平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 間接的表現

 ある部屋の中で「なんだか暑いね」と発言した場合、「部屋が暑い」という文脈や状況から切り離された言葉そのものの直接的な意味と、「エアコンつけて」などのような文脈や状況に基づいて相手に伝えようとする間接的な意味があります。

 1 「あそこの棚届く?」と聞いて、「棚の上の物を取って」という意図を伝えています。
 2 間接表現ではありません。
 3 間接表現ではありません。
 4 間接表現ではありません。

 したがって答えは1です。

 

問2 母語習得

 選択肢1の内容を「共同注視(共同注意)」と呼ぶようです。
 参考:https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%85%B1%E5%90%8C%E6%B3%A8%E6%84%8F

 「絵本場面における母子共同注視と子どもの言語発達 – CRN 子どもは未来である」にはこのような記述があります。

対象に対する注意を他者と共有する行動である共同注視は、言語獲得の基盤として必須なものである。

 というわけで答えは1です。

 ※コメントでのご協力ありがとうございました!

 

問3 語用論的転移の例

 ここで語用論的転移とありますのでおさらい。

 プラグマティック・トランスファー(語用論的転移)とは、第二言語学習者が目標言語で母語話者とコミュニケーションを取る際に、母国では一般的に用いられている許可、依頼、断り、謝罪、感謝などの社会言語規範を適用して会話をしてしまうことです。文法的に誤りのないものを指します。例えば、英語母語話者が友人を夕食に誘う際に、英語の「Would you like to go to dinner?」をそのまま直訳して「夕食行きたいですか?」という表現を用いることなどなど…。

 もともとの母語の表現はたぶんこんな感じ。

 1 I’m not feeling well…
 2 Would you like to go for a drink?
 3 Because I study in the laboratory.
 4 I will marry him.

2を直訳すると「飲みに行きたいですか?」となります。英語だと問題ない表現ですが、日本語だと不自然、不適切です。こういうのが語用論的誤りです。
 答えは2です。

 

問4 語用論的転移が起こりやすい場合

 語用論的転移については問3に。

 選択肢1
 母語と学習言語が似ている部分があると感じていると母語の言い方が学習言語環境でも通用すると思い込みやすいので、語用論的転移は起こりやすいです。

 選択肢2
 様々な表現方法を知っていると転移を回避しやすいので、それだけ語用論的転移も起こりにくくなります。

 選択肢3
 母語のある特定の表現が特異性を持っていると認識している場合、この形式を学習言語に適用しようとしなくなるため語用論的転移は起こりにくくなります。

 選択肢4
 ある状況での適切な表現が母語と学習言語で違うと思っていれば、それを回避して別の表現を使うようになるので語用論的転移は起こりにくくなります。

 したがって答えは1です。

 

問5 ロールプレイにおけるタスクと表現学習

 ロールプレイにおいて、タスクを先に行う方法をタスク先行型と呼びます。タスク先行型はまずタスクを課して、その後で適切な表現を教えます。何も教えないでまずタスクをすると、こういう時どう言えばいいんだろうとか、こう伝えたいんだけど表現を知らないから言えない! みたいなことが起きやすいです。まずそういう経験をさせることがその後の表現学習のモチベーションになります。

 1 表現学習を先に行うと、学習者はそれに従って発話しようとするので表現の自由度は低くなります。
 2 初級前半レベルであればまず表現学習をしてからタスクを行ったほうがいいです。タスクを先に行うのはもっとレベルが高い学習者に適しています。
 3 あらかじめ表現学習を行うと、それに従って発話しようとするので状況対応力は養いにくくなります。
 4 正しいです。タスクを先に行うことで、できることとできないことを学習者に気付かせることができます。

 したがって答えは4です。

 





2020年10月19日平成28年度, 日本語教育能力検定試験 解説