ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて

 述語の後ろに形態素を付加することによって様々な文法的な意味を表すものとして、ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティの4つの文法カテゴリーに分けられる。これらは常にこの順で動詞に後続する。

 

ヴォイス/態 (voice) ★★★

 述語の後ろに形態素を付加することによって動詞の形を変える文法カテゴリーの一つで、受身、自発、可能、使役などに関わる意味関係や文法関係の対応を示す概念のこと。動詞の表す行為を行為者側から見るか、行為の対象側から見るかで区別される。その際、動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる。

 

★★☆ 能動態

 他動詞が表す動作の主体を主語とし、他動詞が表す動作の対象を目的語とする文のこと。ヴォイスには含まれない。

 

★★☆ 受動態

 能動態「妹がケーキを食べる」に対する「(私が)妹にケーキを食べられる」のこと。動詞の後に「れる」「られる」がつき、動作の受け手にはガ格、動作主にはニ格が据えられる。ただし、受動態と能動態が対応するのは直接受身文のときだけで、間接受身文のときは対応する能動文は存在しない。
 詳しくは別記「日本語の受身文の種類」を参照。

 

★☆☆ 使役態

 「息子が掃除する」に対する「(母が)息子に掃除させる」のこと。動詞の後ろに「せる」「させる」がつき、使役主にはガ格、動作主にはニ格やヲ格が据えられる。ヲ格を使うほうが強制力が強くなる。

 

★☆☆ 使役受動態

 「私が早退する」に対する「(私が)先生に早退させられた」のこと。動詞の後ろに「させられる」がつき、動作主にはガ格、使役主にはニ格が据えられる。

 

★★☆ 可能態

 「彼がギターを弾く」に対する「彼がギターを弾ける」「彼にギターが弾ける」「彼がギターが弾ける」のこと。動詞の後ろに「れる」「られる」がつく。可能文の格表示は[-ガ-ヲ格]、[-ニ-ガ格]、[-ガ-ガ格]の3つあるため、動作主と目的語の格表示はお互いに対応している。

 

★☆☆ 自発態

 能動態「鳴き声を聞く」に対する「猫の鳴き声が聞こえる」、「私はそう思う」に対する「私にはそう思われる」のこと。自発態は動作が他からの影響を受けずに自然に起こることを表す。動詞の後ろに「れる」「られる」がつき、動作主にはニ格、目的語にはガ格が据えられる。

 

アスペクト/相 (aspect) ★★★

 述語の後ろに形態素を付加することによって述語が表す事象の完成度を表す文法カテゴリーの一つ。一つの動作が行われる過程では、直前、開始、現在進行、完了、完了直後、完了後の状態など様々な段階が考えられ、その動作がどの段階にあるのかを指し示す

直前 荷物を置くところ
開始 荷物を置く
現在進行 荷物を置こうとしている
完了 荷物を置いた
完了直後 荷物を置いたばかり
完了後の状態 荷物が置いてある

 

テンス/時制 (tense) ★★★

 述語の後ろに形態素を付加することによって時間を表す文法カテゴリーの一つ。日本語では、ル形が現在と未来を表し、タ形が過去を表す

過去 現在 未来
食べた 食べる 食べる

 

★☆☆ 絶対テンスと相対テンス

 絶対テンスとは発話時との時間的前後関係のみで決まるテンスのことで、相対テンスとは発話時との時間的前後関係を表さず、主節時との時間的前後関係で決まるテンスのこと。主節のテンスは絶対テンス、従属節のテンスは相対テンスとなる。

(1) 彼は「試験に合格した」と言っていた。
(2) 彼は「絶対合格してやる」と言っていた。

 例文(1)の主節「彼は言っていた」は発話時よりも過去の出来事なのでタ形を用いており、一方、従属節の「試験に合格した」は、主節の「言う」という動作が行われたときよりも前に起きた出来事なのでタ形を用いている。

 例文(2)の主節「彼は言っていた」は発話時よりも過去の出来事なのでタ形を用いていおり、一方、従属節の「絶対合格してやる」は、主節の「言う」という動作が行われたときよりも未来に起こる出来事なのでル形を用いている。

 

モダリティ/ムード/法 (mood) ★★★

 述語の後ろに形態素を付加することによって命題に対する認識や判断や聞き手に対する態度を表す文法カテゴリーの一つ。ここでの命題とはその文における客観的な内容の部分のことであり、命題に対する認識や判断を表すものの対事的モダリティと、聞き手に対する表現の対人的モダリティに分けられる。なお、対人的モダリティは主に終助詞のことを指す。

(3) 彼はもう戻ってこないかもしれないね。
(4) 素直に行きたいって言えばいいのにな。

 例文(3)の「かもしれない」が対事的モダリティ、終助詞「ね」が対人的モダリティにあたる。

 モダリティは話し手の主観を表し、次のような表現がある。

対事的モダリティ 対人的モダリティ
~かもしれない、~だろう、~らしい、~みたい、~ようだ、~べきだ、~ことだ、~ものだ、~はずだ、~と思う、~に違いない、~に決まっている… よ、ね、よね、ぞ、っけ、かな、な…




日本語教育能力検定試験 解説, 用語集