平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説
問1 ら抜き言葉
ら抜き言葉とは、「食べれる」みたいに一段動詞可能形「~られる」の「ら」が省略された言葉のことです。
1 「切る」は五段動詞なのでら抜きは生じません。
2 「売る」は五段動詞なのでら抜きは生じません。
3 「書く」は五段動詞なのでら抜きは生じません。また、このような活用はありません。これは五段動詞に一段動詞可能形を適用した誤りです。
4 「考える」は一段動詞で、可能形は「考えられる」です。この「ら」が省略された「考えれる」はら抜き言葉です。
したがって答えは4です。
問2 さ入れ言葉
さ入れ言葉とは、「書かさせる」みたいな五段動詞の使役形「せる」の直前に不要な「さ」が挿入されている言葉のことです。
辞書形 | 使役形 | さ入れ言葉 |
---|---|---|
(五段)書く | 書かせる | 書かさせる |
(五段)死ぬ | 死なせる | 死なさせる |
(五段)撮る | 撮らせる | 撮らさせる |
選択肢1
一段動詞の「~られる」は可能形の他に、受身、尊敬、自発の用法があります。これらを差別化するためにら抜き言葉が生じました。この選択肢はら抜き言葉の説明です。
選択肢2
言語接触によって生じる現象の中に「混交」というものがあります。これは既存の単語と新たに伝播した単語が合わさり、双方の一部分を残しつつ新たな単語が生まれることです。この記述はこれじゃないかなと思います。
選択肢3
一段動詞の謙譲語、例えば「食べさせていただく」の「させていただく」の部分が五段動詞にも用いられたことにより、「帰らさせていただく」となった、と言ってます。本来五段動詞の謙譲語は「ない形+せていただく」で作りますので、上記の活用だと本来不要な「さ」が入れられていることになります。したがってこれはさ入れ言葉の説明です。
選択肢4
一段動詞の可能形「ない形+られる」の形式を五段動詞にも用いてみると、「書かられる」「飲まられる」となってしまいます。これは意味を持たない活用で間違いです。さ入れ言葉とは関係ありません。
したがって答えは3です。
問3 言葉の乱れ
1 「全然~肯定表現」などの日本語の乱れは、社会的に優位な立場の人々によって発生したわけではなく、どちらかというとそうではない人たちから生まれてます。
2 同程度というわけではなく、どちらかというと話し言葉のほうに生じやすいと思います。
3 正しいです! 例えば「雰囲気」は本来「ふんいき」ですが、「ふいんき」という人もいます。「ふいんき」を使わない人がこの形式を批判的に見ることによって言葉の乱れと認識されます。
4 言葉の乱れは規範的な立場からそれを否定的に捉えた言い方で、言葉の揺れは記述的な立場からそれを客観的に使用実態として認めた立場のことです。一時的、長期的とは関係ありません。
答えは3です。
※ご指摘ありがとうございました!
問4 新語・流行語
選択肢1
正しいです。近年であれば睡眠負債、聖地巡礼、eスポーツなどが挙げられます。それまでなかった物事・概念を表すために言葉が生まれるんですね。
選択肢2
正しいです。近年でいうと災害級の暑さやスーパーボランティアなどが良い例です。
選択肢3
流行語は流行した単語や言葉、フレーズのことです。定着するものもあるかもしれませんが、ほとんどは一時的に流行するだけで廃れていきます。次の世代に引き継がれるものではありません。
選択肢4
正しいです。お笑い芸人さんの一発ギャグなどのことですね!
したがって答えは3です。
問5 言葉は時代によって変わる
この問いは、以下の2つのサイトから出題されているものです。興味深い内容がいろいろと書かれているので一読をお勧めします。
参考:「言葉のQ&A」(まとめ) | 文化庁
参考:言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかる
選択肢1 「世間ずれ」
本来の意味である「世間を渡ってきてずる賢くなっている」と答えた人が過半数でしたが,30代以下の世代では「世の中の考えから外れている」という意味で使っている人の方が多いという結果でした。
- 文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」 「世間ずれ」の意味より引用
選択肢2 「おもむろに」
本来の意味である「ゆっくりと」と答えた人が4割台半ばであったのに対し,本来の意味ではない「不意に」と答えた人が4割強と,僅かな差しかないという結果でした。
- 「おもむろに」動く様子は急か – 言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかるより引用
選択肢3 「小春日和」
本来の意味とされる「初冬の頃の,穏やかで暖かな天気」と答えた人が5割強であったのに対し,「春先の頃の,穏やかで暖かな天気」と答えた人が4割強でした。また,年代によって理解の仕方に違いが見られます。
- 「小春日和」はいつ頃の天気か。 – 言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかるより引用
選択肢4 「議論が煮詰まる」
「煮詰まる」とは,本来,議論などが結論を出す段階になることを意味する言葉です。
40代を境に,それより若い世代では「行き詰まって結論が出せない状態」,それより年配の世代では「結論の出る状態」と答えた人の割合が大きくなっています。
- 文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」 議論が「煮詰まる」のは良いことか?
したがって答えは1です。
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