平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

 直示/直示表現/ダイクシス (deixis)とは、発話現場にいなければ意味が成立しない言葉の性質のこと。例えば「これは美味しい」と言う時、その場にいる人は「それ」が何を指しているか理解できるものの、その場にいなければ「それ」が何なのかを特定することはできない。時間の直示、場所の直示、人称の直示、談話の直示、社会的直示の5つに分類される。

時間の直示 今日、昨日、明日、来月、来年などの時間を指定するもの。
場所の直示 ここ、そこ、あそこ、上、下、左、前などの場所を指定するもの。
人称の直示 私、あなた、彼、彼女、お母さん、社長などの人物を指定するもの。「私」は話す人によってそれが指す人物が異なる。
談話の直示 「さっきの話」「そのこと」などの文の一部や文全体を指定するもの。
社会的直示 敬語で表される人間関係の社会的な立場の違いなどのこと。

 

問1 時間の直示

 選択肢1
 「翌週」はある時点を基準とする絶対時間名詞と相対時間名詞の中間的な性質を持つ時間名詞です。
 「翌週」はある任意の時点の次の週を指します。発話現場にいなくても分かります。

 選択肢2
 「明日」は今を基準とする相対時間名詞です。
 発話場面において「明日遊びに行こう」と言えば、「明日」が指しているのは「発話時点の次の日」であることが分かりますが、実際に発話場面にいなければ分かりません。

 選択肢3
 「2013年」は時間を直接指定する絶対時間名詞です。直示ではありません。

 選択肢4
 「6分間」は時間を直接指定する絶対時間名詞です。直示ではありません。

 したがって答えは2です。

 参考:相対時間名詞と絶対時間名詞からみる「明日」と「翌日」の違い

 

問2 談話の直示

 1 「それ」は談話の直示です。
 2 「その」は場所の直示です。
 3 「あの」は時間の直示です。
 4 「あれ」は場所の直示です。もともとは食べ物を指している直示表現が、場所の直示として使われています。

 したがって答えは1です。

 

問3 ある直示表現が別の直示表現として使われるもの

 1 「次」は本来時間に従って並べられた順序における一つ後を表しますが、ここでは話題にあがっている行列そのものを表しており、時間の直示が談話の直示として使われています。
 2 「この間」は本来2つの地点の中間を表しますが、ここでは以前の出来事のことを表しており、場所の直示が時間の直示として使われています。
 3 「あちら」は本来場所を表しますが、ここでは課長を指しており、場所の直示が人称の直示として使われています。
 4 「お前」は人称の直示です。

 したがって答えは4です。

 

問4 直示の体系

 1 正しいです。社長や部長、先生などは、その役職名で呼ぶのが一般的です。
 2 他の言語については分かりませんが、少なくとも中国語には尊敬語や謙譲語にあたるものはありません。
 3 他の言語については分かりませんが、少なくとも中国語では「それ」と「あれ」が同じ「那」で表されます。日本語とは異なり、2つの対立です。
 4 日本語には幼児が使用する専用の自称詞はありません。通常幼児が初めて使う自称詞は自分の名前で、そこから「私」や「僕」に変わっていきます。

 したがって答えは1です。

 

問5 誤用の原因が直示に関わらない例

 1 「行く」というべきです。「来る」と「行く」は今いる場所によって変わる表現で、発話現場に依存した直示表現といえます。
 2 「いらっしゃいますか」というべきです。直示とは関係なく、敬語の活用が間違っているだけです。
 3 「こちら」というべきです。人称の直示に関わる誤りです。
 4 不要な「に」がある誤りです。「昨日」のような今を基準とした相対時間名詞はニ格をとりません。時間の直示に関わる誤りです。

 したがって答えは2です。

 





平成25年度, 日本語教育能力検定試験 解説