異文化受容・適応、異文化接触、異文化トレーニングについて

目次

 

異文化受容・適応

★★★ Uカーブ仮説/Uカーブ曲線/U字型曲線モデル/U字曲線 (U-curve)

リスガード (S.Lysgaard)によって提唱された、新しい環境下で起こる人間の心理状態の変化を表した曲線のこと。カルチャーショックを乗り越えて異文化に適応していく過程を、ハネムーン期、不適応期、(回復期)、適応期に分類し、その様子を図示するとU字に見えることからこの名が付けられた。

★★★ Wカーブ仮説/W字曲線/W字型曲線モデル (W-curve)

ガラホーン (J.Gullahorn)によって提唱された、異文化適応過程を表すモデルのこと。リスガード (S.Lysgaard)のUカーブ曲線に帰国後の自文化での再適応過程を加え、ハネムーン期、不適応期、(回復期)、適応期、リエントリーショック期に分類した。その過程を図示するとW字に見えることからこの名が付けられた。

★☆☆ ハネムーン期

異文化との接触前の高い期待感や、接触後に感じられる新鮮さで楽しく感じられる時期のこと。

★☆☆ 不適応期

異文化との接触後に心理的ショックを受ける時期のこと。カルチャーショック期や、単にショック期とも呼ばれる。

★★★ カルチャーショック (culture shock)

異文化の習慣や考え方・常識が自文化と大きくかけ離れているため、心理的ショックを受けたりすること。

★☆☆ 回復期

カルチャーショックが収束して徐々に異文化に順応してきている時期のこと。

★☆☆ 適応期/安定期

カルチャーショックが収束して、異文化を受入れ、精神的に安定してくる時期のこと。

★☆☆ リエントリーショック期

適応期を経て帰国した人に訪れる、自国文化への再適応が必要な時期のこと。

★★★ リエントリーショック/逆カルチャーショック

適応期を経て帰国した人に訪れる、自国文化への再適応が必要な時期に受けるショックのこと。海外在住歴(適応期)がそれなりに長く、現地での生活に満足していたり、友人に恵まれていた人ほど帰国後の再適応に苦しむとされる。

★★★ 文化変容モデル

ベリー (J.W.Berry)が提唱した、異なった文化を持つ人が別の文化に入った場合、入った人と受け入れる側がどのように対応するかによって起こる心理的変化を表したモデルのこと。入った人を取り巻く社会の在り方や個人レベルの文化変容を、自文化と滞在国の文化が共存する状態である「統合」、自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態である「同化」、自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態である「分離」、自文化を喪失し、滞在国の文化にも馴染めずにいる状態である「周辺化」の四つに分類した。それぞれの文化受容態度は固定的なものではなく常に変化するものとされ、そのうち「統合」は最も望ましいタイプとされている。

★★★ 文化受容態度

ベリー (J.W.Berry)が提唱した文化変容モデルにおける、社会の在り方や個人の心理的変化を表した四つの分類のこと。「統合」「同化」「分離」「周辺化」の四つに分けられる。

★★☆ 統合 (integration)

ベリー (J.W.Berry)が提唱した文化変容モデルの四つの文化受容態度のうち、自文化と滞在国の文化が共存する状態。

★★☆ 同化 (assimilation)

ベリー (J.W.Berry)が提唱した文化変容モデルの四つの文化受容態度のうち、自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態。

★★☆ 分離/離脱 (separation)

ベリー (J.W.Berry)が提唱した文化変容モデルの四つの文化受容態度のうち、滞在国の文化に馴染めず、自文化を保持している状態。

★★☆ 周辺化/境界化 (marginalization)

ベリー (J.W.Berry)が提唱した文化変容モデルの四つの文化受容態度のうち、自文化を喪失し、滞在国の文化にも馴染めずにいる状態。

★☆☆ ジョハリの窓 (Johari Window)

ジョセフ・ラフト (J.Luft)とハリー・インガム (H.Ingham)によって考案された、自己開示について客観的に捉えるための枠組みのこと。自分が知っているかどうか、他人に知られているかどうかで4つの枠組みに分けられる。

☆☆☆ オープンな部分 (Area of Free Activity)

ジョハリの窓を構成する枠組みのうち、自分も他人も知っている部分。自己開示している部分。

☆☆☆ 盲目な部分 (Blind Area)

ジョハリの窓を構成する枠組みのうち、自分は知らないが、他人が知っている部分。

☆☆☆ 隠れた部分 (Avoided or Hidden Area)

ジョハリの窓を構成する枠組みのうち、自分は知っていて、他人は知らない部分。

☆☆☆ 未知の部分 (Area of Unknown Activity)

ジョハリの窓を構成する枠組みのうち、自分も他人も知らない部分。無限にあると捉えられている。

★☆☆ ステレオタイプ (stereotype)

多くの人に浸透している、特定の集団に対する先入観や思い込み、固定観念のこと。「眼鏡をかけてる人は勉強できる」や血液型占いなどがこれにあたる。ここに否定的な評価や感情が加わることで「◯◯人は✕✕だ」のような偏見になり、行為が伴うことで差別が生じる。

★☆☆ 偏見

ステレオタイプに否定的な評価や感情が加わった状態のこと。

★☆☆ 差別

自らが持つ偏見が原因となって伴う行動のこと。

☆☆☆ スティグマ (stigma)

レッテル貼り。具体的には社会的に差別されることになる要因のこと。もともとは負の烙印や汚名を意味する語。外見が異なる、言語が異なるなどの要因がスティグマになりえる。

★☆☆ カテゴリー化 (categorization)

目にした対象のパターンを最も類似した過去の記憶に基づいて、その対象の持っている属性や性質を推測することで生じる分類のこと。人は認知能力に限りがあるため、カテゴリー化より最小の認知的努力で最大の情報を得ようとする。集団はカテゴリー化されることが多く、それによって内集団と外集団の違いが鮮明となることで偏見や差別が生まれるとされる。

★☆☆ 内集団

自分が所属していると思っている集団のこと。一般に、内集団に所属している人や集団そのものに対して愛着を持つ。

★☆☆ 外集団

自分が所属していないと思っている集団のこと。一般に、外集団に対しては敵対心や対抗心、競争心を持つ。

★☆☆ 内集団バイアス

人の自分が属する集団に対して贔屓する傾向のこと。自分が批判されていなくても、自分が属する集団が批判を受けると対抗する態度を見せる(非当事者攻撃)のはこのため。この現象はネットでの炎上によく見られる。

★☆☆ ウチ

日本文化における所属感覚の分類の一つで、自分が帰属意識を持つ集団のこと。自分自身、自分の家族や友人、親友、クラス、学校、会社などがウチとなり得るが、その基準は人によって異なる。一般に、ウチの人や集団に対しては、ソトよりも好意的に接する。

★☆☆ ソト

日本文化における所属感覚の分類の一つで、自分が帰属意識を持つ集団以外の集団のこと。親族以外の人、別の会社、別の学校、別のクラスなどがソトをなり得るが、その基準は人によって異なる。一般に、ソトの人や集団に対しては、ウチよりも排他的、敵対的に接する。

 
 

文化の分類

★☆☆ C文化/ラージシー文化

文学、音楽、美術、芸術などのことで、高文化、見える文化とも呼ぶ。ブルックス (Brooks)によって名付けられた。

★☆☆ c文化/スモールシー文化

日常の習慣・行動・価値観などのことで、低文化や見えない文化とも呼ぶ。ブルックス (Brooks)によって名付けられた。

★★★ コンテクスト/文脈

文章と文章の意味的な繋がりのこと。

★★☆ 高コンテクスト文化/高文脈文化

実際に言葉として発された内容よりも、言葉にされていないのに相手が理解できる内容のほうが多い話し方をする文化のこと。言葉を発した場所や話し手と聞き手の関係、周囲の状況、それまでの言動などの要素の影響を受けて、言葉の意味内容が変わる。日本語が代表的。

★★☆ 高コンテクスト・コミュニケーション/高文脈コミュニケーション

実際に言葉として発された内容よりも、言葉にされていないのに相手が理解できる内容のほうが多い話し方のこと。言葉を発した場所や話し手と聞き手の関係、周囲の状況、それまでの言動などの要素の影響を受けて、言葉の意味内容が変わる。

★★☆ 低コンテクスト文化/低文脈文化

言葉として発された内容のみが相手に伝わる話し方をする文化のこと。ドイツ語が代表的。

★★☆ 低コンテクスト・コミュニケーション/低文脈コミュニケーション

言葉として発された内容のみが相手に伝わる話し方のこと。

 
 

異文化

★★★ 自文化中心主義 (ethnocentrism)

自文化が最も優れているという考え方で、自文化を絶対的基準として他文化を推し量ろうとする立場のこと。逆の立場に文化相対主義がある。

★★★ 文化相対主義/文化相対論 (Cultural relativism)

特定の文化は他の文化の尺度では測れないとし、文化には多様性があることを認め、それぞれの文化の間に優劣はないとする立場のこと。逆の立場に自文化中心主義がある。ボアズ (Boas)によって提唱された考え方。

★☆☆ 多言語・多文化主義

社会の中で、複数の言語が使われることを認めようとする考え方のこと。

★☆☆ 複言語・複文化主義

個人がその生活状況によって複数の言語を使い分けることを認めるという考え方のこと。従来の言語学習の目標は母語レベルにまで達することだが、個人にとって必要に応じたレベルに達すればいいとされている。

 
 

異文化トレーニング

☆☆☆ カルチャー・アシミレーター/異文化同化訓練

文化の違いを感じさせるエピソードに対する複数の解釈を通じて、人々の解釈の違いを学んでいく形式の異文化教育のこと。

★☆☆ シミュレーション・ゲーム/異文化シミュレーションゲーム

異文化を体験するためのゲーム。エコトノス、アルバトロス、バーンガ、バファバファなどがある。

☆☆☆ エコトノス

シミュレーション・ゲームの一つ。異なる3つのグループにそれぞれの習慣や価値観を与えた後、グループ同士で話し合って異文化を体験するゲーム。

☆☆☆ アルバトロス

シミュレーション・ゲームの一つ。架空の国アルバトロスを舞台にしたロールプレイ。アルバトロスでは女尊男卑の考え方が根付いており、そのような文化体験を行った後に参加者でディスカッションして気付いたことを話し合う。

☆☆☆ バーンガ

シミュレーション・ゲームの一つ。トランプを使った異文化トレーニング。異なるルールのトランプゲームがあるテーブルを回ってお互い話さずに遊ぶ。これを通して異文化を体験する。

☆☆☆ バファバファ

シミュレーション・ゲームの一つ。異なる2つのグループにそれぞれの習慣や価値観を与えた後、お互いのグループを訪れることで異文化を体験するゲーム。

 
 

異文化接触

★☆☆ コンフリクト (conflict)

お互いに相反する意見や立場などが存在することによる緊張状態が生じること。衝突・対立・軋轢を意味する言葉。集団が形成されるとコンフリクトは必ず生じ避けられない。コンフリクトには自分を見つめ直すことができるなどのプラスの面や、軋轢によってストレスを感じるなどのマイナスの面がある。

★☆☆ 異文化コンフリクト

外国人との接触などで生じる異文化間でのコンフリクトのこと。

☆☆☆ コンフリクト・マネジメント

組織においてマイナスに捉えられがちな利害の衝突・対立を組織の活性化や成長の機会と捉え、解決すること。

★★☆ ソーシャルサポート

社会的関係の中でやりとりされる学習者への支援のこと。道具的サポート、情緒的サポート、情報的サポート、評価的サポートに分けられる。

道具的サポート 問題解決のために必要な資源を提供するサポートのこと。
情緒的サポート 勇気づけたり、共感したりして情緒面に働きかけるサポートのこと。
情報的サポート 問題解決のために必要な情報を提供したり、アドバイスをするサポートのこと。
評価的サポート 相手を褒めたり励ましたりなどの肯定的な評価を与えるサポートのこと。

★☆☆ 道具的サポート

ソーシャルサポートのうち、問題解決のために必要な資源を提供するサポートのこと。

★☆☆ 情緒的サポート

ソーシャルサポートのうち、勇気づけたり、共感したりして情緒面に働きかけるサポートのこと。

★☆☆ 情報的サポート

ソーシャルサポートのうち、問題解決のために必要な情報を提供したり、アドバイスをするサポートのこと。

★☆☆ 評価的サポート

ソーシャルサポートのうち、相手を褒めたり励ましたりなどの肯定的な評価を与えるサポートのこと。

★☆☆ ピアサポート

サポート対象者と同じような立場の人によるサポートのこと。同じような課題を抱えている人を集めて話し合うことで、本人の気付きが促される。指導者は存在しないものの、ファシリテーター、カウンセラーという立場で第三者が参加することもある。

★☆☆ 文化化

個人が成長する過程で所属集団の様々な文化的要素を身につけていくこと。主に幼少期に周囲の人々やメディアなどから習慣や常識、ルール、価値観や考え方を教わることで身につけるとされる。自文化適応とも呼ぶ。

★☆☆ 文化的気づき/文化的気付き (cultural awareness)

自文化と他の文化の違いに対する気づきのこと。異なった文化を持つ人に接触したときは、その人を自分が持つ文化的尺度で判断しがちだが、自分自身がそのように判断していること自体に気付くためには、自分が持つ文化に対しての文化的気づきが必要となる。

★★☆ エポケー (epoche)

異文化で問題が発生したときに、それを深刻に捉えることなく判断を一旦保留しておくこと。

★☆☆ アサーティブ・コミュニケーション (assertive communication)

お互いの意見を尊重し合うコミュニケーションのこと。

★☆☆ ラポール (rapport)

2人の人の間にある相互信頼の関係のこと。

★☆☆ ラポート・トーク (rapport talk)

自分の主観や感想を交えて相手の情緒に働きかけることで共感を得ようとする話し方のこと。

★☆☆ 傾聴

相手の話に注意を払って丁寧に耳を傾けること。自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したいことを真摯に聴き、理解・共感することが中心となる。

★☆☆ エンパシー (empathy)

人の気持ちを思いやり、共感すること。

☆☆☆ ソーシャルスキル (Social Skill)

対人関係や社会の中での関わりを上手に維持していくためのスキルのこと。 世渡りの知恵のようなもの。

★☆☆ コーピング (coping)

ストレス要因や、それがもたらす感情に働きかけて、ストレスを除去したり緩和したりすること。飲みに行ったり、趣味に打ち込んだりすることが挙げられる。

☆☆☆ パーソナルスペース (personal space)

他人に近付かれると不快に感じる空間のことで、文化や民族によってその広さは異なる。日本人は親しい相手でも比較的広くとる傾向がある。

★☆☆ エンパワーメント (empowerment)

力をつけること、権限を与えること、自信をつけること。

★☆☆ カウンセラー (counselor)

学習者の精神的な支えとなりつつ、適切な助言を与える役割を持つ人のこと。

★★☆ ファシリテーター/促進者 (facilitator)

目的を達成させるために参加者の手助けする役目を持った人のこと。異文化トレーニングで重要な役割を持つ。

★☆☆ ジャーナル・アプローチ (journal approach)

学習者の学習や異文化について思っていることや問題点を自由に書くことで、本人にその原因などを気付かせる方法。学習者が書いたものをジャーナルと呼び、それらを教師や援助者と共有することでフィードバックを与え、お互いの相互理解を深めることに用いる。

★☆☆ ジャーナル (journal)

ジャーナル・アプローチにおける、学習者が書いたもののこと。





日本語教育能力検定試験 解説, 用語集