平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説

問1 日本人学校の設置の目的

 日本人学校、補習授業校、私立在外教育施設、この3つをまとめて在外教育施設と呼んでいます。在外教育施設については在外教育施設の概要:文部科学省にこのような記述があります。

 在外教育施設とは、海外に在留する日本人の子どものために、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校における教育に準じた教育を実施することを主たる目的として海外に設置された教育施設をいいます。

 ここでいう学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校とは何を指しているか。これは学校教育法(昭和22年法律第26号)の第一条に書いてます。

学校教育法 (昭和22年[1947年]3月31日 法律第26号)
第一条
この法律で、学校とは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。

 ここに並んでいるのがいわゆる「一条校」と呼ばれるものです。
 選択肢3の内容が正しいです。答えは3です。

 

問2 補習授業校

 補習授業校は、現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)等に通学している日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小学校又は中学校の一部の教科について日本語で授業を行う教育施設です。日本人学校と同様、現地の日本人会等が設置運営主体となっています。
 - 在外教育施設の概要:文部科学省より

 太字部分は選択肢4と同じこと言ってます。
 したがって答えは4です。



問3 ダブル・リミテッドの状態

 2つの言語を使用するバイリンガルはいろんな種類に分けられます。

習熟度 均衡バイリンガル
バランスバイリンガル
2つの言語を年齢相当の母語話者レベルで扱えるタイプ。
偏重バイリンガル
ドミナントバイリンガル
片方の言語のみ年齢相当の母語話者レベルで扱えるタイプ。
限定的バイリンガル
ダブル・リミテッド・バイリンガル
(セミリンガル)
どちらの言語も年齢相当のレベルに達していないタイプ。

 1 片方の言語だけ使えてるので偏重バイリンガルです
 2 どの文化にも帰属意識が持てずに文化的アイデンティティを失っているデカルチュラルだと思います…
 3 二言語が年齢相応のレベルに達してない、ダブル・リミテッドです。
 4 文化受容の周辺化っぽい

 したがって答えは3です。

 

問4 継承語の教育

 まずは継承語と現地語について知っておきましょう!

 移民や難民、あるいは仕事や国際結婚などの理由で異なる言語の社会で生活することになった時、生活のためにはその地域で使われている言葉(現地語)を身につけていく必要があります。長く住み続けて子どもができた場合、子どもは両親の第一言語や主に家庭で使っている言語(継承語)を受け継ぐとともに、社会で使われている現地語も身につける必要が出てきます。どちらも身につけさせてバイリンガルにするか、現地語だけ身につければいいとするか、継承語も習得させるようとするか、こういう問題が出てきます。

 バイリンガル教育とは、二つの言語能力を育成するための教育のことです。到達目標によって2つに分けられます。

最終目標は
一言語使用
(消極的)
移行型バイリンガル教育 家庭で使用する言語から社会で使用する言語に移行して、社会に同化させるために行われる。
サブマージョン・プログラム 少数派言語の学習者を多数派言語のクラスに置いて多数派言語しか使用せずに行う教育。サブマージョンは「沈める」の意。
最終目標は
ニ言語使用
(積極的)
維持型バイリンガル教育 家庭で使用される少数派言語と社会で使用される多数派言語を同時に伸ばし、アイデンティティの強化を図る教育。
イマージョン・プログラム 学校で二つの言語を使い分け、第一言語を維持しながら第二言語を習得させるとともに教科学習も行う教育。イマージョンは「浸す」の意。

 1 イマージョン教育は学校で第一言語と第二言語を使い分けながら教科学習し、その両方の能力を高めようとする目的で行う教育です。日系人が多い地域では継承語と現地語を使ってイマージョン教育をするところもあります。実際ブラジルでも日本語と日本文化を継承するために日本語の継承教育が行われていたことがありました。(今でも?)

 2 親に期待に応るため自発的に学ぼうとする子供は少ないはずです。

 3 家庭環境や世代によっても継承語の熟達度は異なりますし、しかも継承語の教育が必要な児童生徒があまりに少ないため、クラス分けできず、レベルが違っても同じクラスで学ぶことが多いようです。

 4 家庭環境や世代によっても継承語の熟達度は異なりますので、そのレベルによって教育形態も変わってくるのは当然です。

 したがって答えは2です。

 

問5 継承語の保持

 1 正しいです。日系人同士で集まる感じの環境だと継承語は保持されやすくなります。
 2 現地生まれの子どもは日本語を使わずに育つ可能性が高いので、継承語は保持されにくくなります。
 3 世代をまたぐと継承語が継承されにくくなるので、平仮名の読み書きの保持率は低下するはず。
 4 日系1世、2世、3世とでは、当然ながらその日本語のレベルが違います。

 したがって答えは1です。

 




2023年8月26日平成30年度, 日本語教育能力検定試験