平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説
問1 音声との対立/意味との対立
選択肢1
英語の「mountain」をIPAで表記すると、/mάʊntən/です。「tain」が[tən]となっており、アルファベットの文字数と音素数が一致していません。アルファベットは一文字で一音素を表すこともありますが、複数の文字で1音素を表すこともできます。
選択肢2
正しいんですが解説不能です… どなたかコメント欄でご協力おねがいします。
選択肢3
「山」という漢字を見ると、いわゆる周囲よりも高く盛り上がった地形や場所のことを思い出すように、漢字と意味は対応しています。また、「yama」という音を聞いて同様のそのような地形や場所を思い出すのは、音と意味が対応しているためです。
選択肢4
例えば「誕生日」は「たん」「じょう」「び」の3音節からなります。(5拍)
3文字「じょう」で1音節になることもあれば、2文字「たん」、1文字「び」で1音節になることもあります。
「拗音が二文字で一音節に対応する」という記述も「じょう」を例にとると間違いだと分かりますし、「一文字が一音節に対応する」も「たん」や「び」の存在をもって否定できます。
したがって答えは2です。
問2 発音と表記
1 文字で表記すると「こういう」ですが、実際に発音すると「こーゆー」になります。[koɯiɯ]ではなく、[koːjɯː]です。
2 正しいです。あってます!
3 正しいです。前者の「は」は[ha]、後者の「は」は[ɰa]です。
4 正しいです。どちらも[toːno]です。
したがって答えは1です。
問3 漢字、平仮名、片仮名、ローマ字
選択肢1
片仮名は、万葉仮名の一部の字画を省略し付記したものに由来します。
選択肢2
例えばヘボン式の[shi]は「し」です。音素3つに対して文字1つ。一対一で対応していません。
選択肢3
表語文字とは、一つひとつの文字が対応した一つの概念を表す文字のことです。漢字や象形文字など。
表音文字とは、一つの文字で音素または音節を表す文字のことです。平仮名、片仮名、アルファベットなど。
平仮名と片仮名はそれぞれ、清音・濁音・半濁音・拗音を含めて約110ほどありますが、漢字は何千と種類があります。表語文字の方が多いと言えます。
選択肢4
機能語とは代名詞・前置詞・接続詞・助動詞などの文法的な役割や話し手の事態の捉え方を表す語のことです。「しかし」「ところで」「~かもしれない」「~です」みたいなのがそうで、これらは普通平仮名ですね。
それとは逆に動詞、形容詞、名詞は実質的な意味を持つので内容語と呼ばれますが、これらは漢字で表されることのほうが多いです。
したがって答えは4です。
問4 政府や中央省庁により公式に示されている目安や方針
選択肢1
動詞「むかう」の送り仮名は「かう」です。
参考:文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 送り仮名の付け方 | 本文 通則2
選択肢2
以下は現代仮名遣いのア列からオ列までの長音についての記述です。
長音
(1) ア列の長音
ア列の仮名に「あ」を添える。
例 おかあさん おばあさん
(2) イ列の長音
イ列の仮名に「い」を添える。
例 にいさん おじいさん
(3) ウ列の長音
ウ列の仮名に「う」を添える。
例 おさむうございます(寒) くうき(空気) ふうふ(夫婦)
うれしゅう存じます きゅうり ぼくじゅう(墨汁) ちゅうもん(注文)
(4) エ列の長音
エ列の仮名に「え」を添える。
例 ねえさん ええ(応答の語)
(5) オ列の長音
オ列の仮名に「う」を添える。
例 おとうさん とうだい(灯台)
わこうど(若人) おうむ
かおう(買) あそぼう(遊) おはよう(早)
おうぎ(扇) ほうる(放) とう(塔)
よいでしょう はっぴょう(発表)
きょう(今日) ちょうちょう(蝶*々)
「交通」を「こーつー」とは書かず、上の規則に従って「こうつう」って書くのが現代仮名遣い。この選択肢は正しいです。
参考:文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 現代仮名遣い | 本文 第1(原則に基づくきまり)
選択肢3
常用漢字表には、漢字「他」の音訓に「ほか」の記載があります。
参考:常用漢字表
選択肢4
正しいです。[ʑi]も[dʑi]も基本は「じ」です。また、[ʑi]は語中、[dʑi]は語頭の音です。
参考:母音と子音の分類とIPA表記
したがって答えは1です。
問5 意味が類推できない語
1 コンセンサス(consensus)は、意見を一致させること、合意という意味です。原語の知識があれば意味を類推できます。
2 フラッシュ(flash)は瞬間的な閃光を表します。原語の知識があれば意味を類推できます。
3 バイキング(Viking)とはもともと海賊という意味です。日本語では食べ放題という意味になります。原語の知識があっても、類推できない場合があります。
4 日本語のアレルギーと英語の「Allergy」は同じ意味です。原語の知識があれば意味を類推できます。
したがって答えは3です。
ディスカッション
コメント一覧
問1の選択肢1についてですが、「一音節」ではなく「一音素」と書いてあります。英語の音素数は、
http://gyakuten-eigo.net/guide/syllable-phonemes-pronunciation/
によると、「アメリカ英語では、この音素の数は、母音で22個、子音で24個と日本語の約2倍あります。」とあるので、アルファベット各々の文字に対して複数の音素があるという理由で、選択肢1は間違いになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。(いつもお世話になっております)。¥
>石川さん
私も調べましたところ、解説に誤りがありました。アルファベットは1文字で1音素を表すこともありますが、複数の文字で1音素を表すこともできるようです。
既に修正致しました。いつも本当にありがとうございます!
いつも大変勉強になっております。
質問なのですが、拡張子を3音節で説明しておられましたが、どうしてなんでしょうか。kakutyoshiで4音節ではないのですか?勉強不足で申し訳ありません。
ご返信いただければ幸いです。よろしくお願い致します。
>みなさん
毎日のんびり日本語教師の高橋です。
「かくちょうし」はおっしゃる通り「か」「く」「ちょう」「し」の4音節でした。大変申し訳ありませんでした!
解説は正しいものに既に修正しております。
色々間違いな部分もあるかと思いますので、何かお気づきの点ありましたら同じようにコメントいただきたく思います。
ご指摘ありがとうございました。
ご返信いただきありがとうございます。
独学で勉強しているので、高橋さんの過去問解説に大変助かっております!ありがとうございます。また何か疑問に感じたら、コメントさせていただきます。今後ともお世話になります。
いつもありがとうございます。厚かましいのですが、選択肢4でお尋ねします。
問題は、平仮名は拗音が二文字で一音節に対応する以外は、一文字一音節に対応するが、❌となっています。
拍と音節は、違うとは思うのですが、一文字一音節ではないものは何教えてください。
以下は先生の解説です。
平仮名は拗音「しゃ」などは二文字で1拍に対応し、それ以外は全て1文字で1拍に対応します。特殊拍もそうです。平仮名と音節は必ずしも対応しません
>大福もちさん
例えば「会話」は「かい」と「わ」の2音節からなります。平仮名1文字で1音節を形成する「わ」みたいなものもありますが、2文字で1音節になる「かい」もあります。拗音が含まれるもの、例えば「聴解」だったら「ちょう」と「かい」の2音節からなりますが、この「ちょう」は3文字で1音節です。
“拗音が二文字で一音節に対応する”は「ちょう」みたいな例があるので間違いですし、”一文字が一音節に対応する”も「かい」があるので間違いです。
解説にはこう書くべきですね。なんか前の解説は変なこと言ってるみたいです…
管理人さま このコメント欄を途中から気がついて読み出しました。大変、勉強になっております。感謝申し上げます❣️ 「かい」が2文字で1音節と解説されています。その質問です。アイスブレイクは6音節とヒューマンで教わりました。アイは二重母音で1音節で、あとは1文字で1音節。ブレイクはブレークとはならないので4音節、との認識でしたが、二重母音や長音にならない母音の音節について、どう考えたらよろしいでしょうか。すみません、よろしくお願い致します。
>きぼちゃんさん
コメントありがとうございます。
私はいつもこの基準で音節を数えてます。(たぶん合ってます…)
1 二重母音は一音節
2 特殊拍は前の音と一緒に数えて一音節
3 「イ」の前に「イ」段以外の音が来るときは二重母音になることがあるので、それで一音節
4 それ以外は全部一音節
「かいわ」を「かい」と「わ」に分けた理由は、上述の条件3によるものです。
「い」の前にイ段以外の音「か」なので「かい」は二重母音、だから「かい」で一音節としてます。でも実は二重母音にならないこともあって、「か」「い」「わ」の3音節だという人もいます。どっちも正しいので別にどっちでもいいんですけどね…
話は戻りまして
アイスブレイクは「アイ/ス/ブ/レ/イ/ク」の6音節です。
アイスブレークは「アイ/ス/ブ/レー/ク」の5音節です。
ブレイクの「レイ」を長音とみなせば、条件2によって「レイ(レー)」で1音節です。長音ではなく「レ」と「イ」は別々に発音されるとすればそこが区切られて2音節になります。
また、「レイ」は「イ」の前にイ段以外の音「レ」が来ているので二重母音だ! と思えば、やっぱり「レイ」で一音節になります。
要するに「ブレイク」とか「かいわ」とかの音節数は表記によって決まるものではなく、その人の読み方によって決まります。どちらでも正しいと思いますよ。
この辺りは数え方は1通りではないので、協会側は出題を避けるはずです。
管理人さま
お忙しいところ、詳しく解説してくださり本当にありがとうございます!一つひとつ勉強を重ねていくしか無いのですが、日本語の勉強はとても難しく、ちょっとやそっとでは身に収められそうにありません。でも知っていく喜びも大きく、勉強を始めて1年ですが、来週検定試験を受験します。これからもよろしくお願い致します。
大福もちです。
試験まで申し訳ございません日にちがないときに、速攻でありがとうございました。二重母音のこと、知りませんでした。ありがとうございました。
目から鱗の解説、感謝します。
問1 音声との対立/意味との対立
選択肢2 正しいんですが解説不能です… どなたかコメント欄でとあったのでコメント残します。
>石川さんの英語の音節についてのリンクから引用します。
各音節は必ず1つの母音を中心に持っています。・・・(中略)
基本的には(そして実際の発音的にも)「子音 – 母音 – 子音」が典型的な音節の形です。
英語ではこの「音節」一つ一つが固まりとなって、日本語における「かな(拍)」に相当する感覚で
音が捉えられ&発されています。
ハングルも英語と音節の捉え方と同じく
「母音のみ」「子音+母音」「子音+母音+子音」と組み合わせた音節の単位で表記をします。
日本語の促音、撥音、英語のL等の音を含んだ音がひとつの文字になるイメージです。
例えば、ピビンバッ(プ)は日本語では5拍(ピビンパという人には4拍)ですが、
ハングルでは3文字で비(ぴ)-빔(びM)-밥(ばP)と音節ごとに一文字で表記します。
「ハングル」という単語も日本語では4拍ですが、韓国語では한(ハN)+글(グL)で二音節=二文字です。
いつも分かりやすく詳しい解説をありがとうございます。
問一の回答のハングルについて、私が知っている範囲ですが・・・
例:風邪「감기」
風邪を韓国語でカㇺギ[kamgi]といいます。
日本語式にパッチム(濁音化)を無視して、ハングルにすると、カ[가]]ㇺ[ᆷ]ギ[기]
でも実際には2音節なので、カㇺ[감]ギ[기]で「감기」と書かれます。