平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 ワーキングメモリ

 ワーキングメモリは情報を一時的に保持する機能だけでなく、情報を処理する機能があります。貯蔵された情報は7秒ほど保持し、情報が長期記憶に転送されなければワーキングメモリ上から消され忘却が生じます。

 1 ワーキングメモリでは7秒ほど保持されるといわれています。
 2 半永久的に記憶を保持するのは長期記憶です。
 3 文法処理には関わりますが、音楽や運動とは関係ないと思います(たぶん…)
 4 ワーキングメモリは短期的な情報の保持と情報処理に用いられます。

 したがって答えは4です。

 参考:多重貯蔵モデルとワーキングメモリ、記憶についてまとめ!

 

問2 橋渡し推論

 文章中に明示されていない情報を予想することを推論といいます。推論は2つに分けられます。

橋渡し推論 直接表現されていないことを、文脈や既有知識によって理解すること。例えば、「向こうで一輪車を練習してた子供が大きい声で泣いていた。私は近づいて、『大丈夫?』と声をかけた。」では、「子供は一輪車から落ちて怪我をした」という推測がこれ。橋渡し推論は読解中に常に行われており、正しく推論できなければ理解に大きな支障が生じる。
精緻化推論 文章から読み取った事柄をもとに具体的なイメージを膨らませること。主人公の顔、髪型、表情、性格、様子を想像したりするのがこれにあたるが、実際想像したイメージは人によって異なる。橋渡し推論とは異なり、精緻化推論はできなくても理解には影響しない。

 選択肢1
 「花瓶を落とした」と「弁償することになった」の間には「花瓶が割れた」という推測ができます。「花瓶が割れた」と推測できない場合はなぜ弁償することになったのか分からないので、理解に大きな支障が生じます。橋渡し推論です。

 選択肢2
 「獣の通る道しかない山奥」と聞いたら、私はすごくうっそうとした森の中に怪しい雰囲気を出してるレストランを想像しました。これは物事の具体的なイメージを膨らませる精緻化推論です。実際どんな様子を想像するかは人によって異なります。

 選択肢3
 ウェディングドレスを着て笑顔な様子、二人で映ってる記念写真とか想像できます。何を想像するかは人によって異なりますので精緻化推論です。

 選択肢4
 もともと狐だったのが人になったらどんな感じだろうと想像するのは精緻化推論です。想像の内容は人によって異なります。

 したがって答えは1です。

 

問3 読みの過程で行われるモニタリング

 文章中に「文章にない情報は、推論により補われる。また、文章の理解度は、読みの過程で行われるモニタリングによって異なる。」とあります。これがヒント。

 例えば… ニャー

毎日食べて寝ての繰り返し。羨ましい。たまにふらっと外に遊びにいったかと思えば、虫を取って帰ってくる。それを私に「すごいでしょ!」と言わんばかりに見せつける。満足気なあの顔、かわいい息子。

 私わざとニャーって書いて皆さんのプライミングを活性化させましたので、上の文を読むとき、最初は猫の話を想像したはずです! でも最後に「かわいい息子」ってあります。猫じゃなくて、実は息子の話でした。

 文を読むとき、人はずっと推論してます。この場合は「猫の話をしてるんだろう」と踏んで読み進めていったはずです(無意識)。しかし最後に「息子」という言葉が出てきたので、それまでの推論が崩れました。結果推論を修正して、息子が虫取って持ってくる様子を想像したと思います。

 今の自分の理解、推理、解釈で文を正しく理解できるか検証するのがモニタリングで、読みの過程では自然に行われています。これが選択肢3と一致します!

 したがって答えは2です。

 

問4 形式スキーマ

 読解に活用されるスキーマは、形式スキーマと内容スキーマに分けられます。この2つを用いて読み進めていきます。

形式スキーマ テキストの文章構造、言語形式に関する知識のこと。論文、説明文、小説、新聞、詩などにおける文章構造、展開の違いについての知識や形式に関する知識。
内容スキーマ 読み手自身の経験や知識から構成された、社会的・文化的に関する背景知識のこと。お店、病院、経済、歴史などなど…

 1 談話展開には言語的な知識は形式スキーマ
 2 ???
 3 ???
 4 文化・社会に関する知識は内容スキーマ

 したがって答えは1です。

 スキーマってなんだか微妙に理解しにくいですよね… 

 

問5 ボトムアップ的な読み

 言語処理はトップダウン処理とボトムアップ処理に分けられます。実際の言語処理はこれら2つを併用しています。

トップダウン処理 既に持っている背景知識や文脈、タイトル、挿絵、表情などから推測しながら理解を進めていく演繹的な言語処理方法のこと。
ボトムアップ処理 単語や音、文法などの言語知識を用いて、細かい部分から徐々に全体の理解に繋げていく帰納的な言語処理方法のこと。

 1 一つひとつ表や図を書いて整理しながら全体の理解に繋げてます。ボトムアップ処理です。
 2 単語や文法をしっかり読み込んで全体の理解を進めようとしているのでボトムアップ処理です。
 3 特定の語だけ読んで大意を理解しようとするのは推測が必要な読み方なのでトップダウン処理です。このような大意を把握することを目的とする読み方をスキミング答えは3です。





2020年10月3日平成28年度, 日本語教育能力検定試験 解説