平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題10解説
問1 文化受容態度
この問題はベリーの文化変容(文化受容態度)についての問題です。
文化変容(文化受容態度)とは、異なった文化を持つ人が別の文化に入った場合、入った人と受け入れる側がどのように対応するかによってその人を取り巻く社会、環境が変容するという考え方のことです。ベリーが提唱しました。その人を取り巻く社会、環境の在り方を統合、離脱(分離)、同化、周辺化(境界化)の4つに分類しています!
統合 | 自文化と滞在国の文化が共存している状態 |
---|---|
同化 | 自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態 |
離脱/分離 | 自文化を保持し、滞在国の文化に馴染めていない状態 |
周辺化/境界化 | 自文化を喪失し、滞在国の文化にも馴染めずにいる状態 |
それぞれ固定的なものではなく常に変化するものとされ、そのうち「統合」は最も望ましいタイプとされています。
葛藤、共生という分類はありません。注意してください。
したがって答えは1です。
問2 分離
1 自文化を卑下する=喪失するなので、同化か周辺化です。
2 両文化の融合、つまり統合です。
3 相手文化から離れる、これが分離(離脱)です。
4 相手文化に近づくのは同化か統合です。
したがって答えは3です。
問3 周辺化
1 滞在国でも出身国のスタイルを続けています。滞在国に馴染めず、自文化を保持している分離(離脱)です。
2 滞在国の文化にも出身国の文化にも適応できているので統合です。
3 滞在国に馴染み、出身国から離れようとしているので同化です。
4 滞在国にも出身国にも適応できていない、周辺化です。
したがって答えは4です。
問4 文化受容態度について
1 最後の状態が「周辺化」とは限りません。人によってどこに落ち着くかは異なります。
2 「分離」では自文化を保持し続け、異文化を拒否します。異文化の習慣や価値観、行動様式をも拒否するので、自分の変化が非常に小さくなります。自文化に閉じこもっているだけでは変化はありません。
3 正しいです。どのタイプに分類されるかは、その人の考え方や状態によります。年齢では決まりません。
4 正しいです。各タイプは変動しています。最初は異文化に馴染めなかったけど、だんだん慣れて馴染めてきたみたいなこともあります。
したがって答えは1です。
問5 文化的アイデンティティ
自分自身がある文化に属しているという意識を文化的アイデンティティと言います。
選択肢1
自文化だけに触れていれば自文化のアイデンティティだけを持つことになります。ある程度年齢が高いと既に母文化のアイデンティティを持っていますが、幼児期は母文化のアイデンティティすら完全に持っていない状態なので、この時点で異文化に触れさせることは、アイデンティティの形成に大きな影響を与えます。もしかしたら母文化のアイデンティティを喪失するかもしれませんし、どちらか一方すらも確立できなくなるかもしれません。
選択肢2
周囲の人と同じ外見的特徴(アジア人の中でアジア人の見た目)なら、その文化に馴染みやすくなります。でも周囲と外見的特徴が違う(アジア人の中での欧米人)なら自分が他の人と違うということを意識させられるので、その文化に帰属意識が持てなくなる可能性もあります。
選択肢3
正しいです。それまでの習慣、価値観、行動様式などが他の人と違うと当然混乱が起きます。
選択肢4
成人以後も変化します。一生という断定した表現には注意すべきです。
したがって答えは4です。
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