誤用とフィードバックについて

目次

 

誤用

★★★ ミステイク (mistake)

ついつい間違ってしまったというタイプの誤用のこと。本人もその間違いにすぐ気づいて訂正することができる。

★★★ エラー/誤り (error)

言語能力が不足していることによって起きる誤用のこと。誤りの程度によってグローバル・エラーとローカル・エラーの2つに分けられ、その原因によって言語間エラー、言語内エラー、プラグマティック・トランスファーの3つに分けられる。

★★★ グローバルエラー/全体的な誤り (global error)

エラーのうち、相手とのコミュニケーションに大きな支障が出るエラーのこと。

★★★ ローカルエラー/局部的な誤り (local error)

エラーのうち、相手とのコミュニケーションに影響が少ないエラーのこと。

★★★ 言語間エラー/言語間の誤り (interlingual error)

エラーのうち、母語による影響で生じた、語用論的誤りを含める文法的な誤りのこと。

★★★ 言語内エラー/言語内の誤り (intralingual error)

エラーのうち、第二言語の学習の不完全さから生じた、語用論的誤りを含める文法的な誤りのこと。

★★☆ 過剰般化/過剰一般化 (stereotype induced error)

文法的な規則を他のところにも過剰に適用することによって起きる言語内エラーの一種。例えば「安くはありません」を「安いではありません」と言うのは、ナ形容詞の規則をイ形容詞に適当したために生じていると考えられる。

☆☆☆ 簡略化

言語規則を単純化させることによって起きる言語内エラーの一種。

★★★ プラグマティック・トランスファー/語用論的転移 (pragmatic transfer)

エラーのうち、母語による影響で生じた文法的な誤りのない語用論的誤りのこと。例えば、英語母語話者が友人を夕食に誘う際に、英語の「Would you like to go to dinner?」をそのまま直訳して「夕食行きたいですか?」という表現を用いることなどが挙げられる。特定の場面でどのような語や表現を用いるべきかは、その言語を使用するコミュニティの社会的な習慣として決められ、制約を受けている。

★★☆ 母語の転移/言語転移/転移/母語転移/母語の干渉 (Language transfer)

学習言語の学習過程において、母語の規則を学習言語に適用すること。母語と学習言語との間に何らかの共通点があり、それが学習を促進させる場合の転移を正の転移、逆に母語と学習言語との間の差異が著しく、学習言語の習得を妨げる場合の転移を負の転移と呼ぶ。転移は単語、文法、文字、音声などに発生する。

★★☆ 正の転移 (positive transfer)

母語と学習言語との間に何らかの共通点があり、それが学習を促進させる場合の転移。単語、文法、文字、音声などに発生する。

★★☆ 負の転移 (negative transfer)

母語と学習言語との間の差異が著しく、学習言語の習得を妨げる場合の転移。単語、文法、文字、音声などに発生する。

★☆☆ 逆行/バックスライディング (backsliding)

第二言語習得過程において、一度修正された誤用が、緊張や不安などの原因によって再び現れること。

★☆☆ 化石化 (fossilization)

エラーが修正されないまま定着してしまうこと。

★☆☆ 定着化 (stabilization)

間違いのない言語使用ができるようになることを指す。

★☆☆ U字型発達曲線 (U-shaped development)

一度産出できるようになってから誤用産出の段階に戻り、再び正用を産出できるようになる言語習得の過程を表した曲線のこと。

☆☆☆ 訓練上の転移/訓練の転移 (transfer of training)

教師による不適切な指導が原因で生じる学習者のエラーのこと。

 
 

フィードバック (feedack)

★★★ フィードバック (feedack)

学習者の発話に対して何らかの反応を示すこと。また、コミュニカティブ・アプローチにおける相手の反応のこと。コミュニカティブ・アプローチでは、コミュニケーションの本質として活動に盛り込まれる。

★★☆ 肯定的フィードバック (positive feedback)

学習者の発話や書いたものに対して肯定的な反応を示すこと。例えば、褒めたりすること等が挙げられる。

★★☆ 否定的フィードバック/訂正フィードバック (negative feedback)

学習者の誤った発話や書いたものに対して否定的な反応を示し、訂正すること。明示的フィードバックと暗示的フィードバックに大別される。

★★★ 明示的フィードバック/明示的訂正 (explicit correction)

学習者に誤用の存在を直接はっきりと示して訂正する方法のこと。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「『美しい』はイ形容詞なので、『美しかった』ですよ」と修正することなどが挙げられる。

★★★ 暗示的フィードバック/暗示的訂正

学習者に誤用の存在を間接的に示して訂正する方法のこと。リキャストとプロンプトの2つに分けられる。

★★★ リキャスト (recast)

自然な応答の中でさりげなく訂正する暗示的フィードバックの一種。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「そうですか。美しかったですか」と、会話の流れを遮ることなく訂正することなどが挙げられる。

★☆☆ プロンプト (prompt)

学習者に自己修正を促す暗示的フィードバックの一種。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「美しいでした?」と間違いがあることに気付かせ、学習者が正しい発話をするよう促すことなどが挙げられる。

☆☆☆ 口頭訂正フィードバック

口頭による訂正フィードバックのこと。

☆☆☆ ライティング・フィードバック (written corrective feedback)

書いたものに対するフィードバックのこと。

★☆☆ 肯定証拠 (positive evidence)

第二言語学習者に与えられるインプットのうち、学習者が実際に見たり聞いたりする正しい文法を用いた表現のこと。授業や母語話者などから受け取るインプットの大半を占める。

★☆☆ 否定証拠 (negative evidence)

第二言語学習者に与えられるインプットのうち、誤った文法のこと。授業や母語話者などから受け取るインプットは通常肯定証拠が大半を占めるため、否定証拠はインプットとして通常起こらない。ただし、第二言語学習者にとっては、誤った文法は指摘されなければ誤ったものだと気づくことができないことが多いため、学習者に否定証拠を与えることはフィードバックとして捉えられることもある。





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