平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説
(1)否定の意味を持たない「ない」
この問題を見たときに真っ先に思い付いたのは「極まる/極まりない」です。「ない」があるものの、両者意味は同じという不思議な言い方です。「ない」には否定を表すものと、強調を表す「ない」があります。強調を表す「ない」は、例えば「極まりない」「満遍なく」などがあります。
参考:【N1文法】~極まる/~極まりない
1 せわしない = せわしい
2 ありえない ≠ ありえる
3 さえない ≠ さえる
4 かかわらない ≠ かかわる
「ない」を取り除いて辞書形を見てみたときに、2、3、4は真逆に意味が変わりました。これは「ない」が否定の意味として使われていたためです。
しかし1「せわしい」と「せわしない」は同じ意味です。よってこの「ない」は強調を表す用法ということになります。
したがって答えは1です。
(2)呼応
呼応とは、先行する一定の語に応じて後ろに特定の語形が来ることです。例えば「決して~ない」「もし~なら」「とうてい~ない」などの組み合わせのうち、後ろのほうが呼応した要素です。
各選択肢に呼応した語があるかどうかを見ていきます。
1 ~も~ない ⇒ ✕一人もいる
2 いつも~ない ⇒ ◯いつも来る
3 絶対に~ない ⇒ ◯絶対に行く
4 ほとんど~ない ⇒ ◯ほとんど読んだ
2~4は肯定形でも使えるため、「ない」が呼応するわけではありません。
しかし1は必ず「ない」が呼応します。
したがって答えは1です。
(3)「動詞+ない」と「形容詞+ない」の言語的役割
これは、同じ「ない」でも品詞が異なることを知ってますか? という問題です。
補助形容詞の「ない」、助動詞の「ない」、形容詞の一部の「ない」など、ちゃんと区別できるかどうかが問われます。
①補助形容詞はその直前に「は」や「も」などの取り立て助詞を挿入できる。
②「ぬ」に置き換えられる場合、それは助動詞。
とりあえず上の判別方法で問題を解いてみましょう。
選択肢1
動詞+「ない」、例えば「食べない」は「食べぬ」と言い換えられます。「ぬ」に言い換えられるということは助動詞です。
形容詞+「ない」、例えば「美しくない」は「美しくはない」と「は」を挿入できるので、この「ない」は補助形容詞です。
選択肢2
ここで出てきた屈折接辞とは、「食べる」の「る」や、「食べない」の「ない」などの活用語尾を指してます。「食べない」の「ない」は確かに屈折接辞です。前の文は正しいです。
派生接辞とは「美しい」が「美しさ」になるような、品詞を変える働きをもつ接辞のことです。「~さ」「~み」などなど。でもイ形容詞の後ろの「ない」は活用語尾ですからこれは屈折接辞です。
選択肢3
「食べない」は「食べぬ」と言い換えられます。この「ない」は助動詞です。
「美しくない」は「美しくはない」と「は」を挿入できるので、この「ない」は補助形容詞です。
この選択肢は正しいこと言ってます。
選択肢4
「食べない」の「ない」は活用語尾なので屈折接辞です。
「美しくない」の「ない」も活用語尾なので屈折接辞です。
したがって答えは3です。
(4)「まい」
「~まい」には否定推量(~ないだろう)と否定意志(~ないつもり)の用法があります。
(1) こんな悪天候では外出する人もあるまい。(そんな人はいないだろう) 否定推量
(2) 忘れはすまい。(忘れることはないだろう) 否定推量
(3) もう二度と行くまい。(行かないつもりだ) 否定意志
(4) もう手離したりするまい。(手離すつもりはない) 否定意志
したがって答えは3です。
参考:【N2文法】~まい
(5)否定の意味を表す接頭辞
1 低価値 : 価値が低い
2 反作用 : 作用が反対
3 誤変換 : 変換を誤る
4 未完成 : 完成していない
4が否定を表しています。
したがって答えは4です。