平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題10解説

 学習ストラテジーは、言語学習に用いる言語学習ストラテジーと、コミュニケーションを成立させるために用いるコミュニケーション・ストラテジーの2つに分けられる。

 言語学習ストラテジーとは、学習する際に用いるストラテジーのことで、記憶、認知、補償、メタ認知、情意、社会的の6つに分類される。目標言語に直接かかわる記憶ストラテジー、認知ストラテジー、補償ストラテジーの3つを直接ストラテジー、言語学習を間接的に支えるメタ認知ストラテジー、情意ストラテジー、社会的ストラテジーの3つを間接ストラテジーと呼ぶ。

分類 種類 説明
直接 記憶 記憶するために用いられるストラテジーのこと。知識と知識の知的連鎖を作ったり、語呂合わせなどで音やイメージを結びつけたり、繰り返し復習したり、単語カードを使ったりなどが挙げられる。
認知 理解を深めるために用いられるストラテジーのこと。メモしたり、線引きしたりなどが挙げられる。
補償 足りない知識を補うために用いるストラテジーのこと。分からない言葉を文脈から推測したりするなどが挙げられる。
間接 メタ認知 言語学習を間接的に支える間接ストラテジーのうち、学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジーのこと。学習のスケジューリングをしたり、目標を決めたりすることなどが挙げられる。
情意 学習者が自らの感情や態度や動機をコントロールするために用いるストラテジーのこと。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりすることなどが挙げられる。
社会的 学習に他者が関わるストラテジーのこと。質問をしたり、他の人と協力することなどが挙げられる。

 コミュニケーション・ストラテジーとは、自分の言語能力が不足しているときのコミュニケーションを達成するために学習者が用いるストラテジーのこと。回避、言い換え、意識的転移、助言要請(援助要請)、物まね(ジェスチャー)、時間稼ぎの6つに分けられる。

種類 説明
回避 語彙力や文法力が原因で表現できない際に他の話題を選んだり、中断すること。
言い換え 知らない語を、それに似た別の語で表現したり、新しく語を作ったりして説明すること。
意識的転移 母語や他の言語に依存して説明すること。
助言要請 辞書を使ったり、分からない言葉をネイティブに質問して教えてもらうこと。
物まね 身振り手振りなどの非言語手段で伝えること。
時間稼ぎ ポーズを挟んで考える時間を稼ぐこと。

 

問1 認知ストラテジー

 1 メタ認知ストラテジー
 2 社会的ストラテジー
 3 認知ストラテジー
 4 情意ストラテジー

 したがって答えは3です。

 

問2 メタ認知ストラテジー

 1 コミュニケーション・ストラテジーの言い換えです。
 2 コミュニケーション・ストラテジーの助言要請です。
 3 言語学習ストラテジーの補償ストラテジーです。
 4 自分自身をモニターするような行動を取っているので、メタ認知ストラテジーです。

 したがって答えは4です。

 

問3 社会情意的ストラテジー

 社会的ストラテジーは、他の人と協力したり、助けてもらったりするストラテジーです。各選択肢のうち、他者と関係しているのは1です。
 したがって答えは1です。

 

問4 ストラテジー・トレーニング

 1 どちらも大事です。
 2 どのように推測したかをクラスで共有することは、補償ストラテジーのトレーニングになります。
 3 自分がどのストラテジーを使えているのか、使えていないのかを知ることは、ストラテジー・トレーニングの一環となります。
 4 内容を予測するのは、補償ストラテジーのトレーニングになります。

 したがって答えは1です。

 

問5 コミュニケーション・ストラテジーが言語習得に有利に働く理由

 1 自分自身が持つ中間言語のある知識が正しいかどうかを仮説検証するためにコミュニケーション・ストラテジーが役立ちます。
 2 コミュニケーション・ストラテジーによって理解できなかったインプットが理解可能になることがあります。
 3 コミュニケーション・ストラテジーによって自信のない表現を回避できるようになりますが、それは言語習得に有利に働きません。
 4 コミュニケーション・ストラテジーによって意味交渉の機会が増えます。

 したがって答えは3です。

 





平成24年度, 日本語教育能力検定試験 解説