学習と指導法について

目次

 

指導法/授業

★☆☆ 記述主義

言葉について考える際に、言語は本来的に変化するものとし、日本語の乱れについても実際に言語として運用されていることを事実として肯定的に捉え、現実の使用実態を重視する立場のこと。逆の立場に規範主義がある。

★☆☆ 規範主義

言葉について考える際に、日本語の表現の正しさ、文法的な正しさを重視し、規範とされる日本語とは食い違っている「ら抜き言葉」「さ入れ言葉」「全然~肯定表現」などの日本語の乱れを否定的に捉える立場のこと。逆の立場に記述主義がある。

★☆☆ 前作業

授業における、本作業を行う前の準備段階のこと。本作業で行うタスクに関連する話題を提示することで、学習者の背景知識を活性化させ、学習効率を高めたりする段階。

★★★ プライミング効果 (priming effect)

あらかじめ提示された事柄(プライム)により、それに関連する別の事柄(ターゲット)が覚えやすくなったり、思い出しやすくなること。教室においては、あらかじめ教師が手本を見せたり、授業に関連する内容の雑談をしておくなどすることで学習効率を高めることができるとされる。

★☆☆ 本作業

授業における、その授業の中心となるタスクを行う段階のこと。

★☆☆ 後作業

授業における、その授業のまとめの段階のこと。

★☆☆ 明示的指導/演繹的指導/演繹的アプローチ

文法や文型の規則を明示的に説明して教える指導法のこと。

★☆☆ 暗示的指導/帰納的指導/帰納的アプローチ

学習者に文法や文型の使用例を示し、学習者自らが例の中から規則を見つけ出させる指導法のこと。

★☆☆ 入り込み指導/入り込み授業

在籍学級での授業中に日本語指導教員が入って、対象の児童生徒を支援する指導のこと。

★☆☆ 取り出し指導/取り出し授業

在籍学級以外の教室で個別に行う指導のこと。

★★★ 媒介語/媒介言語

言語教育における学習者の目標言語ではない言語のことで、多くの場合、学習者の母語を指す。

★★☆ 最近接発達領域/発達の最近接領域 (Zone of Proximal Development)

子どもの物事が「できる」段階と、「できない」段階の中間的な段階のこと。子どもは突然何かできるようになるわけではなく、この中間的な段階で周囲の大人からアドバイスやサポートを受けて何かできるようになっていくと考える。ヴィゴツキー (L.S.Vygotsky)が提唱した。

★★☆ スキャフォールディング/足場掛け (scaffolding)

ヴィゴツキー (L.S.Vygotsky)が提唱した最近接発達領域/発達の最近接領域(ZPD)において、「できる」と「できない」の中間的な段階で周囲の大人が行う様々なアドバイスやサポートなどの支援のこと。適切なタイミングで適切な支援が行われることで習得が進むと考えられる。

☆☆☆ ARCSモデル/ARCS動機付けモデル/アークスモデル

ジョン・ケラー (John M.Keller)が提唱した、教師が学習者の学習意欲を高めるために行うべき行動を注意 (Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confidence)、満足感(Satisfaction)の4つの側面から示したモデル。授業の計画に活用することで、学習者の興味を引き出したり、やる気を引き出せるような教案を作ることができるようになる。

注意(Attention) 学ぶ内容が学習者の興味や知的好奇心を刺激するかどうかの度合い。
関連性(Relevance) 学ぶ内容が学習者にとって意味があると感じられるかどうかの度合い。
自信(Confidence) 学習者が自分の力で達成できそうだと感じられるかどうかの度合い。
満足感(Satisfaction) 学習者が学習プロセスや結果に満足できるかどうかの度合い。

★★☆ 適性処遇交互作用 (Aptitude Treatment Interaction)

学習者の適性(特性)と処遇(指導法)には交互作用があり、その2つの組み合わせにより学習効果に差が出るというもの。

☆☆☆ モデル会話

教科書に書かれている対話形式の文章のこと。その課で導入した単語や文法などを使って対話が行われたりする。

☆☆☆ リライト (rewrite)

教科書の分かりにくい表現を別の表現に書き換えること。

技能別指導

★★★ グループワーク

ディスカッションやディベートなどのグループで行う活動のこと。

★★★ ペア・ワーク

学習者を二人一組にして行う活動のこと。

★★☆ ディベート (debate)

賛成派と反対派に分けられるようなテーマについて参加者で討論し合う活動のこと。参加者は自分の意見とは無関係に、いずれかの立場に振り分けられる。

★★☆ ディスカッション (discussion)

特定の答えのないテーマについて参加者で自分自身の意見を述べ合う活動のこと。

★☆☆ ブレーン・ストーミング (brainstorming)

参加者の意見を批判したりせずに自由にアイディアを出し合い、その中で新しくより良いアイディアを生み出していく会議手法の一つ。ブレストと略されることもある。

★☆☆ プロジェクトワーク

学習者が主体となって計画をし、資料や情報を集めたりして、グループごとに一つの作品にまとめる学習方法。報告書、新聞、発表、映像などを作る。現実性の高い活動なので、実践的な日本語を学べる。

★★☆ ロールプレイ

会話の目的や役割、状況を明示して、その役割に応じた会話をグループで進める活動のこと。

★☆☆ シナリオ・プレイ

既に完成している脚本を演じること。コミュニケーション能力の養成として効果的。

★☆☆ シミュレーション

ある架空の状況下で発生している何らかの問題を、学習者たちが調査や意見交換などをして解決していく現実的な活動のこと。

★☆☆ インタビュー

一方が他方に質問をして情報を得るために行われる活動のこと。

★☆☆ フィールドトリップ/フィールドワーク

テーマに即した現地の人々と共に生活をしたり、 そのような人々と対話したり、インタビューをしたりする社会調査活動のこと。教室を離れて、実際に日本語母語話者とやり取りできるのが特徴。

★☆☆ タスク先行型

まずタスクを課して、その後で適切な表現を教える形式の授業のこと。

★☆☆ リピーティング

言い終わった後に同じ内容をリピートすること。

★★★ シャドーイング (shadowing)

テキストを見ずに音声を聞きながら、その音声よりも少し遅れて言葉を繰り返していく練習法。音素的な表記から決定することができない、イントネーションやプロミネンス、リズムなどのプロソディの習得に有効。

★☆☆ パラレル・リーディング (parallel reading)

テキストを見ながら音声を聞き、聞こえてくる音声と同じスピードで音読する方法。

★★★ ディクテーション (dictation)

再生したCDや教師が読み上げる音声を聞き取り文字化していく聞き取りの活動のこと。

★★★ ディクトグロス (dictogloss)

4技能を組み合わせて個人学習とピア・ラーニングが行える統合的な学習法のこと。まず文法構造が多少複雑な短めのまとまった文章を数回読み、学習者はそのキーワードを聞き取ってメモし、そのメモをもとに各自元の文章の復元を試みる。次にペアやグループで復元していき、文章を完成させていく過程をとる。

★☆☆ ジグソー練習

ペアやグループになり、各自受け取った情報の異なる文章や絵などからお互いのインフォメーションギャップを話し合いによって埋めていく練習方法。

作文指導(書く)

★☆☆ ライティングプロセスの認知モデル/ライティングの認知プロセスモデル

「計画」「文章化」「推敲」の3つの段階によってライティングが行われるとする考え方のこと。また、それぞれの段階で、その過程が適切に行われているかを書き手がモニターする仕組みがあり、モニターには長期記憶とワーキングメモリが関係しているとする。長期記憶から必要な情報を取り出して書いたり、モニターに役立てたりする。ワーキングメモリにはこれまでに書き上げた内容が記憶されている。フラワー (L.Flower)とヘイズ (J.R.Hayes)によって提唱された。

★☆☆ プロセス・ライティング/プロセス・アプローチ (The Process Approach)

作文を仕上げていくそのプロセスを重視した作文指導法のこと。計画、構想、下書き、推敲、教師による添削・フィードバックなどの繰り返しによって新しい発見をし、よりよい文章を再構築していくことを目的とする。教師は学習者のサポートを担う。

★☆☆ ピア推敲

お互いに書いたものを読み合い、良いところと直したほうがいいところを伝え、その内容をもとに書き直すような活動のこと。作文活動の一つ。

☆☆☆ 新旧レトリックアプローチ (Current-Traditional Rhetoric Approach)

談話や文体にあるパターン、段落の構造や機能などの文章構造を重視した作文指導法のこと。

★☆☆ 制限作文アプローチ (Controlled Composition Approach)

特定の文型や表現を使わせて書かせる作文指導法のこと。

★☆☆ ディクトコンポ (dictocomp)

文の一部をディクテーションさせた後に、その続きを作文させる活動。

読む

☆☆☆ 音読

声に出して読み上げること。

☆☆☆ 黙読

声に出さずに読むこと。

☆☆☆ 精読

読解で、言語形式(文法)と内容の両面を丁寧に読む読み方のこと。

☆☆☆ 多読

できるだけたくさんのテキストを読む読み方のこと。

★★★ 速読

読解で、普通よりも速く読むこと。大意をつかもうとする読み方のスキミングと、特定の情報を得ようとする読み方のスキャニングなどに分けられる。

★★★ スキャニング (scanning)

速読の一種で、大量の文章から特定の情報を探し出すための読み方のこと。名簿から特定の名前を見つけたり、辞書で言葉の意味を調べるときなどに用いる読み方。スキャニングにはトップダウン処理がより必要とされる。

★★★ スキミング (skimming)

速読の一種で、文章の要点や全体の大意を理解するための読み方のこと。

★☆☆ ジグソー・リーディング (Jigsaw Reading)

各自がそれぞれ異なった文章を読み、自分が読んだ情報を持ち寄って、情報の断片から全体を作り上げ共有することで読解力を強化するグループでの読解活動のこと。

★☆☆ 再話

読解や聴解後に、自分が理解したことを自分の言葉で話すこと。語彙や文法を使わせ定着させることが目的となる。

 
 

質問

★★☆ 指示質問/レファレンシャル・クエスチョン (referential question)

質問者が答えを知らない状態で尋ねる質問形式のこと。

★★☆ 提示質問/ディスプレイ・クエスチョン (display question)

質問者が答えを知りながら尋ねる質問形式のこと。

☆☆☆ オープン・クエスチョン (open question)

相手が自由に考えて答えることができる質問のこと。「どう」「なぜ」などを用いた質問がこれにあたる。

☆☆☆ クローズド・クエスチョン (closed question)

相手の答える内容が限定されている質問こと。「はい/いいえ」で答えられるYes/Noクエスチョンと、択一形式のオルタナティブ・クエスチョンに分かれる。

☆☆☆ オルタナティブ・クエスチョン (alternative question)

クローズド・クエスチョンのうち、択一形式の質問のこと。

☆☆☆ Yes/Noクエスチョン (yes-no question)

クローズド・クエスチョンのうち、「はい/いいえ」で答えられるような質問のこと。

 
 

学習

★☆☆ 明示的学習/演繹的学習

学習者が文法や文型の規則を演繹的に学習し、自分の中に取り込む学習法のこと。

★☆☆ 暗示的学習/帰納的学習

学習者が文法や文型の使用例に触れることで、学習者自らが規則を見つけ出し、身に付ける学習法のこと。

☆☆☆ プログラム学習

学習者それぞれの能力差、個人差に応じて、それぞれの早さ、あるいは異なった過程を踏みながら学習していくこと。

★☆☆ 状況的学習論

ある人が社会活動に参加することを通して知識や技能の習得していく過程を学習と捉える考え方のこと。レイヴ (Lave)とウェンガー (Wenger)によって提唱された。

★☆☆ 状況的学習

社会活動に参加することを通して学ばれる知識や技能を習得すること。

★☆☆ 正統的周辺参加 (Legitimate peripheral participation)

何らかの社会活動において、当初は中心から離れた部分に参加していた新人が、状況的学習を積み重ねることで次第に参加する位置を中心に移していくこと。

★★☆ 学習者オートノミー/自律学習 (autonomous learning)

学習者が自分の学習を自ら管理して進めていく学習方法のこと。自分のニーズに応じて計画し、遂行する。自律学習は一人で計画し、一人で学習することではなく、他者の援助を得たり、教師や教材、教育機関などの周囲のリソースを利用して学習を進めていくこと。学習者が利用するリソースは、人的リソース、物的リソース、社会的リソースに分けられる。

人的リソース 教師、友人、クラスメイト、地域住民…
物的リソース Webサイト、動画、教科書、辞書、新聞、美術館、博物館、デパート…
社会的リソース SNS、地域社会、コミュニティ、アルバイト、職場、サークル活動、ボランティア活動…

★☆☆ 人的リソース

自律学習で学習者が利用するリソースのうち、教師、友人、クラスメイトなどのこと。

★☆☆ 物的リソース

自律学習で学習者が利用するリソースのうち、Webサイト、動画、書籍などのこと。

★☆☆ 社会的リソース

自律学習で学習者が利用するリソースのうち、SNS、地域社会、コミュニティなどのこと。

★☆☆ セルフ・アクセス

自律学習において、学習者が必要なリソースで自らアクセスすること。

★☆☆ ポートフォリオ

学習記録のこと。教師なら自分の授業の記録などを指し、学習者なら自分の学習過程で書いたノートや作文、作品などを指す。

★☆☆ ルーブリック

縦軸に複数の具体的な評価項目、横軸にはその到達度を置き、学習が各評価項目のどのレベルまで到達しているかを測ることができる評価表のこと。

評価項目1 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目2 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目3 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目4 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準

C:努力が必要 B:概ね良し A:十分 S:期待以上

★★★ 動機付け (motivation)

行動の原動力となるものや、そのきっかけのこと。内発的動機付けと外発的動機付けに分けられる。第二言語習得においては、ガードナー (Gardner)が道具的動機付けと統合的動機付けの概念を提唱した。

★★☆ 外発的動機付け

動機付けのうち、外部からの報酬を得るための行動の原動力となるもの。褒められるためなどがこれにあたる。

★★☆ 内発的動機付け

動機付けのうち、自分の内側から湧いてくる行動の原動力となるもの。対象に興味があることなどがこれにあたる。

★★☆ 統合的動機付け

第二言語習得での動機付けにおける、その文化に溶け込みたいなどという動機のこと。道具的動機付けよりも、統合的動機付けのほうが学習意欲を長期間維持しやすいとされている。ガードナー (Gardner)によって提唱された。

★★☆ 道具的動機付け

第二言語習得での動機付けにおける、お金のため、進学や就職に有利である等の動機で外国語を学習する場合の動機のこと。外国語を道具のように扱うことからこのように名付けられた。ガードナー (Gardner)によって提唱された。

★☆☆ 習慣形成理論

習慣は特定の刺激と反応が結び付いたものであり、刺激と反応が強化されると習慣形成しやすくなるとする理論。無意識かつ自動的、反射的に口頭で発話するためには習慣を形成することが必要であり、そのためには反復が必要であるという考えから、オーディオ・リンガル・メソッドのミムメム練習やパターン・プラクティスなどが開発された。行動主義に基づく学習理論。

☆☆☆ 古典的条件づけ

遺伝的に組み込まれた反応と、無関係な反応とを結びつける条件づけのこと。犬にエサを与える前にベルを鳴らすことで、次第にベルの音を聞くだけで唾液を分泌するようになるという条件反射がもととなった理論。

☆☆☆ 道具的条件づけ/オペラント条件づけ

報酬や罰に適応して自発的にある行動を行うように学習すること。エサの出るレバーを押すとエサが出てくるという箱の中にマウスを入れると、マウスは自発的にレバーを押すようになるという実験がもととなった理論。

★☆☆ モニタリング/モニター/モニター行動 (monitoring)

それが正しいかどうか、過程が適切に行われているかどうかを自らの知識や理解に照らし合わせてチェックしたり、修正したりすること。

★★☆ メタ認知

自分自身の学習などを客観的に認知すること。

★★☆ ビリーフ/学習ビリーフ (belief)

信念。どのようにすれば言語を習得できるかという考え方のことを指す。

用途別

★★★ 生活言語能力/BICS (basic interpersonal communication skills)

生活場面で必要とされる言語能力のこと。コンテクストの支えがあるため認知的な負担が少なく、2年ほどで習得可能とされている。

★★★ 学習言語能力/CALP (cognitive academic language proficiency)

教科学習などで用いられる抽象的な思考や高度な思考技能のこと。学習の場面では低コンテクストの状態になるため認知的な負担が大きく、習得には5~7年必要だとされている。

☆☆☆ JFL (Japanese as a Foreign Language)

外国語としての日本語のこと。

☆☆☆ JSL (Japanese as a Second Language)

第二言語としての日本語のこと。

☆☆☆ JGP (Japanese for General Purposes)

日常生活で用いられる一般的な日本語のこと。

☆☆☆ JSP (Japanese for Specific Purposes)

仕事や研究などの特定の目的に用いられる特別な日本語のこと。

☆☆☆ アカデミック・ジャパニーズ (Japanese for Academic Purposes)

大学や大学院で求められる日本語能力のこと。具体的には、講義の内容を聞き取る能力や、プレゼン、レポートや論文の執筆等に必要な能力のことを指す。

☆☆☆ アカデミック・ライティング (academic writing)

レポートや論文などの学術的な文章を執筆する能力のこと。

 
 

教師の成長

★☆☆ アクション・リサーチ

教師の自己成長を続けるために現場で行われる分析・研究のこと。現状の分析、調査、改善策の計画、実施、結果の分析、反省などを行うことで、その教育現場のニーズに沿った柔軟性を高められる。

★☆☆ ケース・スタディ

実際に発生した問題について調査・分析すること。

☆☆☆ ティーチング・ポートフォリオ

個人の教授活動の記録や教育業績を集めたものをポートフォリオといい、これを自己成長のための反省材料として利用したもののこと。

☆☆☆ フィールドノート

教育現場にて記録された何らかの情報のこと。

☆☆☆ フォローアップ・インタビュー

あるタスクが終わってからの学習者へ対するフォローアップ(支援や追跡調査)を目的としたインタビューのこと。







日本語教育能力検定試験 解説, 用語集