平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 談話能力

 談話能力と聞いて、コミュニカティブ・コンピテンスを思い出せるようにしてください。

 コミュニケーション能力に関してハイムズは、コミュニケーションには正しい言語形式を使用するだけではなく、場面や状況に応じた使い方をすることが必要だと提唱しました。これを伝達能力(コミュニカティブ・コンピテンス)と言います。
 またカナルは、伝達能力は文法能力、社会言語能力、方略能力、談話能力から成り立っていると主張しました。

談話能力 言語を理解し、構成する能力。会話の始め方、その順序、終わり方などのこと。
方略能力
(ストラテジー能力)
コミュニケーションを円滑に行うための能力。相手の言ったことが分からなかったとき、自分の言ったことがうまく伝わらなかったときの対応の仕方のことで、ジェスチャー、言い換えなどがあてはまる。
社会言語能力
(社会言語学的能力)
場面や状況に応じて適切な表現を使用できる能力。
文法能力 語、文法、音声、表記などを正確に使用できる能力。

 1は「来られますか」と言うべきですが、「来るおつもりですか」と言っています。文法的な誤りはありませんが、相手は先生なので、場面に応じて適切な表現を使うべきです。社会言語能力に関わる誤用です。

 2は「楽しかったよ」が「楽しいだったよ」になる誤用です。「楽しい」はイ形容詞ですが、ナ形容詞の活用を適用させる過剰般化という誤用にあたります。これは文法的な誤りなので、文法能力に関わる誤用です。

 3は「書いていただけませんか」が「お書きください」になる誤用です。文法的な誤りはありませんが、立場に応じた適切な表現を使えていないので、社会言語能力に関わる誤用です。

 4は「その人」が「あの人」になる誤用です。文全体を見ても文法的な誤りはありませんので、これは文法能力に関わる誤用ではありません。適切な指示語を使えないことで談話を正しく構成できていませんので、談話能力に関わる誤用です。

 したがって答えは4です。

 

問2 イマージョン教育

 バイリンガル教育は到達目標によって2つに分けられます。

最終目標は
一言語使用
(消極的)
移行型バイリンガル教育 家庭で使用する言語から社会で使用する言語に移行して、社会に同化させるために行われる。
サブマージョン・プログラム 少数派言語の学習者を多数派言語のクラスに置いて多数派言語しか使用せずに行う教育。サブマージョンは「沈める」の意。
最終目標は
ニ言語使用
(積極的)
維持型バイリンガル教育 家庭で使用される少数派言語と社会で使用される多数派言語を同時に伸ばし、アイデンティティの強化を図る教育。
イマージョン・プログラム 学校で二つの言語を使い分け、第一言語を維持しながら第二言語を習得させるとともに教科学習も行う教育。イマージョンは「浸す」の意。

 イマージョン教育は目標言語で教科を学ぶ教育形態です。
 選択肢2は「目標言語で」「教科を」などのヒントが含まれています。
 したがって答えは2です。

 参考:バイリンガリズムとバイリンガル教育についてまとめ!

 

問3 カナダのイマージョン教育の問題点

 カナダのイマージョン教育では『聞き取る能力や読む能力はネイティブスピーカーに近くなるが、話す能力や書く能力にはかなりの差がある。』という問題点が指摘されたようです。

 したがって答えは3です。

 参考:http://www.bi-lingual.com/pdf/Cummins.%20What%20have%20we%20learned.%20(Japanese).pdf

 

問4 アウトプット仮説

 スウェイン、理解可能なアウトプットという言葉が来たら、アウトプット仮説を思い出してください。

 アウトプット仮説 (The Output Hypothesis)とは、スウェイン (M.Swain)によって提唱された、相手が理解可能なアウトプットをすることで言語習得が促されるとする理論。自分が言えることと言えないことの差に気付くことで、言えないことを言えるようになろうとすることが言語習得に繋がるとされている。

 これだけで答えは1と分かりますが… 他の選択肢についても触れておきます。他の選択肢はロングのインターアクション仮説と関係あります。

 インターアクション仮説
 学習者が目標言語を使って母語話者とやり取り(インターアクション)する場面で生じる意味交渉が言語習得をより促進させるという仮説です。ロング (Long)が提唱しました。意味交渉はインターアクションの中で生じる意思疎通の問題を取り除くために使われるストラテジーで、以下の3つに分けられます。

明確化要求 相手の発話が不明確で理解できないときに、明確にするよう求めること。
確認チェック 相手の発話を自分が正しく理解しているかどうか確認すること。
理解チェック 自分の発話を相手が正しく理解しているかどうか確認すること。

 1 アウトプット仮説
 2 インターアクションの確認チェック
 3 インターアクションの理解チェック
 4 インターアクションの明確化要求

 したがって答えは1です。

 参考:第二言語習得理論についてまとめ!

 

問5 インフォメーション・ギャップ

 インフォメーションギャップとは、話し手と聞き手の間に存在する情報格差のことです。

 ロールプレイやディスカッション、ディベートは、コミュニカティブ・アプローチ(Communicative Approach) の考え方を反映した言語活動で、現実のコミュニケーションと同じような活動を教室で行うのが特徴的です。これらはコミュニケーション能力の育成を中心としているため、インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の三要素が組み込まれた言語活動が行われるのが好ましいとされています。

 
 1 分担して調べて結果を出し合う部分にインフォメーションギャップがあります。
 2 1人1コマしか知りませんので、お互いにインフォメーションギャップがあります。
 3 相手の国の学校制度は知りませんので、お互いにインフォメーションギャップがあります。
 4 一緒に2枚の絵を見比べますので、インフォメーションギャップはありません。

 したがって答えは4です。

 





2020年10月1日平成27年度, 日本語教育能力検定試験 解説