イ形容詞「多い」が名詞の前に接続しにくい理由

「多い」「少ない」の基本的な使い方

 イ形容詞は名詞の前に接続して、その名詞を修飾することができます。

 (1) 美味しい料理
 (2) 高い山がそびえている
 (3) 青い空

 しかし、「多い」と「少ない」はそのまま名詞の前に接続することが難しいです。

 (4)✕教室に多い人がいる。
 (5)✕教室に少ない人がいる。
 (6)✕窓に多い虫がついている。
 (7)✕少ない可能性が残っている。

 「接続することが”難しい”」と言ったのは、そのまま名詞の前に接続しても違和感がない場合もあるからです。このケースは例外です。

 (8) 多い時は週5回飲みに行く。
 (9) 少ない努力で成果を出す。

 「多い」「少ない」はそのままだと使用に制限がありますが、「多くの」「少しの」とすると許容の範囲が広がります。ただし、この形だと例文(10)(12)は会話で用いられにくい硬めの表現になり、(11)(13)は自然とは言えない表現になってしまいます。

 (10) 教室に多くの人がいる。
 (11)△教室に少しの人がいる。
 (12) 窓に多くの虫がついている。
 (13)△少しの可能性が残っている。

 会話で用いる自然な表現にするには、「多くの」や「少しの」よりも「たくさん+動詞」「少し(ちょっと)+動詞」のように副詞を使ったほうが良いです。

 (14) 教室に人がたくさんいる。
 (15) 教室に人が少しいる。
 (16) 窓に虫がたくさんついている。
 (17) 可能性が少し残っている。

 

「多い」「少ない」はなぜ名詞の前に接続しにくいのか

 「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」のような量を表す数詞は、通常副詞的に扱われるという性質があります。そして副詞は動詞を修飾します。

 (18) 椅子が8つあります。(動詞を修飾)
 (19) 8つ椅子があります。(動詞を修飾)

 例文(18)(19)はいずれも数詞が動詞を修飾しています。数詞が名詞を修飾するためには、「の」で繋げなければいけません。しかしそうすると、間違いではありませんがやや不自然になってしまいます。

 (20)△8つ椅子があります。(名詞を修飾)

 「多い」「少ない」の品詞はイ形容詞ですが、その性質は量を表しているので数詞と似た使い方になり、直接名詞を接続することができません。名詞を接続するには、数詞と同様に「の」で繋げる必要があるため、「多くの」「少しの」という形を取ります。

 (21)✕多い椅子があります。
 (22) 多く椅子があります。
 (23) 椅子がたくさんあります。

 まとめると…

日本語の数詞は副詞的な使い方をするので、基本は名詞を修飾しない。
「多い」「少ない」はイ形容詞だが、そもそも量を表すため数詞に似ている。
つまり「多い」「少ない」も副詞的な使い方をするので、基本は名詞を修飾できない。

 ということですね。





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