平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説

問1 パラ言語情報

 パラ言語って言葉が出てきてます。パラ言語というのはイントネーション、リズム、ポーズ、声質(声の大きさ、高さ、速さ、声色)、フィラーなどの言葉に付属して相手に伝えられる非言語情報のことです。

 選択肢1
 発話の中の特定の部分を他の部分よりも強調して言うことです。パラ言語情報に含まれます。

 選択肢2
 ある言語において、言葉ごとに決められている音の相対的な高低や強弱の配置のことです。アクセントは1つの語につき1つしかありませんので、変更して言うことはできません。つまりパラ言語ではありません。

 選択肢3
 発話中に出現する、実際には発話されない一呼吸置かれた時間のことです。分かりやすく伝えたり、相手に考えさせる時間を与えたりする機能を持ちます。これはパラ言語情報に含まれます。

 選択肢4
 話すときの声の上がり下がりのことです。パラ言語情報に含まれます。

 したがって答えは2です。

 

問2 記号等で補完されたパラ言語・非言語情報

 文字でのやり取りのときに、パラ言語・非言語情報がどのような形になるかを問う問題です。各選択肢に含まれる記号に文字には現れていない意味(非言語情報)があるかどうかを見ていきます。

 1 「・・・」はポーズを表してます! これは非言語情報を文字化したものです。
 2 「①」「②」「③」は順番を表しているだけで、非言語情報ではありません。
 3 「¥」「( )」は非言語情報ではありません。
 4 「~」には、範囲の始点と終点をつなぐ意味があるだけで、非言語情報はありません。

 したがって答えは1です。



問3 エンブレム

 エンブレムってなんでしょう。これは実はジェスチャーの分類の一つです。
 ジェスチャーはエクマンとフリーセンによって以下の5つに分類されました。

エンブレム
言語の代行
言葉の代わりになる動作のこと。試合中のハンドサインや、ボディーランゲージなど。
イラストレーター
意味の強調
発話内容の更なる理解を促すために、その物事の具体的な大きさや長さ、形、状態などを示すための動作のこと。「こんなに大きかったよ」と言いながら、両手で大きさを表現するのがこれにあたる。
アフェクトディスプレイ
感情の表現
喜怒哀楽などの感情を表情や身体的動作を通して伝えること。眉をひそめたり、困った顔をしたりするのがこれにあたる。
レギュレーター
会話の調整
相槌やアイコンタクトなど、会話の中断や続行を促す動作のこと。
アダプター
生理的欲求への対応
メッセージとしての意味はなく、生理的欲求を満たすために行われる動作のこと。例えば背中が痒いから掻いたり、落ち着かないから貧乏ゆすりをしたりなどがこれにあたる。

 1 感情を表してるのでアフェクトディスプレイ
 2 イラストレーター
 3 この動作は口に出さなくてもお金を表すので言葉の代わりになってます。エンブレムです。
 4 イラストレーター

 したがって答えは3です。

 

問4 日本人のパーソナル・スペースの傾向

 パーソナルスペースについての問題ですね。これは他人に近付かれると不快に感じる空間のことです。文化や民族によってその広さは異なります。特に日本人は親しい相手でも比較的広くとる傾向があると言われてます。
 ちなみに中国は日本よりも近めな気がします。

 したがって答えは3です。

 

問5 他の文化では許容されない動作

 選択肢1
 タイでは、頭は精霊の宿る大切な場所と信じられているので、子供の頭を撫でるのはよくないとされています。ただし、以下の記事によると、大人は良くないけど、子供は可愛がるために頭をなでることが普通にあるとのこと。
 パンフレットなんかには撫でてはいけないと書かれているようなので、出題者はそれを見て出題したんでしょうけれども、現実に即していない問題を出すのはどうかと思います。

 参考:「タイで子供の頭を撫でたらダメ!」って誰が言い始めたの? | タイヨメ

 
 選択肢2
 アラブ諸国では靴底を相手に見せてはいけません。座ったときにうっかり足を組んで見せないように注意する必要があるようです。
 そもそも靴は外の穢れから足を守ってくれるもので、靴にはその穢れがついているとされています。その靴で踏みつけたり、投げつけたりして相手を傷つける行為は相手に対する最大の侮辱行為としてみなされるそうです。

 選択肢3
 ドイツでは手を挙げるのではなく、右の人差し指を立てて挙げるそうです。日本と同じように挙手すると、例の敬礼に見えてしまうからだそう。

 選択肢4
 インドネシアでは、物を渡すときは右手を使います。右手は食べ物を食べる手、左手はトイレで使うので不浄の手とされています。その左手で物を渡すのは失礼とされています。

 したがって答えは4です。




2022年9月23日平成26年度, 日本語教育能力検定試験