平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

問1 非言語情報

 問題文にコミュニケーションにおける非言語・パラ言語とあります。
 非言語情報とは、動作、視線、近接空間、触覚などから得られる情報のことです。
 パラ言語情報とは、言語情報に付属してその命題を補足するような役割を持つもののことです。例えば声質、笑い、声の強さ、大きさ、高さ、速さ、フィラーなど。

 1 姿勢は身体動作なので非言語情報です。
 2 沈黙はパラ言語です。沈黙することで相手に何か伝える機能を持ってます。
 3 笑いもパラ言語です。
 4 言いよどみは「フィラー」ですから、パラ言語です。

 選択肢1だけが身体動作でパラ言語ではありません。(=非言語情報)
 答えは1です。

 

問2 ノンバーバル・コミュニケーション

 問題は「パラ言語情報を含むノンバーバル・コミュニケーション」ですので、各選択肢にパラ言語情報が含まれているかどうか見ていきます。
 
 1 「香水」は人工物の使用という非音声的コミュニケーションに分類されます。
 2 にらみつけるは「アイコンタクト」なので身体動作です。
 3 咳払いは何らかの意味を持つことがあるのでパラ言語情報を含みます。
 4 「触れる」のは触覚学。

 したがって答えは3です。



問3 ジェスチャー

 上記の表、身体動作学のうち、他人に何かを伝えるためにするジェスチャー(身振り手振り)は、エクマンとフリーセンによって研究されました。その性質から以下の5つに分類しています。

エンブレム
(言語の代行)
言葉の代わりになる動作のこと。試合中のハンドサインや、ボディーランゲージなど。
イラストレーター
(意味の強調)
発話内容の更なる理解を促すために、その物事の具体的な大きさや長さ、形、状態などを示すための動作のこと。「こんなに大きかったよ」と言いながら、両手で大きさを表現するのがこれにあたる。
アフェクトディスプレイ
(感情の表現)
喜怒哀楽などの感情を表情や身体的動作を通して伝えること。眉をひそめたり、困った顔をしたりするのがこれにあたる。
レギュレーター
(会話の調整)
相槌やアイコンタクトなど、会話の中断や続行を促す動作のこと。
アダプター
(生理的欲求への対応)
メッセージとしての意味はなく、生理的欲求を満たすために行われる動作のこと。例えば背中が痒いから掻いたり、落ち着かないから貧乏ゆすりをしたりなどがこれにあたる。

 
 問題文では「物事を描写したり意味を強調したりするジェスチャー」とあります。これはイラストレーターのことです。選択肢の中からイラストレーターではないものを探します。

 1 イラストレーター 大きさを手で表現してる
 2 イラストレーター 長さを手で表現してる
 3 イラストレーター その量を指で表現してる
 4 両手首を交差する動作は、その動作だけで「ダメ」という意味を表せます。動作が言葉の代わりになるエンブレムです。

 したがって答えは4です。

 

問4 文化を超えて機能する日本人のジェスチャー

 選択肢1
 手刀を切るのは日本人独自の作法で、外国では通じないようです。「Excuse me」とはっきり言って通ることを伝えたり、微笑んで横切ったりするらしいです。確かに、中国では「过一下(ちょっと通ります)」と言って道を開けさせます。そのとき手刀は切りません。

 選択肢2
 他3つが国によって異なる意味を持つジェスチャーですので、消去法でこれが答えになります。静かにさせたいとき指を立てるのは世界共通なようです。

 選択肢3
 手のひらを上にして手招きするのは、国によっては「あっちに行け」という意味になるそうです。また、ペットを呼ぶときに使うため、人に対して使うと侮辱にあたる場合もあるようです。ちなみに中国は日本と同じで、手のひらを下にして手招きします。

 選択肢4
 タイでは挨拶しながら合掌するそうです。拝むような仕草は必ずしもお願いとは限りません。

 したがって答えは2です。

 

問5 フィラー

 フィラーとは、「あのう」「そのう」「えっと」などの言い淀み、言葉を探しているときに発せられる言葉のことです。

 A フィラー
 B 「いや」は否定しているわけじゃなくて、「いやー」みたいに悩んでるのでフィラー
 C 相槌
 D フィラー

 したがって答えは3です。

 細かいかもしれませんが、Bは「いやー」なら分かりやすいんですけど、「いや」だけだと本当にフィラーか?って思っちゃいますね。




2022年9月23日平成27年度, 日本語教育能力検定試験