平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

2021年10月21日平成30年度, 日本語教育能力検定試験 解説

問1 ニ格の用法

 「庭に荷物を運んだ」では別の場所から庭に荷物を運んでいますので、この場合のニ格は移動の到着点を表しています。

 「庭で荷物を運んだ」ではまさに庭という範囲内で荷物を運んでいますので、この場合のニ格は動作の場所を表しています。

 したがって答えは2です。

 

問2 主語

 選択肢1
 「象は鼻が長い」は、属性形容詞である「長い」の対象が「鼻」なので主語はガ格、「象は」は象について述べることを表しているため主題とされています。しかし、このようなハガ構文は研究者の間でも議論されているようで、定義は曖昧なようです。
 また、「春だなあ」は英語にすると「Spring has come.(春が来た)」と訳されます。主語は春ですけど、日本語では主語が明確ではありません。「(季節は)春だなあ」かもしれないし、桜が満開になってる写真を見て「(これが)春だなあ」かもしれないし。

 選択肢2
 「彼は悲しい」と言いにくいのは、第三者の感情を表すときは「~そうだ」「~ようだ」「~がっている」などと言わなければいけないからです。
 また、「は」は主題、「が」は主語あるいは主格と言われてますので、後ろの文も変。

 選択肢3
 「鉛筆は居る」が不自然なのは、鉛筆の有生性(アニマシー)が低いからです。日本語では有生性が高い人間や動物などは「いる/いない」が用いられます。鉛筆は有生性が低いので「ある/ない」が用いられます。

 選択肢4
 「私は太郎だ」の「私」も、「私が太郎だ」の「私」も主語です。

 したがって答えは1です。

 

問3 意味的な役割と文法的な関係

 意味的な役割とは、格助詞が表す用法のことを指し、文法的な役割とは、主語や述語、目的語などのことを指しています。

 選択肢1
 「部屋」は「出る」という動作の<起点>、「岸」は「離れる」という動作の<起点>です。どちらも「【起点】を【移動動詞】」という構文を取っています。
 「部屋」も「岸」も動作の起点なので意味的な役割は同じ。
 構文も同じなので文法的な関係も同じ。

 選択肢2
 選択肢1で検証したように、意味的な役割も文法的な関係も同じです。

 選択肢3
 「ラジオ」は「壊す」の<対象>、「木」は「切る」の<対象>。どちらも「【動作対象】を【他動詞】」という構文を取っています。
 「ラジオ」も「木」も対象なので意味的な役割は同じ。
 構文も同じなので文法的な関係も同じ。

 選択肢4
 選択肢で検証したように、どちらも同じなのでこの選択肢が正しい記述です。

 したがって答えは4です。

 

問4 「走る」-「開く」と同じタイプの自動詞

 ガ格は2つの用法があります。

 ①述語の動作主/主語(雨が降る)
 ②述語の対象(海がきれい)

 文章中、「太郎が走る」の「太郎」は主語、「窓が開く」の「窓」は述語の対象を表しています。

選択肢 意味的な役割
太郎が走る 太郎は<主語>
窓が開く 窓は<述語の対象>
猫が跳ぶ 猫は<主語>
太郎が歩く 太郎は<主語>
鉄が溶ける 鉄は<述語の対象>
若者が騒ぐ 若者は<主語>
太郎が泳ぐ 太郎は<主語>
窓が割れる 窓は<述語の対象>
家が焼ける 家は<述語の対象>
日が暮れる 日は<述語の対象>

 「走る」ー「開く」と同じタイプは選択肢3です。
 したがって答えは3です。

 

問5 「走る」タイプと「開く」タイプ

 1 「走る」も「開く(あく)」も、「走っている」「開いている(あいている)」とテイル形にできます。
 2 「走る」は「走ってもらう」と言えますが、「開く(あく)」は「開いてもらう(あいてもらう)」とは言いにくいです。
 3 「走る」は「走れ」と命令形にできますが、「開く(あく)」は「開け(あけ)」と言いにくいです。
 4 「走る」は「走らせられる」と言えますが、「開く(あく)」は「開かせられる(あかせられる)」とは言えません。

 したがって答えは2です。

 よくこういう間違いをします!

 1 「開けている(あけている)」
 2 「開けてもらう(あけてもらう)」

 このケースは自動詞「開く(五段)」と他動詞「開ける(一段)」を混同してます。「開けている(あけている)」「開けてもらう(あけてもらう)」の原型は「開ける(あける)」です。
 「開く(あく)」のテイル形は「開いている」で、書く⇒書いていると同じです。ちょっとしたミスに注意してください。





2021年10月21日平成30年度, 日本語教育能力検定試験 解説