平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説
問1 言及用法
聞き手を指す対称詞(二人称)には、相手を呼ぶ言葉には相手の注意を引くための呼びかけ語と、文章内で相手に言及する言及語があります。
この2つを明確に区別できない場合もありますが、この問題の場合は比較的分かりやすいです。
1 呼びかけてるので呼びかけ語
2 呼びかけてるので呼びかけ語
3 呼びかけてるので呼びかけ語
4 マイクさんについて取り上げているので、言及語
したがって答えは4です。
問2 三人称の使い方
選択肢1
会話の中で不特定の人物に言及する場合は「その人」「あの人」などを使います。特定できる場合は「彼」「彼女」が使いやすくなります。
A:昨日の夜、不審者見た
B:その人どんな様子だった?
B:彼どんな様子だった? (✕)
選択肢2
呼びかけで「看護師さん!」って使えますし、会話の中でも「看護師さん」と使えます。
選択肢3
社外の人に対して自分の上司に言及する場合は、地位名称をつけずに直接苗字で呼びます。これはビジネス日本語でよく取り上げられる注意点ですね。
A:(電話で)田中さんいらっしゃいますか?
B:田中はただいま席を外しております。
B:田中部長はただいま席を外しております。(✕)
選択肢4
自分の外の人の配偶者に言及する場合は、「奥さん」「旦那さん」などを用います。
したがって答えは1です。
問3 親族名称
1 妻が夫に「お父さん」と呼びかけるのは一般的です。
2 自分の祖母が自分の母に対して「お母さん」と自称することはできますが、母が祖母に対して「お母さん」と自称することはできません。この場合「私」や名前で自称します。
3 「◯◯ちゃんのお母さん」など、親族以外の人物に呼びかける場合にも親族語は使えます。
4 「◯◯の母は私です。」など、親族以外の人物に対して自称する場合にも親族語は使えます。
したがって答えは2です。
問4 「あなた」の使い方
1 部下が上司に「あなた」と言うと失礼です。「姓+さん」や地位名称を使うべきです。
2 娘が母に「あなた」と言うのは変です。一般的に「お母さん」などと言います。
3 店員が客に「あなた」と言うと失礼です。「お客様」などが適切です。
4 面接官が受験生に「あなた」とよく言います。
したがって答えは4です。
問5 一人称しか主語にならない文
選択肢1
この文は一人称と三人称しか主語になれません。
(一人称) 〇私は来月引っ越すつもりだ。
(二人称) ✕あなたは来月引っ越すつもりだ。
(三人称) 〇彼は来月引っ越すつもりだ。
選択肢2
一人称と二人称が主語になれます。一人称の場合は自分の意志を述べ、二人称の場合は相手への勧誘、提案を表せます。
(一人称) 〇(私は)今年の冬は北海道に行こう。
(二人称) 〇(あなたは)今年の冬は北海道に行こう。
(三人称) ✕彼は今年の冬は北海道に行こう。
選択肢3
「~たい」は原則一人称主語にしか使えない表現です。二人称、三人称に使う場合は「~たがっている」「~みたいだ」「~ようだ」「~らしい」等の形を取らなければいけません。
(一人称) 〇(私は)何か冷たいものが飲みたい。
(二人称) ✕(あなたは)何か冷たいものが飲みたい。
(三人称) ✕(彼は)何か冷たいものが飲みたい。
選択肢4
「~がっている」は二人称、三人称の願望を表す文法です。一人称には使えません。
(一人称) ✕私は亡くなった母を恋しがっている。
(二人称) あなたは亡くなった母を恋しがっている。
(三人称) 彼は亡くなった母を恋しがっている。
まとめるとこう。
私 | 君 | 彼 | |
---|---|---|---|
1 | ◯ | ✕ | ◯ |
2 | ◯ | ◯ | ✕ |
3 | ◯ | ✕ | ✕ |
4 | ✕ | ◯ | ◯ |
したがって答えは3です。