【第72回】母音の無声化で「です/ます」を綺麗に発音する

日本語コラム

 毎年のことですが、一年生の「です」「ます」問題に頭を悩ませています。
 「です」の「す」、動詞丁寧形の「ます」の「す」は必ず軽く発音されますが、何度教えても中々直らない学生もいます。
 これは日本語を美しく発音するためには必要なことです。

母音の無声化

 母音の無声化とは、母音「i」「u」が無声子音に挟まれたとき、あるいは無声子音に「i」「u」がついた音が語末あるいは文末に来たときに、母音「i」「u」の声帯振動が無くなり母音が聞こえにくくなることです。
 日本語における無声子音は「k」「s」「t」「h」「p」です。
 無声化しないからといって間違いでありませんが、日本語の標準的な発音では原則として無声化します。

 

母音「i」「u」が無声子音に挟まれたとき

 ローマ字表記したときに、「k」「s」「t」「h」「p」に挟まれた母音「i」「u」は無声化されます。
 つまり、子音だけ発音されます。

  (1) 学生 がくせい g a k [u] s e i
  (2) 好き すき s [u] k i
  (3) 深い ふかい h [u] k a i
  (4) 疲れる つかれる t [u] k a r e r u
  (5) 明日 あした a s [i] t a
  (6) 洗濯機 せんたくき s e n t a k [u] k i
  (7) 水族館 すいぞくかん s u i z o k [u] k a n

 (6)の洗濯機、(7)の水族館は自然に発音すれば「せんたっき」「すいぞっかん」のように促音に変わります。
 これは「k」と「k」に挟まれた母音「u」が脱落し、子音「k」だけ発音して1拍としたためです。

 

無声子音に「i」「u」がついた音が語末あるいは文末に来たとき

 語末、文末に無声子音に「i」「u」がついた音が来ると無声化され、子音だけ発音されます。「~です」の「す」、動詞丁寧形「~ます」の「す」、「あります」の「す」等がこれにあたります。

  (8) 趣味はゲームで
  (9) タバコを吸いま
  (10) ありがとうございま
  (11) 海の季節(うみのきせ
  (12) 浄蓮の滝(じょうれんのた

 

例外的に無声化しない場合

 無声化する母音が連続する場合は、不明瞭な発音を避けるために無声化しない場合があります。

  (13)✕寿司 すし s [u] s [i]
  (14)〇寿司 すし s [u] s i
  (15)✕服装 ふくそう h [u] k [u] s o u
  (16)〇服装 ふくそう h [u] k u s o u
  (17)✕高橋 たかはし t [a] k [a] h [a] s [i]
  (18)〇高橋 たかはし t a k a h [a] s [i]

 

無声化する場合としない場合の比較

 学生の発音を録音しました。
 一つは文末の「です」の「す」が無声化している音声、もう一つは無声化していない音声です。
 どっちがどっちか、聞いてみてその違いが分かりますか?

 

無声化は美しい発音

 録音1は文末の「す」が無声化していませんでした。そのため不自然な感じがします。

先生こんにちは。
私はそんしんひです。
私は19歳です。
私はけいだい出身です。
私の専攻は日本語です。
私の趣味はゲームです。
よろしくお願いします。

 一方録音2は無声化がちゃんとできていて、自然で綺麗な発音の日本語に聞こえます。

先生こんにちは。
私の名前はりちょうようで[す]
私は18歳で[す]
私は日本語科の一年の学生で[す]
私はかんたん出身で[す]
私の趣味はゲームで[す]
宜しくお願いしま[す]

 この差はネイティブから見ると大きな違いで、「す」をあまりにも強く発音すると不自然にうるさく感じてしまいます。
 「す」の子音は「s」ですから、文末のその音はほとんど空気による「s」の摩擦音だけです。
 丁寧形なら文末は「です/ます」を多用しますから、これらを無声化する癖が身に付けられると格段と美しい発音を身に付けられます。

 母音の無声化は鼻濁音と並び日本語の美しい発音のために大切な要素ですから、スピーチや発表などではもちろん、何気ない会話でもぜひ習得したいところです。

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Posted by そうじ