平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題10解説

問1 新旧レトリックアプローチ

 1 新旧レトリックアプローチ
 談話や文体にある特有のパターン、段落の理論的構造や機能などの文章構造のパターンを提示し、それに従って書かせる作文指導法。

 2 ナチュラル・アプローチ
 1980年代に注目された成人のための外国語教授法で、幼児の母語習得過程を参考にした聴解優先の教授法。クラッシェンのモニターモデルの仮説に基づき、学習者が自然に話し出すまでは発話を強制せず、誤りがあっても不安を抱かせないために直接訂正しないなどの特徴がある。発話が行われるまでの間は聴解練習のみ行われる。
 作文指導法ではありません。

 3 制限作文アプローチ
 特定の文型や表現を使わせて書かせる作文指導法。1950年代にオーディオリンガル・メソッドの流れで考案された。作文の内容よりも、言語形式の正確さを重視する目的で行われた。

 4 プロセス・アプローチ
 フラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)のライティングプロセスの認知モデルを理論的基盤とする、作文を仕上げていくプロセスを重視した作文指導法。「構想」「文章化」「推敲」の3つの段階を行きつ戻りつ、繰り返しながら新しい発見をし、長い時間をかけてよりよい文章を再構築していくことを目的とする。1980年代に出現した。教師は学習者のサポートを担う。プロセス・ライティングとも呼ばれる。

 選択肢1の「談話構成パターン」という部分が新旧レトリックアプローチの特徴です。
 したがって答えは1です。

 作文の指導法、歴史的変遷については以下に詳しくまとめてます!
 参考:作文教育の歴史的変遷と指導法についてまとめ!

 

問2 ライティングプロセスの認知モデル

 ライティングプロセスの認知モデル/ライティングの認知プロセスモデル
 フラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)によって提唱されたライティングにおける認知プロセスモデル。ライティングでは「構想」「文章化」「推敲」の3つの段階を行きつ戻りつしながら作業を進めているとする。それぞれの段階で、その過程が適切に行われているかを書き手がモニターする仕組みがあり、モニターには長期記憶とワーキングメモリが関係しているとする。長期記憶から必要な情報を取り出して書いたり、モニターに役立てたりする。ワーキングメモリにはこれまでに書き上げた内容が記憶されている。

 1 各段階は一つずつ進めるわけではなく、3つの段階は行き来します。
 2 文章の内容やジャンルに関する知識は長期記憶から得ます。既に書いた内容はワーキングメモリから得ます。
 3 文章作成に必要な語や表現は長期記憶から得ます。
 4 ライティングプロセスの認知モデルによると、3つの段階は全て書き手によってモニターされています。

 したがって答えは4です。

 参考:作文教育の歴史的変遷と指導法についてまとめ!

 

問3 熟達した書き手と未熟な書き手の違い

 1 未熟な書き手は文の接続や活用などをより注意して書きますので、正しいです。
 2 未熟な書き手は全体的な構成を考えるのが苦手で、1文1文産出するような書き方をします。正しいです。
 3 正しいです。
 4 熟達した書き手は初めから終わりまでの構成を考える時間が未熟な書き手よりも長い傾向があります。「構想の段階にあまり時間をかけずに」が間違いです。

 したがって答えは4です。

 

問4 ライティングプロセスを考慮した指導の方法

 フラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)によって提唱されたライティングプロセスの認知モデルを理論的基盤として考案されたのがプロセス・アプローチと呼ばれる作文指導法です。

 プロセス・アプローチ(The Process Approach)
 フラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)のライティングプロセスの認知モデルを理論的基盤とする、作文を仕上げていくプロセスを重視した作文指導法。「構想」「文章化」「推敲」の3つの段階を行きつ戻りつ、繰り返しながら新しい発見をし、長い時間をかけてよりよい文章を再構築していくことを目的とする。1980年代に出現した。教師は学習者のサポートを担う。プロセス・ライティングとも呼ばれる。

 1 母語から第二言語に翻訳して作文を書かせるのは一種の方法ですが、上記のライティングプロセスとは関係ありません。
 2 プロセス・アプローチでは長い時間をかけて構想、文章化、推敲を繰り返し行います。「一定時間で書かせる」という点がライティングプロセスと相容れない考え方です。
 3 「十分時間をかけて何度も書き直させる」という点がまさにプロセス・アプローチの考え方と一致します。
 4 作文はそもそも日常生活でなかなか経験しないことなので、多くの初級学習者は作文に慣れていません。書く活動のタスクを与えることは慣れるために有効です。しかし上記のライティングプロセスとは関係ありません。

 したがって答えは3です。

 参考:作文教育の歴史的変遷と指導法についてまとめ!

 

問5 ピア推敲

 ピア・レスポンス/ピア推敲とは、学習者がペア、あるいはグループでお互いの作文を読み合い、良いところや直したほうがいいところを伝え、そのフィードバックをもとに書き直す活動のこと。ピア・ラーニングの一種。

 1 ピア推敲では書くだけでなく、相手の作文を読んだり、口頭で褒めたり指摘したりします。学習者のレベルが低いとそもそも読めなかったり、あるいは相手の間違っている部分に気付かなかったりすることもあります。レベルが低いと効果は薄くなります。
 2 その通りです。
 3 その通りです。
 4 その通りです。

 したがって答えは1です。

 参考:作文教育の歴史的変遷と指導法についてまとめ!





2020年9月27日平成29年度, 日本語教育能力検定試験 解説