平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説

2021年4月27日平成24年度, 日本語教育能力検定試験 解説

(9)モダリティ表現

 モダリティとは、命題に対する認識や判断を表す表現や聞き手に対する表現のことを指します。たとえば「たぶん」「かもしれない」「はずだ」「だろう」などは主観的な判断が含まれている表現なのでモダリティ表現です。終助詞の「~ね」「~よ」「~な」なども聞き手に対する表現なのでモダリティ表現です。

 選択肢は全てモダリティ表現で、話し手の判断、気持ちが含まれています。この中に形式名詞が含まれているものはどれですかという問題ですが、その前に形式名詞について。

 形式名詞とは、それだけでは実質的な意味がないか、あるいは元々の意味が薄くなっている名詞のことです。例えば「早く起きることができない」の「こと」は意味が薄くなってる形式名詞です。節を名詞化する機能があるので、この観点から各選択肢を見ていきます。

 1 「らしい」は「らしくない」みたいにイ形の活用をしてます。そもそも品詞は名詞じゃないです。
 2 「やるべきだ」は義務を表す表現です。「やるほうがいい」のように似ている義務の表現に言い換えられます。はっきりした意味を持つので実質名詞です。
 3 「~だろう」は節を名詞化する機能はありません。
 4 「やるつもりはない」みたいに、名詞句「やるつもり」を作れてます。

 したがって答えは4です。

 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて

 

(10)補足節

 ここで「補足節」と出てきてますので、簡単に複文について復習。
 2つ以上の述語を持つ文を複文と言い、複文は従属節が主節に対して果たす役割から大きく4つに分けられます。

補足節 名詞と同じ役割を果たす名詞節や発言・思考等を引用する引用節など… マンガを見ることが好きだ。
彼は、私は結婚しないと言った。
名詞修飾節
連体修飾節
名詞を修飾する節 彼女が作った料理を食べた。
昨日買った服を着て行く。
副詞節 二つの事態の因果関係を表す条件節や目的を表す目的節など… 薬を飲んだら、治った。
逃げるために、車を用意する。
等位節・並列節 主節と対等な節や主節以外の節と対等な節 兄は頑固で、弟は柔軟だ。
分かるような分からないような、難しい。

 補足節にも下位分類が3つあり、そのうちの一つに名詞節があります。名詞節には形式名詞「こと」で名詞句化するもの等が含まれます。かなり複雑ですが、詳しくは複文の文法書をご覧ください。

 選択肢1
 「彼女が結婚することを友達に聞いた」という文の中核は「友達に聞いた」、これが主節です。どんな内容を聞いた?という説明をするため、「彼女が結婚することを」という従属節があります。このとき従属節は主節の内容を補足していますから、「彼女が結婚することを」は補足節と言います。補足節「彼女が結婚することを」の中には「こと」がありますが、これが何にも言い換えられないので形式名詞です。

 選択肢2
 「主役が来ないことにはパーティが始まらない」の主節は「パーティが始まらない」で、従属節は「主役が来ないことには」です。この文は「もし主役が来ないなら、パーティが始まらない」のように言えますので条件文です。条件を表す従属節は条件節と言い、補足節ではありません。
 この「こと」は形式名詞ですが、この問題は補足節内の形式名詞を見極める問題ですから、条件節である時点でそれ以上考える必要ありません。

 選択肢3
 「欠席するときは必ず事前に連絡すること」の主節は「必ず事前に連絡すること」、従属節は「欠席するときは」です。
これも「もし欠席するなら、必ず連絡すること」と条件文になっていますので条件節です(時間節とも言えます)。補足節だからこれ以上考える必要はありません。また、そもそも「こと」は主節に含まれています。

 選択肢4
 主節は「うらやましいことだ」、従属節は「その年で社長とは」です。「その年で社長とは」の「とは」は引用を表す表現ですから補足節(のうち引用節)です。しかし「こと」は主節にありますから間違いです。

 したがって答えは1です。

 参考:【N3文法】~ことだ

 

(11)従属節

 「とりあえず入学はしたものの、何を勉強すればよいか分からない。」のうち、「とりあえず入学はしたものの」が従属節(逆接条件節)で、「何を勉強すればよいか分からない」は主節です。
 この文の中で形式名詞を探してみると「もの」があります。もともとは「~ものの」という逆接を表す文法です。含まれているのは従属節。

 したがって答えは3です。

 参考:【N2文法】~ものの

 

(12)文法化

 文法化とは、動詞や名詞の実質的な意味が失われ、機能的な表現へと変化することです。例えば、「”資本論”という本」の「いう」は、元々の「言う」の意味が失われ、文法的な機能を持つようになってます。
 形式名詞の「こと」「もの」「わけ」なども文法化によって実質的な意味が失われました。

 1 「いう」は、元々の「言う」の意味を失っています。
 2 「して」は、元々の「する」の意味を失っています。
 3 「したがって」は、元々の「従う」の意味を持っています。
 4 「もって」は、元々の「もつ」の意味を失っています。

 3だけ文法化していません。
 したがって答えは3です。

 





2021年4月27日平成24年度, 日本語教育能力検定試験 解説