例示の用法「~ように」が生む複数の解釈ができる文

日本語の色んなお話

山田さんのように遅刻しないようにしなさい。

 この文はどういう意味ですか?と学生から質問されました。学生いわく、この文からは2つの状況が推測されるそうです。
 一つは「いつも遅刻しない山田さんを見習って(模範として)、遅刻しないようにすること」。
 もう一つは「いつも遅刻している山田さんを反面教師として、遅刻しないようにすること」。

 確かに2つの解釈ができます。

 

「~ように(ような)」の用法に着目してみる

 この文で用いられている「ように」は2つありますが、「山田さんのように」の「ように」について見てみます。
 この「ように」は例示(例を挙げる)の用法です。

  (1) 彼のように、外国語を流暢に話せるようになりたい。
  (2) 彼女のような子供を殴ったりする母親にはなりたくない。

 例文(1)は「彼」を良い模範として扱っているのに対し、(2)では「彼女」を悪い例としています。「~ように(ような)」を用いた例示の用法では、対象を良い例と見る場合、悪い例と見る場合いずれでも用いることができます。これが「山田さんのように遅刻しないようにしなさい。」に2つの解釈が生まれる理由です。

 

複数の解釈が生まれない言い方

 では、このような言い方はどうでしょうか。

(3) 山田さんを見習って遅刻しないようにしなさい。
(4) 山田さんを反面教師として遅刻しないようにしなさい。 

 例文(3)のように、見習う/見倣うと言えばそのほとんどが良いことなので、山田さんは遅刻していないことになります。
 (4)では「反面教師」という言葉が用いられていますので、山田さんは遅刻していることになります。

 
 「~ように」が用いられても、実際はその前後関係や文脈によって解釈は1つに絞られますので、コミュニケーションにおいて支障が出る場面はまずありません。