平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

問1 書き言葉と話し言葉

 選択肢1
 「しないといけない」を「しないと」や「しなきゃ」と省略するのは話し言葉に見られる特徴です。文の成分の省略は書き言葉ではなく、話し言葉によく見られます。

 選択肢2
 「買い物行こう」や「ご飯食べる」「雨降ってる」などに見られるニ格やヲ格、ガ格の助詞の脱落は話し言葉の特徴です。また、「~しなければならない」は話し言葉だと「~しなくちゃ」とか短くなりますし、縮約性が高いのも話し言葉の特徴です。

 選択肢3
 「うん」や「ううん」などの応答詞や「遊ぼうよ」や「楽しいな」などの終助詞は話し言葉で頻出します。

 選択肢4
 話し言葉は「ああ」や「へえ」「うーん」「おー」などの感動詞が頻出します。書き言葉ではほぼない。

 したがって答えは3です。

 

問2 様々なジャンルの文体的特徴

 1 手紙文で用いられる儀礼的機能を担う定型句などの表現とは時候の挨拶とか、冒頭の「お世話になっております。」とか。これは手紙の特徴ですね。
 2 正しいです。「~と思われる」とか「~は明らかである」「~をここに示す」などは論文、レポート、報告書などによく見られる表現。これらは客観性が高いからですね。
 3 「~と釈明」「~と説明」「~で殺人事件が発生」などとニュースの見出し、テロップではよく体言止めが使われます。
 4 取扱説明書ではデス・マス体、あるいは「~ましょう」で手順を示したりします。

 したがって答えは4です。



問3 主節と従属節の文体を合わせなければいけない場合

 複文は主節と従属節の2つに分けられます。例えば「私は彼女が作った料理を食べた」では「私は食べた」が主節、「彼女が作った料理」が従属節です。
 こういう感じの主節と従属節がある文を適当に作って検証してみましょう。

 選択肢1
 「彼が来るなら、私も行きます」では従属節が常体、主節は敬体です。文体は合わせなくても良さそう。

 選択肢2
 「彼は来るが、彼女は来ない」や「彼は来ますが、彼女は来ません」と、主節と従属節で文体を一致させるのが普通。「彼は来るが、彼女は来ません」はまあ別に間違ってないけど、ちょっと不自然。

 選択肢3
 「食べながら話しましょう」と「食べながら話そう」はいずれも正しいので、主節と従属節の文体を合わせる必要はありません。っていうか「ながら」は動ます形に接続する文法だから敬体も常体もありませんけどね。

 選択肢4
 「ご飯を食べつつ楽しみましょう」と「ご飯を食べつつ楽しもう」はいずれも正しいので、主節と従属節の文体を合わせる必要はありません。「~つつ」も動ます形に接続する文法だから敬体も常体もありません。

 したがって答えは2です。

 参考:【N5文法】~ながら
 参考:【N2文法】~つつ

 

問4 ダ・デアル体において、イ形容詞の誤用が起こりやすい理由

 文章中に「ダ・デアル体においては、特にイ形容詞の誤用が起こりやすい。」とヒントがあります。

丁寧体 普通体
デス体/マス体 ダ体 デアル体
名詞 猫です 猫だ 猫である
イ形容詞 美しいです 美しい 美しい
ナ形容詞 綺麗です 綺麗だ 綺麗である
動詞 食べます 食べる 食べる

 イ形容詞のダ・デアル体はそのままですが、ナ形容詞はダ・デアルがつきます。
 したがって答えは4です。

 

問5 「思う」や「考える」などの認識動詞

 選択肢1
 自発形「考えられる」は、「Aだと考えられる」みたいに客観的な認識を表します。主観的ではありません。

 選択肢2
 論拠から結論を述べるときの「このように考えることができる」や「このように考えられる」は状況可能です。「前向きに考えられる」なら能力可能としての解釈も可能です。
 ※ご協力ありがとうございました!

 選択肢3
 自発形「思われる」の認識の主体は書き手・話し手ですが、受身形「思われている」の認識の主体は書き手・話し手だけではなく、より広い範囲の人々です。

 選択肢4
 「明日は雨が降ると思う」の「思う」は現在の認識を表しています。また、「明日は映画を見に行こうと思っている」の「思っている」は未来の意志を表しています。

 したがって答えは3です。

 




2022年10月13日平成30年度, 日本語教育能力検定試験