談話と会話分析について

目次

 

談話

★★★ 談話 (discourse)

複数の文が連続して構成されるひとまとまりの内容を持った話のこと。

☆☆☆ 開始部 (opening)

会話における、本題に入る前の部分のこと。

★☆☆ 終結部 (closing)

会話における、本題の後の部分のこと。

★☆☆ 前終結 (pre-closing)

会話の終結部を構成する手続きのうち、相手に会話を終結させることに同意するかどうかを確認する手続きのこと。同意しない場合は、話すべき残された話題を提示し、同意した場合は2つ目の手続きである終結/最終交換へ移行する。

★☆☆ 終結/最終交換/最終発話交換 (closing)

会話の終結部を構成する手続きのうち、異なる話者によって対となる発話がなされる手続きのこと。ここでは会話が終結する。

 
 

会話分析

★☆☆ スモール・トーク (small talk)

会話における本題に入る前に話す、天気について触れたり、相手の近況を伺ったりといった他愛もない会話のこと。挨拶的な役割を果たし、コミュニケーションを円滑にするためのやりとりといえる。

☆☆☆ 緩衝的表現/垣根表現

断定表現や明言を避けるために用いる「たぶん」「かもしれない」「だと思うけど」などの表現のこと。

☆☆☆ 婉曲表現

否定的な表現を避け、角が立たないように穏やかな言い回しにすること。「死ぬ」ではなく、「息を引き取る」と言ったりするのがこれにあたる。

★☆☆ 注釈表現

自分が述べる発話に対して解説者風の抽象的な説明をした表現のこと。「ちょっと説明長くなるかもしれないけど」や「聞いてないかもしれないけど」などがこれにあたる。

★☆☆ 言いさし表現

「お願いがあるんですが。」など文の最後の部分を省略している表現のこと。言いさし表現は文としては不完全ですが、話し言葉で多く用いられ、一つのまとまりとなる。

★☆☆ メタ言語/メタ表現

ある言葉について説明した他の言い方のこと。例えば、「春」とは何かという問いに対して、「4つの季節のうち、3月~5月くらいの暖かい季節」と答えることができ、この言い換えた表現がメタ表現にあたる。

☆☆☆ ヘッジ (hedge)

断る際の「それはちょっと…」の「ちょっと」や、「まあそうだけど…」の「けど」などに見られる、発話内容や否定表現を和らげる迂言的表現のこと。

★★★ フィラー (filler)

「あのう」「そのう」「えっと」などの言い淀み、言葉を探しているときに発せられる言葉のこと。

★★★ ポーズ/間 (pause)

発話中に出現する、実際には発話されない一呼吸置かれた時間のこと。分かりやすく伝えたり、相手に考えさせる時間を与えたりする機能を持つ。

★☆☆ リペア/修復 (repair)

既に述べた発言の不明瞭な部分や間違った部分などを訂正する行動のこと。

★★★ ターン (turn)

二人以上が参加する会話において、1人が話し始めてから話し終わるまでの間の発話のこと。ターンは話し終わったり、ポーズが挟まれたり、他の人によって奪われることによって終了する。

★☆☆ ターン・テイキング/話者交替 (turn taking)

話者が交互に話すこと。または、ターンを積極的に取ろうとすること。

☆☆☆ ターン・イールディング (turn yielding)

話し手が聞き手にターンを譲ること。相手に発話を促したり、ポーズを挟んだりすることによって実現される。

★☆☆ オーバーラップ (overlap)

二人以上が参加する会話において、複数の話者の発話が重複すること。相手の話を意図的に遮って話し出す場合と、相手の発話の終わりと自身の発話の始まりの一部が重なる場合、わざと相手の発話に重複させて一体感を高めようとする場合などに用いられる。

☆☆☆ TRP (Transition Relevance Place)

発話のターン交代が起きる可能性のある時点のこと。文が終わったり、下降調イントネーションで話したり、沈黙したりするタイミングでターン交代は起きやすい。

★★★ 隣接ペア (adjacency pair)

挨拶に対する挨拶、問いに対する返答、誘いや申し出に対する返答などのお互いにペアとなっている2つの発話のこと。

A:①暇? 遊びにいこう?
B:④じゃあいこっか。

★★☆ 挿入連鎖 (insertion sequence)

隣接ペアの中に別の新たな隣接ペアが入ること。以下の会話では、①と④の隣接ペアの中に、②と③の隣接ペアが挿入されている。

A:①暇? 遊びにいこう?
B:②バイトないの?
A:③うん、ないよ。
B:④じゃあいこっか。

★★☆ 優先応答 (preferred response)

隣接ペアにおける、誘いに対する相手の「いいよ」「うん」などの期待された肯定的な応答のこと。

★★☆ 非優先応答 (dispreferred response)

隣接ペアにおける、誘いに対する相手の「いいえ」「ううん」などの期待にそぐわない否定的な応答のこと。

★☆☆ ムーブ (move)

意味的なひとまりまりを表す複数の発話の組み合わせのこと。お願い→承諾→感謝などの組み合わせを指す。隣接ペアは2つの発話をペアとみなすのに対し、ムーブは複数の発話をひとまとまりとする。

☆☆☆ 話者交替の規則

相手が言い終わるのを待ってから自分のターンとなる規則のこと。英語などの言語が代表的。

☆☆☆ 共同発話

話者同士で1つのまとまりを持つ発話を作り上げること。日本語の母語話者同士の会話でよく見られる。その性質から、先取り発話と割り込み発話に分けられる。

☆☆☆ 先取り発話

共同発話のうち、話し手の言おうとしていることを聞き手が先取って話し、発話を完結させること。例えば、「A:あの人 → B:すごいイケメンだったね。」のように、BがAの言いたいことを予測して、2人で発話を作り上げること。

A:あの人
B:すごいイケメンだったね。

☆☆☆ 割り込み発話

共同発話のうち、話し手の発話の中に聞き手が割り込むこと。例えば、「A:あの人 → B:うん、我慢できない。 → A:本当に臭うね。」のような一連の発話のこと。

A:あの人
B:うん、我慢できない。
A:本当に臭うね。

☆☆☆ 制度的談話

ある場面における特別な談話のこと。教室談話、裁判、医療、マスメディアなどでは、それぞれ異なった談話形式を持つ。

★★★ IRE/IRF型/IRF/IRE型/教室談話

教室における談話の基本構造のこと。教師による発話 (Initiation)、学習者の応答(Response)、評価/フィードバック(Evaluation/Feedback)の順で談話が行われる。

教師:リンゴは英語で何と言いますか?Aさん
学生:appleです。
教師:そうですね。

★☆☆ 結束性 (cohesion)

文と文の間に文法的・語彙的な結びつきがあること。「庭に少年がいる。彼は何かを探しているようだ。」の文では、少年と彼は同じ人物を指している。このような時、1文目と2文目には指示詞による結びつきがあるため、正しく理解することができるようになる。

★☆☆ 一貫性 (coherence)

文章中の照応関係や因果関係によって、文が表すテーマが全体を通して一貫していること。

★★★ 直示/直示表現/ダイクシス (deixis)

発話現場にいなければ意味が成立しない言葉の性質のこと。例えば「これは美味しい」と言う時、その場にいる人は「それ」が何を指しているか理解できるものの、その場にいなければ「それ」が何なのかを特定することはできない。時間の直示、場所の直示、人称の直示、談話の直示、社会的直示の5つに分類される。

時間の直示 今日、昨日、明日、来月、来年などの時間を指定するもの。
場所の直示 ここ、そこ、あそこ、上、下、左、前などの場所を指定するもの。
人称の直示 私、あなた、彼、彼女、お母さん、社長などの人物を指定するもの。「私」は話す人によってそれが指す人物が異なる。
談話の直示 「さっきの話」「そのこと」などの文の一部や文全体を指定するもの。
社会的直示 敬語で表される人間関係の社会的な立場の違いなどのこと。

★★☆ 現場指示

代名詞や指示語を実際に近くにあるものを指して用いる用法。

ちょっと、その本取って。

★★☆ 文脈指示

代名詞や指示語を目の前にはないものを指して用いる用法。

そういえば、あの後無事に帰れました?

★★☆ 照応

文章・談話の中で、代名詞や指示語を用いて具体的な何かを指すこと。前方照応と後方照応に分けられる。

★★☆ 前方照応

代名詞や指示語が、それよりも前に出てきたものを指すこと。

A:見て、カメラ買ったの
B:それいくらしたの?

★★☆ 後方照応

代名詞や指示語が、それよりも後に出てくるものを指すこと。

こういうのはどうですか?(他の服を見せる)きっとお似合いになりますよ。

話法/引用

★☆☆ 直接話法/直接引用 (direct speech)

他者の発言や文章を「 」を使って忠実に引用するもの。「先生は『授業中は静かにしなさい。』と怒りました。」など。

★☆☆ 間接話法/間接引用 (indirect speech)

他者の発言や文章を変形させて、「 」を使わずに文に埋め込み引用するもの。「先生は授業中は静かにするようにと怒りました。」など。

記号の意味

★☆☆ デノテーション (denotation)

言葉そのものが明示する普遍的な意味のこと。「太陽」が太陽系の中心に位置する恒星を示す場合の意味を指す。

★☆☆ コノテーション (connotation)

言葉そのものが指し示す明示的な意味ではなく、その言葉の言外の意味のこと。「太陽」が「明るい性格」や「温かい人」などの抽象的な意味として認識される場合の意味を指す。

★☆☆ 談話標識/ディスコースマーカー (discourse marker)

談話において、その後どう続くかを知る手がかりとなる言葉のこと。例えば、「でも」は反論、「ところで」は話題転換、「すみません」は会話の切り出しの合図となる。

★☆☆ 焦点 (focus)

相手の関心を引くために強調された文の一部分のこと。抑揚(アクセント)を変えたり、分裂文のように語順を変えたり、格助詞「が」などの文法的な要素によって強調される。例えば、「私が買ってきたケーキを食べたのは、妹だ」では、「妹」が強調されている。

★☆☆ 前提 (presupposition)

ある命題が適切に発話、または解釈されるために、あらかじめ知っていなければならない命題のこと。例えば、「(A)彼女はまた泣いている。」という文からは、「(B)彼女は以前も泣いたことがある」という情報が得られる。この(B)が(A)を正しく解釈するための前提となっているといえる。

★★★ 呼応

2つ以上の語が一つの文の中で対応する形をとること。例えば、「ほとんど」には述語の否定形(ない)が必ず伴い、「たぶん」には「かもしれない」が伴うことがある。

★★★ 話し言葉/口語

音声を媒介とする言葉のことで、日常生活の会話で用いられる言葉遣いを指す。

★★★ 書き言葉/文語

文字を媒介とする言葉のことで、文章で使われる言葉遣いを指す。

★☆☆ ポリティカル・コレクトネス (political correctness)

性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することです。





日本語教育能力検定試験 解説, 用語集