平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

2022年1月20日平成30年度, 日本語教育能力検定試験 解説

問1 ニ格の用法

 「庭に荷物を運んだ」では別の場所から庭に荷物を運んでいますので、この場合のニ格は移動の到着点を表しています。

 「庭で荷物を運んだ」ではまさに庭という範囲内で荷物を運んでいますので、この場合のニ格は動作の場所を表しています。

 したがって答えは2です。

 

問2 主語

 選択肢1
 「象は鼻が長い」は、属性形容詞である「長い」の対象が「鼻」なので主語はガ格、「象は」は象について述べることを表しているため主題とされています。しかし、このようなハガ構文は研究者の間でも議論されているようで、定義は曖昧なようです。
 また、「春だなあ」は英語にすると「Spring has come.(春が来た)」と訳されます。主語は春ですけど、日本語では主語が明確ではありません。「(季節は)春だなあ」かもしれないし、桜が満開になってる写真を見て「(これが)春だなあ」かもしれないし。

 選択肢2
 「彼は悲しい」と言いにくいのは、第三者の感情を表すときは「~そうだ」「~ようだ」「~がっている」などと言わなければいけないからです。
 また、「は」は主題、「が」は主語あるいは主格と言われてますので、後ろの文も変。

 選択肢3
 「鉛筆は居る」が不自然なのは、鉛筆の有生性(アニマシー)が低いからです。日本語では有生性が高い人間や動物などは「いる/いない」が用いられます。鉛筆は有生性が低いので「ある/ない」が用いられます。

 選択肢4
 「私は太郎だ」の「私」も、「私が太郎だ」の「私」も主語です。

 したがって答えは1です。

 

問3 意味的な役割と文法的な関係

 意味的な役割とは、格助詞が表す用法のことを指し、文法的な役割とは、主語や述語、目的語などのことを指しています。

 選択肢1
 「部屋」は「出る」という動作の<起点>、「岸」は「離れる」という動作の<起点>です。どちらも「【起点】を【移動動詞】」という構文を取っています。
 「部屋」も「岸」も動作の起点なので意味的な役割は同じ。
 構文も同じなので文法的な関係も同じ。

 選択肢2
 選択肢1で検証したように、意味的な役割も文法的な関係も同じです。

 選択肢3
 「ラジオ」は「壊す」の<対象>、「木」は「切る」の<対象>。どちらも「【動作対象】を【他動詞】」という構文を取っています。
 「ラジオ」も「木」も対象なので意味的な役割は同じ。
 構文も同じなので文法的な関係も同じ。

 選択肢4
 選択肢で検証したように、どちらも同じなのでこの選択肢が正しい記述です。

 したがって答えは4です。

 

問4 「走る」-「開く」と同じタイプの自動詞

 自動詞は少なくとも二種類のタイプがあるということですが、これは主語の意味役割による分類です。主語が動作主となる自動詞は非能格動詞(unergative verb)、主語が主題となる自動詞は非対格動詞(unaccusative verb)と呼ばれます。どちらも自動詞ですけど、非対格動詞は他動詞から派生した自動詞で、非能格動詞は純度100%の自動詞です。

 (1) 学生が走った。 → 「学生」は動作主 (非能格動詞)
 (2) 学生が落ちた。 → 「学生」は主題  (非対格動詞)

 問題文の「太郎が走る」の「走る」は非能格動詞で、「窓が開く」の「開く」は非対格動詞。こうやって各選択肢を見ていきます。

     走る (非能格動詞) - 開く (非対格動詞)
 (1) 跳ぶ (非能格動詞) - 歩く (非能格動詞)
 (2) 溶ける(非対格動詞) - 騒ぐ (非能格動詞)
 (3) 泳ぐ (非能格動詞) - 割れる(非対格動詞)
 (4) 焼ける(非対格動詞) - 暮れる(非能格動詞)

 「走る」ー「開く」と同じタイプは選択肢3です。
 したがって答えは3です。

 ※非能格動詞と非対格動詞は日本語教師が知っておかなければいけないレベルじゃない! この問題は解けなかったからといってへこまなくてもいいです。問題落としてもどうせ他の人も落としてます。わざわざ覚えなくてもいいですよ! 作問者の上から目線がひどい問題だと思います。

 

問5 「走る」タイプと「開く」タイプ

 1 「走る」も「開く(あく)」も、「走っている」「開いている(あいている)」とテイル形にできます。
 2 「走る」は「走ってもらう」と言えますが、「開く(あく)」は「開いてもらう(あいてもらう)」とは言いにくいです。
 3 「走る」は「走れ」と命令形にできますが、「開く(あく)」は「開け(あけ)」と言いにくいです。
 4 「走る」は「走らせられる」と言えますが、「開く(あく)」は「開かせられる(あかせられる)」とは言えません。

 したがって答えは2です。

 よくこういう間違いをします!

 1 「開けている(あけている)」
 2 「開けてもらう(あけてもらう)」

 このケースは自動詞「開く(五段)」と他動詞「開ける(一段)」を混同してます。「開けている(あけている)」「開けてもらう(あけてもらう)」の原型は「開ける(あける)」です。
 「開く(あく)」のテイル形は「開いている」で、書く⇒書いていると同じです。ちょっとしたミスに注意してください。






2022年1月20日平成30年度, 日本語教育能力検定試験 解説