【第32回】日本語の美しくないところ
突然ですが、問題です。
次の動詞の分類を( )の中から選んでください。
【問1】 愛する(あいする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )
【問2】 値する(あたいする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )
【問3】 揺する(ゆする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )
どうでしょうか。
もし正確に答えられたとしたら、この3つの動詞たちの奇妙さに気づかれたのではないかと思います。
私は今、この「~する」の動詞たちにとても腹が立っています。
「愛する」は五段活用、「値する」はサ変活用、「揺する」は五段活用です。
一つずつ見ていきます。
私が動詞の分類を簡易的に見極めるときは、動ない形で判断していますのでその方法を使って説明します。
「愛する」の動ない形は「愛さない」。
「す」が「さ」になっているのでサ行五段活用だと分かります。これは「話す」「治す」などと同じ使い方です。
「値する」の動ない形は「値しない」。
これは「する」がそのまま「しない」と変化しているので、サ変活用だと分かります。
五段活用なら「値さない」になりますが、この言い方は不適切です。
「揺する」の動ない形は「揺すらない」です。
「る」が「ら」になっているのでラ行五段活用です。
全て「~する」で終わる動詞なのにも関わらず、分類が異なっています。
しかも「愛する」に限って言えば、語尾の「る」が活用時完全無視。
教えるなら「愛す」という言い方のほうが文法に沿ってて良いと思います。
これは「訳する」と「訳す」、「徹する」と「徹す」などにも同様のことが言えます。
しかし「愛するべき人」よりも「愛すべき人」のほうがより多く使われていますし、「愛する人」もごく一般的な言い方ですから困ったもんです。
これでは「愛する」は「愛さない」だから、「値する」は「値さない」だ!と勘違いする人もいるかもしれませんし、またその逆のパターンも十分ありえます。
「揺する」のような動詞も極悪非道に見えてきませんか?
あたかも私はサ変ですよと見せ掛けておいて、実はラ行五段活用。
こうやって学習者の混乱を招いていくのでした…。
私は中国語の動詞を勉強するとき、①発音、②意味、③漢字の書き方によく注意します。人によっては、④例文、⑤派生した用法にまで及ぶでしょう。
でも日本語学習者が日本語の動詞を勉強するとき、上で挙げた5つのポイントは同じですが、これに加えて動詞の分類にも注意しなければいけません。
(一段動詞、五段動詞、カ変、サ変、自動詞、他動詞 …)
なぜなら動詞の分類によって文法が細かく変わるので、正しく使うためには絶対必要なことなんです。
日本人ならなんでもないことですが、これを教えるとなると相当の労力が要ります。
日本語のこういうところ、美しくないといわれても仕方ありませんね…。
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