平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題10解説

問1 アスペクト

 1 モダリティ/ムード/法 (mood)
 述語の後ろに形態素を付加することによって命題に対する認識や判断や聞き手に対する態度を表す文法カテゴリーの一つ。ここでの命題とはその文における客観的な内容の部分のことであり、命題に対する認識や判断を表すものの対事的モダリティと、聞き手に対する表現の対人的モダリティに分けられる。対人的モダリティは主に終助詞のことを指す。
 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて - モダリティ/ムード/法 (mood)

 2 テンス/時制 (tense)
 述語の後ろに形態素を付加することによって時間を表す文法カテゴリーの一つ。日本語では、ル形が現在と未来を表し、タ形が過去を表す。
 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて - テンス/時制 (tense)

 3 ヴォイス/態 (voice)
 述語の後ろに形態素を付加することによって動詞の形を変える文法カテゴリーの一つで、受身、自発、可能、使役などに関わる意味関係や文法関係の対応を示す概念のこと。動詞の表す行為を行為者側から見るか、行為の対象側から見るかで区別される。その際、動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる。
 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて - ヴォイス/態 (voice)

 4 アスペクト/相 (aspect)
 述語の後ろに形態素を付加することによって述語が表す事象の完成度を表す文法カテゴリーの一つ。一つの動作が行われる過程では、直前、開始、現在進行、完了、完了直後、完了後の状態など様々な段階が考えられ、その動作がどの段階にあるのかを指し示す。
 参考:ヴォイス・アスペクト・テンス・モダリティについて - アスペクト/相 (aspect)

 状態の持続を表す「ている」を用いて、「着ている人」とするべきです。
 したがって答えは4です。

 

問2 フィードバック

 教授法は、大きく3つの言語習得観で分けられます。

 フォーカス・オン・フォームズ (FonFs:Focus on Forms)
 文法に焦点を当てた教授法のこと。教室において、教師が中心となり、文法規則等を最初から手取り足取り正確に教え込む方法をとる。機械的なドリル練習などを多用するが、文法的な正確さを重視しているため、かえって流暢さが身につかないとされている。オーディオリンガル・メソッドや文法訳読法などが代表的。

 フォーカス・オン・ミーニング (FonM:Focus on Meaning)
 意味に焦点を当てた教授法のこと。学習者が中心となって多く聴き、多く読むのが特徴的だが、この時、教師による介入が完全に行われない。意味を重視することによってコミュニカティブに言語習得できるが、流暢さを身につけることはできても、文法的な正確さが身につかないとされている。ナチュラル・アプローチやイマージョン教育などが代表的。

 フォーカス・オン・フォーム (FonF:Focus on Form)
 FonFsの流暢さが身につけられない欠点と、FonMの文法的な正確さが身につけられない欠点を互いに補うために考案された教授法のこと。コミュニケーションの中で文法的な知識を学習していこうという考え方に基づき、教室においてはFonMと同様に学習者が中心となるが、必要があれば教師は介入する。何らかのトピックやテーマを用いることで、文法そのものに焦点を置かずに意味中心とするが、教師によるプロンプトやリキャストでフィードバックを行うことにより、その中で学習者の注意が文法形式に向くような工夫がある。FonFsのように文法説明を始めたり、機械的なドリル練習をすることはなく、最終的には学習者の気付きによって文法知識の習得を促す。

 明示的フィードバック/明示的訂正とは、学習者に誤用の存在を直接はっきりと示して訂正する方法のこと。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「『美しい』はイ形容詞なので、『美しかった』ですよ」と修正することなどが挙げられる。

 リキャスト (recast)とは、自然な応答の中でさりげなく訂正する暗示的フィードバックの一種。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「そうですか。美しかったですか」と、会話の流れを遮ることなく訂正することなどが挙げられる。

 したがって答えは4です。

 

問3 リキャスト

 「この赤い服を着ている人ですか」はリキャストです。
 リキャスト (recast)とは、自然な応答の中でさりげなく訂正する暗示的フィードバックの一種。例えば、学習者の「富士山は美しいでした」という誤用に対して、「そうですか。美しかったですか」と、会話の流れを遮ることなく訂正することなどが挙げられる。

 1 誤用は、ついつい間違えてしまったというタイプのミステイクと、間違えて覚えてしまっているために起こるタイプのエラーに分けられますが、ミステイクはつい間違えてしまったために、自分でその間違いに気付けます。
 2 正しいです。リキャストは暗示的なフィードバックなので、フィードバックを受けていること自体に気付かない場合もあります。
 3 遮るようなことはありません。
 4 リキャストは話の流れを遮りません。

 したがって答えは2です。

 

問4 「赤いの服」

 1 「食べているの人」のように、動詞を修飾する場合にも観測される誤用です。
 2 中国語母語話者は確かにこのような誤用が多いですが、中国語母語話者特有ではありません。
 3 幼児期にこのような誤用が見られることがありますし、学習者にとっては母語による転移の可能性もあります。
 4 選択肢3で述べたように、第一言語習得でも見られます。

 したがって答えは3です。

 

問5 明示的フィードバック

 明示的フィードバックとは、学習者がした誤用を直接はっきりと示して訂正する方法のことです。

 1 明示的フィードバック
 2 明示的フィードバック
 3 リキャスト
 4 明示的フィードバック

 したがって答えは3です。

 





平成23年度, 日本語教育能力検定試験 解説