平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説

(16)日本語の音素数と理解語彙

 現代日本語の音素は、母音音素5個、子音音素15個、モーラ音素3個の合計23程度あります。

母音 /a/, /i/, /u/, /e/, /o/
子音 /k/, /s/, /t/, /c/, /n/, /h/, /m/, /r/, /g/, /z/, /d/, /b/, /p/
半母音 /j/, /w/
特殊モーラ /n/, /q/, /h/

 
 理解語彙とは、読んだり聞いたりした際に理解できる語彙の集合のこと。日本語の母語話者の場合は4.5万語程度、義務教育終了時点で3万語程度と言われている。
 使用語彙とは、自分が話したり書いたりした際に使える語彙の集合のこと。日本語の母語話者の場合は1万~2万語程度と言われている。

 日本語能力試験(JLPT)のN1レベルでは1万語程度の語彙数が必要(実際は非公表)ですが、実際の言語生活において1万語全てを使用することになるとは限りません。理解語彙は暗記することによって半ば強制的に増やすことは可能ですが、それらを実際に使えるようになるには更に時間や労力がかかります。そこで日本語教育の場では、導入する語彙を理解語彙と使用語彙に分けて学習の効率化を図ります。

 したがって答えは1です。

 

(17)言語の二重分節性

 人類の有する自然言語は、意味を持つ最小の言語形式「形態素」と、意味のない言語の最小単位「音素」に分けられます。文を分解すると意味を持つ最小の単位である形態素が抽出でき、さらに形態素を分解すると意味を持たない音素が抽出できます。これを言語の二重分節性と呼びます。文から形態素を抽出する過程を「第一次文節」、形態素から音素を抽出する過程を「第二次文節」と言います。つまり、有限の音素の組み合わせから無限ともいえる形態素を作り出すことができ、それが無限にある現象を文として産出することができ、それを可能としているのが二重分節性という言語の特徴です。

 3 意味と形式について
 言語記号には、意味(内容)と形式(外形/音形)の2つの側面があります。意味とはまさしく言語が持つ意味のことで、形式とは社会的に決められた音のことです。例えば「食べる」には食物を噛んで飲み込むという意味と、「taberu」という音の形式があります。

 4 内容語と機能語について
 内容語/実質語 (content word)とは、実質的な内容や意味を表す語のこと。名詞・形容詞・動詞など。
 機能語 (function word)とは、文法的な役割や話し手の事態の捉え方を表す語のこと。代名詞・前置詞・接続詞・助動詞など。そのほとんどが平仮名で表される。

 したがって答えは1です。

 

(18)言語の超越性

 言語の超越性とは、言語が持つ、物理的に存在していないものや、目の前にない過去や未来のものについて話題にすることができる性質のこと。これによって過去を振り返ったり、将来の夢などについて語ることが可能となる。

 1 複文と重文
 「りんごが落ちる」のように、文中に述語が一つだけある文のことを単文と言い、この単文を2つ以上並列させたものを重文、文中に修飾語・修飾部があるものを複文と言います。

  (1) りんごが落ちる。(単文)
  (2) りんごが落ちて、頭に当たった。(重文)
  (3) 落ちたりんごが頭に当たった。(複文)

 2 方言周圏論(周圏分布型)
 特定の語や音、言語形式が、文化的中心から同心円状に伝播していくような分布を示すこと。柳田国男が提唱した。

 したがって答えは4です。

 

(19)言語の生産性

 1 言語の普遍性
 全ての自然言語には、①主語、動詞、目的語という成分があり、②文法を持っており、③音声を媒介とするという3つの共通した特徴があること。

 2 言語の恣意性
 言語の文字や音声(シニフィアン)が、それが指し示す意味内容(シニフィエ)との間に必然的な繋がりがないこと。例えば、赤くて丸い果物を「りんご」と書いたり、[riŋŋo]と呼んでいるのは、昔からそのように呼んでいるからに過ぎない。日本語では[riŋŋo]と発音するものの、別の言語では別の呼び方をされているのはこのためだとされる。

 3 言語の生産性/言語の創造性
 言語が持つ、初めて見る物体や物事を言語化することができ、新しい言語表現を際限なくいくらでも作れる性質のこと。

 4 言語の文化的伝承性
 言語はその共同体で使用されている言語の話し手を通じて生後学習し習得され、次の世代へと文化的に伝承されていく言語の性質のこと。

 したがって答えは3です。

 

(20)言語の優劣

 1 音声言語と文字言語
 全ての自然言語は音声を媒介としていますが、文字を介さない言語もあります。

 2 ピジンとクレオール
 ピジン (pidgin)とは、異なる言語を話す者同士が意思疎通するため、お互いの言語の要素を組み合わせて作られた言語のこと。お互い正しい意思疎通をするために文法が単純化されたり、一つの単語が多義的に用いられたり、また、発音も簡略化される傾向がある。

 クレオール (creole)とは、ピジン言語が長期間使用されることによってその地域の共通言語として定着し、母語として話されるようになった言語のこと。ピジンよりも単語が多くなり、文法が整っている傾向がある。

 ピジンとクレオールの言語体系の複雑さは同じではありません。

 3 どの言語も複雑な内容を表せる。
 どの言語も有限の音素の組み合わせから無限ともいえる形態素を作り出すことができ、それが無限にある現象を文として産出することができる言語の二重分節性を有しているため、いかなる現象でも表現することができます。

 4 言語の文字数
 言語の文字数が等しいということはありえません。

 したがって答えは3です。





平成29年度, 日本語教育能力検定試験 解説