平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

問1 談話構造

 教室談話ときたらIRE/IRF型を思い出してください。
 教室では教師による発話(Initiation)→学習者の応答(Response)→評価/フィードバック(Evaluation/Feedback)の談話形式がよく現れます。この特徴からこの名前が付けられました。

 教  師 : Aさんの趣味は何ですか?
 学習者A : 趣味はマラソンします。
 教  師 : 違います。「趣味はマラソンです」ですよ。

 教室談話と会議や雑談では談話の構造が違うようです。その理由を答える問題です。
 選択肢には「社会的な役割」という言葉が何度か出てますが、たぶんこれは「その場面で参加者がすべきこと」を指しているんだと思います。それを踏まえて…

 選択肢1
 教師は学習者をあてて、誰に答えさせるかという役割を割り振っています。会議でも進行役がいて、発言者を割り振ることもあります。役割を割り振る人物は、教室では教師、会議では進行役。しかしこの違いが両者の談話構造を違うものにしている理由とは言えません。
 教室では物事を教える場面ですので、IRE/IRF型がよく現れます。会議は教える場面ではないので別の談話構造になります。つまり場面の目的が異なっていることが談話構造を変えているわけです。

 選択肢2
 会議では参加者は意見を出し合うという役割がありますが、会議が終わればその役割はなくなります。つまり一時的です。
 教室では先生が質問して、学習者が答えて、教師がフィードバックして… という形式が多いですが、授業が終わればこの形式は現れにくくなります。雑談とかも普通にしますよね! なので教室談話も授業中だけの一時的なものです。
 まあ一時的かどうかが談話構造を変える理由にはなりませんね。

 選択肢3
 正しいです。授業では教師は質問したり、フィードバックする役割があり、学生は質問に答えたりする役割がありますが、会議では全員意見を出し合うという役割があります。教室と会議では参加者の役割が違うので、それぞれの談話構造も違ってきてます。

 選択肢4
 会議では参加者全員が意見を出し合うという社会的な役割があります。授業でも教師は質問したり、フィードバックする役割があり、学生も質問に答えたりする役割があります。各場面において役割は決まってます。
 役割が決まっているかどうかは談話構造を変える理由にはなりそうですが、内容が間違ってます。

 したがって答えは3です。

 

問2 IRE/IRF型

 IRE/IRF型は教室で見られる特別な談話構造ですが、親子と子どものやり取りでも似ている形式が見られるそうです。
 教室では教師は提示質問することが多いです。これがここでいう「教師の働きかけ」だと思われます。

質問者が
知っているか
どうか
提示質問
ディスプレイ・クエスチョン
質問者が答えを知りながら尋ねる質問形式のこと。
指示質問
レファレンシャル・クエスチョン
質問者が答えを知らない状態で尋ねる質問形式のこと。

 とすると…

 1 「どっちがいい?」の答えは親には分からないので指示質問
 2 時計を指差しての「今何時?」は提示質問
 3 親なら子の名前は当然知ってるので、「お名前は?」は提示質問
 4 絵本見ながらの「これは何?」は答えを知っているので提示質問

 選択肢1だけが答えを知らない状態で問う指示質問です。教室で多くなりがちな提示質問ではないという点から、答えは1です。 

 この問題は難しいです。
 はじめは教室では選択肢2~4のような質問、教師ならするかなと思って1を選びました。結果としては正解ですが、談話構造という観点からするとこの解き方は正しくなさそうです。

 

問3 場面を作り上げている要素

 教室では常にIRE/IRF型が現れるというわけではなく、学習者の興味を引くためにあえて雑談を挟んだり、脱線したりすることもあります。そのような新しい場面を作り上げるために用いられる手段を問う問題です。

 1 正しいです。教師の質問に対して学習者が面白い返答をしたら笑ったりしますし、真面目にやるときもありますし。
 2 未習表現と既習表現を使い分けるだけでは、新しい場面を作り上げることはできません。
 3 正しいです。選択肢1と関連して、面白い返答があって脱線するときとかは一時的に普通体になったりします。
 4 これは正しいとは言い切れないというか、まあそういうときもあるかなくらい。教室で方言を使うときって、方言が話題になったときくらいしか思い浮かばないので…

 4は微妙ですけど、2は完全に否定できます。
 したがって答えは2です。

 

問4 談話標識

 談話標識(ディスコースマーカー)とは、談話において、その後どう続くかを知る手がかりとなる言葉のことです。例えば、「でも」は反論、「ところで」は話題転換、「すみません」は会話の切り出しの合図となります。

 選択肢2の接続詞なんかが特に特徴的です。たとえば「しかし」が来るとそのあとは逆の内容が述べられることが分かりますし、「ところで」は話題転換、「そういえば」は連想した話題の提出など、談話がこれからどう進んでいくかの手がかりになります。
 したがって答えは2です。

 

問5 教室談話についての知識

 教師研修っていうのは実習のことも指してると思いますし、実務からの経験値とも捉えられます。

 選択肢1
 この選択肢は「教師は経験を積むと、IRE/IRFやパターン・プラクティスのようなものは有効でないことに気付く」と言ってるんですが、そんなわけありません。こういうやり方も必要なときもあります。もし有効でないなら初めから教えろって話。

 選択肢2
 その通り。つまらなさそうな顔、態度、何気ない垣間見える仕草などがどんな意味を持ってるのか、経験を積めば積むほど分かります。

 選択肢3
 正しいです。雑談を通してこの人はアニメが好きだということが分かれば、それを生かして教案を作ったり、話しかけたりなんてことができます。教室外での交流は思っている以上に授業に大きな影響を与えます。

 選択肢4
 正しいです。IRE/IRF型を知らない人や経験0の人に授業をさせても、高い確率でIRE/IRF型が現れます。そしてどんどん経験を積んでいけば、自分の行動が教室の秩序を維持していることに気づきます。

 したがって答えは1です。

 





2020年9月24日平成26年度, 日本語教育能力検定試験 解説