記憶と知識について

目次

 

記憶

★★★ 二重貯蔵モデル (Multi Store Model of Memory/dual storage model)

アトキンソン(Atkinson)とシフリン(Shiffrin)が提唱した、人間の記憶には短期記憶と長期記憶があるという考え方のこと。現在では短期記憶の概念を更に発展させ、ワーキングメモリ(作動記憶)の概念を用いるのが主流となっている。

☆☆☆ 感覚記憶

目や耳などの感覚器から受け取った刺激を情報として一時的に保持しておくための記憶領域。通常意識されないものだが、意識的に注意を向けることでインプットとなり、ワーキングメモリに移行する。

★★☆ インプット/入力 (input)

視覚的・聴覚的な外部刺激(感覚情報)に対して意識的に注意を向けること。これによって情報がワーキングメモリに移行する。

★☆☆ インテイク (intake)

インプットのうち、意味理解がなされたもののこと。中間言語に取り入れられ、中間言語の再構築を促す。

★★★ ワーキングメモリ/作動記憶 (working memory)

「記憶には短期記憶と長期記憶があるという考え方」の二重貯蔵モデルで示された短期記憶には、ある情報をとどめつつも並行して長期記憶にアクセスしたり、別の情報を加えたりする情報処理の役割が備わっているという考え方のこと、またはその情報処理を行う作業領域のこと。作動記憶や作業記憶とも呼ばれる。短期記憶の概念から更に発展させた概念で、現在では主流となっている考え方。ワーキングメモリに貯蔵された情報は15秒~30秒ほど保持するといわれており、それらの情報が長期記憶に転送されなければワーキングメモリ上から消され、忘却が生じる。

★★☆ 短期記憶 (short-term memory)

アトキンソン (Atkinson)とシフリン (Shiffrin)が提唱した二重貯蔵モデルで提唱された概念。一時的かつ短期的な情報が貯蔵されている容量の限られた記憶領域のこと。現在では短期記憶の概念を更に発展させ、ワーキングメモリ(作動記憶)の概念を用いるのが主流となっている。短期記憶に貯蔵された情報は15秒~30秒ほど保持するといわれている。

★☆☆ 符号化/記銘

インプット(入力)によってワーキングメモリに入ってきた情報を、記憶に残すための形や音に変換し、貯蔵できるようにすること。

★☆☆ 転送

ワーキングメモリにある情報を、長期記憶へ移行すること。

★☆☆ 貯蔵

ワーキングメモリから転送された情報を長期記憶で保持すること。

★★☆ 長期記憶 (long-term memory)

アトキンソン (Atkinson)とシフリン (Shiffrin)が提唱した二重貯蔵モデルで提唱された概念。長期的かつ半永久的な情報が貯蔵されている容量に限界のない記憶領域のこと。

★☆☆ 検索

長期記憶から求める情報を探して取り出すこと。

★★☆ アウトプット/出力/産出 (output)

長期記憶から取り出した情報を音声や文字として産出すること。

★☆☆ 外国語副作用 (Foreign language side effect)

学習者が学習中の第二言語を用いているとき、処理資源(ワーキングメモリの処理能力)をその第二言語の処理にとられるため、知的レベルが全般的に低下する心理現象のこと。

★☆☆ 宣言的記憶/宣言的知識 (Declarative memory)

言語化できる知識のこと。個人的な経験や思い出などの一連の出来事に関するエピソード記憶と、言葉の意味や一般的な知識などの意味記憶の2つに分けられる。

★☆☆ 意味記憶 (semantic memory)

宣言的記憶のうち、言葉の意味や一般的な知識などの記憶のこと。

★☆☆ エピソード記憶 (episodic memory)

宣言的記憶のうち、個人的な経験や思い出などの一連の出来事に関する記憶のこと。

★☆☆ 手続き的記憶/手続き的知識 (Procedural memory)

言語化できない知識のことで、体で覚えた記憶のことで、そのやり方について言語化して説明できない記憶を指す。

★☆☆ 自動化

宣言的記憶が手続き的記憶に移行することによって、意識して使っていた表現などが無意識に使えるようになること。

★☆☆ 明示的知識 (explicit knowledge)

説明されたり教科書を読んだりして獲得した、規則性などをはっきり言語化して分析的に説明できる知識のこと。授業で得られる知識などが挙げられる。

★☆☆ 暗示的知識 (declarative knowledge)

言葉で明確に説明ができない、無意識に現れる感覚的な知識のこと。母語のように説明されなくても自然に獲得できるため、一般に知識として認識されることはない。

★☆☆ 記憶の干渉

ある記憶が他の記憶によって影響されること。対義語や類義語などの互いに類似した記憶ほど干渉が起こりやすい。

★☆☆ カクテル・パーティ効果 (cocktail party effect)

雑音がひどい環境の中でも、自分に必要な事柄だけを選択して聞き取ったり、見たりできる現象、またはその選別能力のこと。

 
 

記憶する方法

★★★ リハーサル (rehearsal)

インプットされた情報を忘れないようワーキングメモリ上にとどめておいたり、長期記憶に転送するために用いる方法のこと。維持型リハーサル(維持リハーサル)と精緻化リハーサルに分けられる。

★★☆ 維持型リハーサル/維持リハーサル (maintenance rehearsal)

インプットされた情報を忘れないようワーキングメモリ上にとどめるための方法のこと。忘れないように何度も復唱したり、口ずさんだりすることなどが挙げられる。

★★☆ 精緻化リハーサル (elaborative rehearsal)

インプットされた情報を長期記憶に転送するための方法のこと。インプットされた情報を長期記憶に貯蔵されている既有知識と関連付けたり、関連する場面や状況をイメージしたりすることが挙げられる。

☆☆☆ チャンキング (chunking)

覚えるべき対象をいくつかのかたまりに分けて覚えやすくすること。人が短期記憶として一度に覚えられるものは4~7個の情報だとされており、それ以上覚えておくために必要となる。

☆☆☆ チャンク (chunk)

心理学者ミラーが提唱した認知心理学の用語で、人間が知覚する情報のまとまりの単位のこと。人が短期記憶として一度に覚えられるものは4~7個の情報だとされている。

☆☆☆ 生成効果

記憶を定着させるための方法の一つ。自分で問題を作ったり解いたりする方法のこと。

☆☆☆ 体制化

記憶を定着させるための方法の一つ。単語などを分類し、整理すること。

☆☆☆ 二重符号化

視覚情報と聴覚情報を統合し、お互いに関連付けること。例えば、単語を覚える際に、スペルを見ながら読み上げるなど。単に見たり、読んだりするよりも記憶に残りやすい。

★☆☆ 自己関連付け効果

新しい情報を自己と関連させて処理することで、他者に関連させて処理した場合よりも情報は深く処理され、記憶が促進されるという記憶現象のこと。

 
 

スキーマ

★★★ スキーマ (schema)

具体的な特徴を取り除いた、抽象的な知識構造のこと。その話題に関して既に持っている知識のこと。

★☆☆ フレーム (frame)

ある概念を理解するために必要な前提となる知識構造のこと。例えば、「帰省ラッシュ」という言葉は「多くの人がお盆や年末などに故郷へ帰省する」という背景知識があってようやく理解することができ、物事を理解するための前提となっている。

★☆☆ スクリプト (script)

一連のスキーマの流れのこと。例えば、「レストランでは、入店して、席に座り、注文して、食べて、会計し、退店する」のような一連の手続き的な知識を指す。

★☆☆ 形式スキーマ

文法などの言語形式に関する知識のこと。

★☆☆ 内容スキーマ

読み手自身の経験や知識などから構成された社会的・文化的な内容の背景知識のこと。







日本語教育能力検定試験 解説, 用語集