平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

問1 共同発話

 選択肢1
 グライスが提唱した会話を円滑に進めるための原理を「協調の原理」と呼び、量の公理、質の公理、関係の公理、様式の公理(様態の公理)の4つ会話の公理からなります。

量の公理 必要な情報だけ与えるようにせよ。
余分な情報は与えるな。
「授業は何時ですか?」に対して「もうすぐです」は情報が少なく、「4時0分0秒です。」は余計な情報が付加されているため、量の公理に反する。
質の公理 嘘や根拠の乏しいことを言わず、
真実を言え。
嘘や皮肉、メタファーなど。「手伝ってくれてありがとう。逆に仕事が増えたよ」みたいな嘘とか。
関係の公理
(関連性の公理)
関係あることを言え。 「あとどのくらいで終わらせられる?」に対する「人手が足りなくて…」は関係の公理に反する。
様態の公理
(様式の公理)
不明瞭で曖昧な言い方は避け、
簡潔に順序立てて言え。
「好きなような、嫌いなような…」は様態の公理に反する。

 <会話例>では関係の公理(関連性の公理)に違反していません。

 
 選択肢2
 話者交替の規則とは、二人以上が参加する会話において、話者の交替(ターンテイキング)が起こる規則のことです。ターンテイキングは文の終わりやイントネーションの変化、相槌、フィラー、ポーズ、ジェスチャー、アイコンタクト、声質、ディスコースマーカー、オーバーラップなどがきっかけとなって規則的に起きます。

 選択肢3
 話者同士で1つのまとまりを持つ発話を作り上げるような話し方のことを共同発話と言います。先取り発話と割り込み発話に分けられます。

先取り発話 「A:あの人 → B:すごいイケメンだったね。」のように、話し手の言おうとしていることを聞き手が先取って話し、一緒に発話を作り上げること。
割り込み発話 「A:あの人 → B:うん、我慢できない。 → A:本当に臭うね。」のように、話し手の発話の中に聞き手が割り込むこと。

 <会話例>は割り込み発話です!

 選択肢4
 制度的談話とは、ある場面における特別な談話のことです。教室談話、裁判、医療、マスメディアなどでは、それぞれ異なった談話形式を持ちます。

 したがって答えは3です。

 

問2 高コンテクスト文化

 問1の答え「共同発話」は日本語の特徴です。会話の参加者が協力してひとまとまりの発話を作り上げるものですが、相手の言いたいことを正確に察することができなければ共同発話はできません。高コンテクスト・コミュニケーションと関係があります。

高コンテクスト文化 実際の言葉によりもその裏にある意味を察する文化のこと。重要な情報でも言葉に表わさず裏に隠して、相手に汲み取らせたり曖昧な言葉を使って表現する。世間一般の共通認識に基づいて判断したり、感情的に意思決定がなされる文化であり、いわゆる「空気を読む」ことが求められる。実際に発話された言葉は、会話の参与者の関係性、表情、状況、それまでの文脈などから判断して意味内容が変わり、特に日本はこの傾向がとても強い。
低コンテクスト文化 高コンテクスト文化とは逆に伝えたいことは全て言葉で説明する文化のこと。言葉以外や雰囲気で気持ちや情報を伝えることはせず、全て自らが発した言葉で表現する。この傾向が強いのはドイツ語圏とされており、またアメリカやカナダなどの歴史的に移民で成り立っている国にも多いとされてる。移民が多い国ではさまざまな考え方を持つ人々が集まっているため、文化ごとに異なる気持ちを汲み取るのではなく、分かりやすい言葉で伝えることが重視される。

 高コンテクスト文化下での話し方は高コンテクスト・コミュニケーション、低コンテクスト文化下での話し方は低コンテクスト・コミュニケーションと言います。そのままですね。

 それと、選択肢2と4は人類学者ルース・ベネディクトの著書『菊と刀』の言葉です。西洋文化と日本文化を対比させ、日本を「恥の文化」、西洋を「罪の文化」と類型しています。

 共同発話と高コンテクスト・コミュニケーションは深い関係があります。
 したがって答えは1です。

 

問3 聞き手行動

 1 明確化要求
 ロング (Long)が提唱したインターアクション仮説の意味交渉のうち、相手の発話が曖昧で理解できないときに、発言を明確にするよう要求することです。
 明確化要求は話し手も聞き手も行います。

 2 割り込み
 相手の発話中に割り込んで中断させ、自らが発話を行うことです。オーバーラップとも言います。
 これは常に聞き手が行います。

 3 ターンの保持
 話のターンを保持し続け、相手に譲らないことです。
 話し手が保持している限り、聞き手はターンの保持ができません。ターンの保持は話し手の行動です。

 4 オーバーラップ
 割り込みとオーバーラップって同じですよね? 私はそう理解しているんですが。この2つが同時に選択肢に出てくるのはどういうこと?
 割り込み=オーバーラップだとすれそれは常に聞き手が行うことです。

 選択肢3だけ聞き手の行動ではありません。
 したがって答えは3です。

 

問4 リペア

 リペア(修復)とは、既に述べた発言の不明瞭な部分や間違った部分などを自分で訂正することです。

 1 母語話者の訂正を受けて「見ました」と修正しています。リペアです。
 2 リペアしてません。ただどこか分からなくて聞き返しているだけで、言い間違えたわけでも言葉そのものが理解できなかったわけでもありません。
 3 母語話者はガレリアが何か分からなくて聞き返していますが、学習者は自分が言い間違えていることに気付いていません。リペアしてません。
 4 リペアしてません。月曜日が8日かどうか確認しているだけです。言い間違えでもなく、理解できなかったわけでもありません。

 したがって答えは1です。

 

問5

 1 聞き手に徹するような行動及び練習はすべきではありません。コミュニケーションでは双方向のやり取りが求められますから、そういう練習をしたほうがいいです。
 2 上昇調の「そうですか?」と下降調の「そうですか」は意味が違うので、ちゃんと使い分けられないと相手から誤解されたりする可能性があります。ちゃんと教えないといけません。
 3 その通りです。このような相づちはコミュニケーションを円滑にするので、使えるようにちゃんと指導したいです。
 4 「は?」は「え?」よりも失礼な感じを与えることを知っておくのは重要です。区別しないで使うと、相手から勘違いされたりするかもしれません。

 したがって答えは1です。

 





2020年10月13日平成26年度, 日本語教育能力検定試験 解説