サ変動詞「愛する」は一部不規則な活用をする曲者

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 活用語尾の母音の変化に基づく分類方法では、動詞は五段動詞、一段動詞、サ変動詞、カ変動詞に分けられます。その動詞がどのグループに属するかは、一般に「ない形」に活用してみるのが分かりやすいです。
 参照:動詞のグループ判別方法について

「ない」の直前の音が「あ段」なら五段動詞。(~anai)
「ない」の直前の音が「し」ならサ変動詞。(~しない)

 これを覚えていれば分類するのは簡単です。しかし、このうち一部のサ変動詞は不規則な活用をするものがあります。それが、「愛する」などの動詞です。

辞書形 ない形 分類
話す 話さない サ行五段活用
愛す 愛さない サ行五段活用
愛する 愛さない サ行変格活用
値する 値しない サ行変格活用
揺する 揺すらない ラ行五段活用

 「愛す」のない形は「愛さない」で五段動詞です。語尾の「す」が活用して「さない」となっているからです。
 では、「愛する」はどうでしょうか。

 「愛する」のない形もまた「愛さない」です。もし五段動詞とみなすなら活用語尾は「る」なので「愛すらない」となるはずですが、語尾の「る」が完全に無視されています。また、サ変動詞なら「愛しない」となるはずです。ところがそのいずれでもなく「愛さない」が正しい活用形。これらから動詞のグループを判別することは難しいといえます。

 辞書によると、「愛する」の分類はサ行変格活用(サ変動詞)です。この「愛する」は分類上サ変動詞であるのにも関わらず「愛さない」とさらに不規則な活用をすることから、学習や指導の際には注意が必要です。

 ちなみに「愛する」の他に「熱する」「辞する」「画する」「帰する」などもあります。これらはそれぞれ対応する五段動詞「熱す」「辞す」「画す」「帰す」があります。これらも同じです。

 
 日本語母語話者は、脳内でいちいち意識して活用しているわけではないので自然とない形が分かります。しかし学習者はそうではありません。動詞とその動詞の分類を紐づけて覚え、グループごとの規則に基づいて活用し、言葉として発します。こういった不規則なものは記憶に負荷をかけるので覚えにくくなってしまいます。

 これについては平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説(2)でも出題されていますので、日本語教師としては注意しなければいけません。