平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

問1 フェイス

 この問題で触れているのは、ブラウン&レビンソンのポライトネス理論です。

 ポライトネス理論 (Politeness Theories)
 会話において両者が心地よくなるよう、あるいは不要な緊張感がないように配慮するなどの人間関係を円滑にしていくための言語行動によって、人はお互いのフェイスを傷つけないように配慮を行いながらコミュニケーションを行っているとする理論のことです。

 ポライトネス理論の話だと分かれば「欲求」を選ぶことができます。この問題に不正解だとかなり勉強不足と言えます
 したがって答えは1です。

 

問2 ポライトネス理論

 1 談話管理理論
 ちょっと分かりません。

 2 発話行為理論
 オースティンが提唱した発話と発話意図が伝わるメカニズムに関する理論のことです。この理論では発話によって得られる行為を発語行為、発語内行為、発語媒介行為の3つに分けています。

 3 ポライトネス理論
 ポライトネス理論については上述の通りです。

 4 アコモデーション理論
 ジャイルズ (Giles)によって提唱された、相手によって自分の話し方を変える現象を説明するための理論です。

 問1にもあったように、ここではポライトネス理論について話してます。
 したがって答えは3です。

 

問3 ポジティブフェイス

 ポライトネス理論における重要な概念にフェイスとポライトネス・ストラテジーがあります。

フェイス 人と人の関わり合いに関する欲求のこと。そのうち共感・理解・好かれたいことを望む欲求をポジティブ・フェイスといい、邪魔されたくない、干渉されたくないという自由を望む欲求をネガティブ・フェイスという。
ポライトネス
ポライトネス・ストラテジー
会話において両者が心地よくなるよう、あるいは不要な緊張感がないように配慮するなど、人間関係を円滑にしていくための言語行動のこと。そのうち、相手のポジティブ・フェイスを確保しようとする言語行動をポジティブ・ポライトネス、相手のネガティブ・フェイスを侵害しないようにする言語行動をネガティブ・ポライトネスと呼ぶ。

 選択肢1
 「かな?」と曖昧な表現をすることによって、相手の申し訳ない、自分は悪くない、逃げたいというネガティブ・フェイスに対して配慮しています。ネガティブ・ポライトネスです。

 選択肢2
 「かも」と曖昧な表現をすることによって、相手のネガティブフェイスに対して配慮しています。ネガティブ・ポライトネスです。

 選択肢3
 好かれたい、共感されたいという相手の欲求を満たそうとするために髪型の変化について話題にしています。これは相手のポジティブ・フェイスに対して配慮した、ポジティブ・ポライトネスです。

 選択肢4
 相手が断りたいというネガティブフェイスがあるときのために、あえて断りやすい表現で飲み会に誘っています。これは相手のネガティブフェイスに対する配慮で、ネガティブ・ポライトネスです。

 したがって答えは3です。

 

問4 フェイスへの配慮よりも伝達が優先される例

 選択肢3は危険がすぐそこまで差し迫っています。こういう場面では上司も部下も、年上も年下もなく、「火事だ!」と言いやすいです。
 これは相手のフェイスに配慮するよりも伝達を優先したためと考えられます。

 したがって答えは3です。

 

問5 FTAの度合い

 ポライトネス理論では、フェイスを脅かすような行為をFTA(Face Threatening Act)と呼びます。文章中に「フェイス侵害の度合い」とありますが、これがFTAの度合いのことを指してるんですね。
 FTAの度合いは以下のような公式で表されます。

Wx=D(S,H)+P(S,H)+Rx

 Wxはある行為が相手のフェイスを脅かす度合い、D(S,H)は話し手と聞き手の社会的距離、P(S,H)は話し手と聞き手の相対的権力、Rxはある行為の特定文化における押しつけがましさの程度を表します。つまりFTAの度合いは、両者の地位や権力に差があり、その行為の押しつけがましさが高いほど、相手のフェイスを侵害する可能性が高くなると言ってます。

 1 「力関係」というのが、相対的権力の「P(S,H)」
 2 「社会的距離」が「D(S,H)」
 3 「行為の負担度」が「Rx」
 4 そんな要因はありません。

 したがって答えは4です。

 





2020年10月21日平成28年度, 日本語教育能力検定試験 解説