【第48回】複数の解釈ができる言葉

日本語コラム

 先日作文の授業で「自分の好きなところ」というテーマを出しました。

 私は「自分が思う自分の良いところ」という出題意図でこのテーマとしたんですが、しかし学生たちは「実家」「寮」「近くのお店」などと書いていてびっくり。

 その時気付きました。
 そっかこのテーマは2つの意味があるんだ…

 

所(ところ)

 「所」にはいろんな意味あります。

 1.物理的な空間、領域、場所(集団)
  (1) 夏休みはおばあちゃんのところに行く。
  (2) 暗いところを一人で歩くときは気を付けてください。

 2.あるものや状況に関する性質の一部分
  (3) 彼のそういう勇敢なところには感心させられる。
  (4) 彼女の好きなところはどこですか?

 3.経過の状態、場面、局面
  (5) 良いところだったのにセリフが棒読みで興ざめした。
  (6) できるところから始めてみてください。

 およそ大きく3つに分けられ、いずれも口語では「とこ」と省略して言うこともできます。
 文法に接続する「ところ」については省略しました。

 

「自分の好きなところ」の意味

 というわけで「ところ」にはいくつもの意味があるんですよね。

  (7) 自分の好きなところ

 なのでこの「ところ」の考えられる意味は2つ。
 1つは自分の性格や外見などのあらゆる特徴など、もう1つは物理的空間を指しています。

 文脈がなく突然こう聞かれれば二通りになってしまって確かにどちらか分からなくなります。
 学生と私の間で認識に齟齬が生じたのはこれが原因でした。

 じゃあ文脈に頼らず明確に伝えるためにはどう言えばいいか。
 まさしく好きな場所を問いたいのであれば「場所」を使えばいいです。性質を問うなら「自分のどんなところ」と言えば間違いありません。

  (8) 自分の好きな場所はどこですか? - 近くの喫茶店です。
  (9) 自分のどんなところが好きですか? - 外向的なところです。

 ちなみに疑問詞を加えても答えは変わりません。

  (10) 自分の好きなところはどこですか? - 外向的なところです。
  (11) 自分の好きなところはなんですか? - 外向的なところです。

 このようにこの言い方は、文脈がないと的確に伝えることができなさそうなんです。

 

作文のテーマはほとんどが名詞

  〇「わたしの家族」
  〇「夏休みの思い出」
  〇「大人になったらしたい事」

 作文のテーマはいずれも名詞です。どれだけ長くなっても文全体で名詞になるような接続をします。
 ですからこのようなテーマはなんか変に感じます。

  ✕「あなたの家族を紹介してください」
  ✕「夏休みの思い出は何ですか?」
  ✕「大人になったら何をしたい?」

 名詞化されていない「自分のどんなところが好き?」はテーマとして不適切。だから「自分の好きなところ」としました。これが後の誤解を生む原因となってしまったんですねー…。

 仮にちゃんと口頭で説明したとしても2通りの解釈があるのはテーマとして駄目!
 学生を混乱させてしまって結構反省してます。
 以後ちゃんと確認しよ。

 

日本語コラム

Posted by そうじ