平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

問1 文化化

 主に幼少期に周囲の人々やメディアなどから当該文化の習慣や常識、ルール、価値観、考え方を教わり身につけていくことを文化化と呼んでいます。

 選択肢4の記述がそれです!
 こういうひねりもなくただ用語の意味を知ってるかどうか問う問題は数秒で解けるようになってください。そして絶対落としちゃいけません。
 例文作って検証して… 一問に数分かかってしまうような問題に時間をかける、そんな時間配分を心がけてください。

 したがって答えは4です。

 

問2 カルチャー・ショック

 カルチャーショックとは何かの前に、リスガードによって提唱されたUカーブ仮説について説明します。

 上の画像のがUカーブ。これは新しい環境下で起こる人間の心理状態の変化、異文化適応過程を表した曲線です。

 海外に行ったばかりのころはウキウキして何でも新鮮、楽しい状態のハネムーン期を経験します。だいたい短期旅行者はハネムーン期しか経験しないので、楽しい記憶だけ持ち帰って「楽しかった!」と言えるんです。それからだんだん現地の実情を知り、習慣や考え方、常識、価値観などが自文化とかけ離れていることに心理的ショックを受けるカルチャーショック期(不適応期)を迎えます。ハネムーン期とは違って異文化の嫌な部分が見えたり、幻滅したりするのがこの時期。そしてカルチャーショックを乗り越え異文化に適応する適応期に移ります。この異文化適応過程がU字に見えるので、Uカーブとか、U字型曲線とか呼ばれてます。

 ちなみに新入社員の五月病とか長期出張とかもこのUカーブ曲線で説明できます。海外に限らず、自国内でも文化や環境が違うところに行けばカルチャーショックは起こる可能性があります

 1 ハネムーン期の説明です。カルチャーショック期は精神的に落ち込んだ状態になります。
 2 カルチャーショックは精神的なものだけでなく、身体的症状として現れることもあります。それこそ食欲低下、疲労、頭痛、睡眠不足など…
 3 自国でも文化や習慣、価値観が異なれば経験することもあります。
 4 カルチャーショックは適応期を迎えるまで続くので、瞬間的ではなく、持続的な心理的反応です。

 したがって答えは2です。

 

問3 Wカーブ

 上述のUカーブ仮説をさらに発展させ、ガラホーンによって提唱されたのがWカーブ仮説

 上の画像の左側はUカーブ曲線と全く同じなんですが、ガラホーンはUカーブ曲線の更にその後、帰国後の自文化への再適応過程を加えました。
 まずUカーブ曲線で異文化に適応した後、帰国します。帰国するとそれまで適応していた異文化の習慣や価値観などに慣れているので、自文化への再適応に苦しむ時期があります。これがリエントリー・ショックです。海外在住歴(適応期)がそれなりに長く、現地での生活に満足していたり、友人に恵まれていた人ほど帰国後の再適応に苦しむとされてます。それから、自分が海外にいたことを周囲の人はあまり気に留めてくれない、話題にしてくれないみたいな状況に遭遇することがあるので、そういう心理的なダメージもリエントリー・ショックのひとつです。

 
 選択肢1
 正しいです。Wカーブは異文化適応過程と帰国後の自文化適応過程を表した曲線です。そしてカルチャーショックとリエントリーショック、どちらがひどいかは人によります。リエントリー・ショックがひどい場合もあります。

 選択肢2
 Wカーブは不適応状態を示したものではなく、適応の段階を示したものです。Wカーブ曲線では異文化になじめないまま帰国した人の適応過程を表したものではあなく、異文化になじめた人が帰国した場合の過程を示すものです。

 選択肢3
 Wカーブは周囲との接触の度合いを示したもの? 変なこと言ってます。

 選択肢4
 Wカーブは異文化から帰国した後の適応段階を示すのではなく、異文化への移動後と帰国した後の適応の段階を示したものです。
 異文化から帰国した後は1度の危機状態(リエントリー・ショック)があると言われてます。

 したがって答えは1です。

 

問4 文化変容(acculturation)

 文化変容(文化受容態度)とは、異なった文化を持つ人が別の文化に入った場合、入った人と受け入れる側がどのように対応するかによってその人を取り巻く社会、環境が変容するという考え方のことです。ベリーが提唱しました。その人を取り巻く社会、環境の在り方を統合、離脱(分離)、同化、周辺化(境界化)の4つに分類しています!

統合 自文化と滞在国の文化が共存している状態
同化 自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態
離脱/分離 自文化を保持し、滞在国の文化に馴染めていない状態
周辺化/境界化 自文化を喪失し、滞在国の文化にも馴染めずにいる状態

 それぞれ固定的なものではなく常に変化するものとされ、そのうち「統合」は最も望ましいタイプとされています。

 選択肢1
 「自文化に閉じこもっている状態」で離脱だということが分かりますが、「変化が最も小さく」がちょっと分かりにくい…
 たぶんですが、異文化を取り入れようとすると自分の中の習慣とか価値観、行動様式などが変化していきます。自文化に閉じこもると異文化をシャットダウンするので、文化的な変化がないということなんだと思います。

 選択肢2
 これは同化です。自文化を喪失して異文化に馴染んでいるので、異文化の習慣、価値観、行動様式などをどんどん自分の中に取り入れていくことができます。文化的・心理的に受容が最も大きいとはこういうことです。

 選択肢3
 周辺化。自文化を喪失して、異文化にも馴染めていない状態です。

 選択肢4
 これは統合です。自文化も異文化も両立できている、一番理想的な状態です。

 したがって答えは1です。

 

問5 ソーシャルサポート

 社会的関係の中でやりとりされる学習者への支援のことをソーシャルサポートと言います。サポートの種類は以下の4つに分類されます。

道具的サポート 問題解決のために必要な資源を提供するサポート。
情緒的サポート
情動的サポート
勇気づけたり、共感したりして情緒面に働きかけるサポート。
情報的サポート 問題解決のために必要な情報を提供したり、アドバイスをするサポート。
評価的サポート 相手を褒めたり励ましたり等の肯定的な評価を与えるサポート。

 1 正しいです。必要なものを提供できたら、それは一番いいサポートになります。
 2 正しいです。相当ストレスが強くてサポートもくそもない状態になることも考えられますね…
 3 正しいです。相手の問題をしっかり見極めたサポートをすべきです。
 4 同じような困難を抱えた者からのサポートによって、「同じような人がいるんだ!」と安堵できたり、お互い話し合って自分の状況を客観的に見れるようになったりして問題解決できる可能性が高まります。

 したがって答えは4です。

 





2020年9月21日平成30年度, 日本語教育能力検定試験 解説