必要ありません。プロジェクトワークのことがちゃんと分かっていれば解けます。

 

問5 プロセス・ライティング

 選択肢1
 制限作文アプローチの説明です。
 制限作文アプローチとは、特定の文型や表現を使わせて書かせる作文指導法。1950年代にオーディオリンガル・メソッドの流れで考案された。作文の内容よりも、言語形式の正確さを重視する目的で行われた。

 選択肢2
 新旧レトリックアプローチの説明です。
 新旧レトリックアプローチとは、談話や文体にある特有のパターン、段落の理論的構造や機能などの文章構造のパターンを提示し、それに従って書かせる作文指導法。

 選択肢3
 学術英語アプローチの説明です。
 学術英語アプローチとは、読み手の存在を重視した作文指導法。学術目的で書かれる専門分野の作文において、読み手が誰なのか、読み手が期待するものは何かを意識させ、その分野にふさわしい語彙、文体を用いて書かせるような活動を行う。

 選択肢4
 プロセス・アプローチ(プロセス・ライティング)の説明です。
 プロセス・アプローチとは、フラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)のライティングプロセスの認知モデルを理論的基盤とする、作文を仕上げていくプロセスを重視した作文指導法。「構想」「文章化」「推敲」の3つの段階を行きつ戻りつ、繰り返しながら新しい発見をし、長い時間をかけてよりよい文章を再構築していくことを目的とする。

 
 プロセス・アプローチというと「構想」「文章化」「推敲」の3段階を行き来です。この文言がないとプロセス・アプローチを説明できませんので、出題するときも必ずこれが出ます。選択肢4には「計画」「創作」「書き直し」と言い方は違いますが3段階あります。「繰り返す」というのもポイントですね!

 したがって答えは4です。

 作文指導法の歴史的変遷については以下に詳しくまとめてます!
 参考:作文教育の歴史的変遷と指導法についてまとめ!





2020年9月22日平成25年度, 日本語教育能力検定試験 解説