平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題9解説
問1 マイノリティ
マイノリティ(minority)とは、少数派という意味です。
対義語はマジョリティ(majority)です。
1 その社会の権力関係における位置を表すものなので、グローバル化以前からある概念と言えます。
2 正しいです。マジョリティあってこそのマイノリティ、その逆もしかりです。
3 マイノリティは少数派として、自分のアイデンティティに対して向き合うことが多いです。
4 マジョリティは多数派に位置する為、世論を形成しやすい性質があります。このような「特権」を有していることに気付かないのはマイノリティではなくマジョリティです。
したがって答えは2です。
問2 自文化中心主義(ethnocentrism)
文化相対主義/文化相対論とは、特定の文化は他の文化の尺度では測れないとし、文化には多様性があることを認め、それぞれの文化の間に優劣はないとする立場のこと。逆の立場に自文化中心主義がある。ボアズ (Boas)によって提唱された考え方。
自文化中心主義 (ethnocentrism)とは、自文化が最も優れているという考え方で、自文化を絶対的基準として他文化を推し量ろうとする立場のこと。逆の立場に文化相対主義がある。
したがって答えは2です。
問3 過度のカテゴリー化
カテゴリー化とは、目にした対象のパターンを最も類似した過去の記憶に基づいて、その対象の持っている属性や性質を推測することで生じる分類のこと。人は認知能力に限りがあるため、カテゴリー化より最小の認知的努力で最大の情報を得ようとする。集団はカテゴリー化されることが多く、それによって内集団と外集団の違いが鮮明となることで偏見や差別が生まれるとされる。
また、人は自分が属する集団に対して贔屓する傾向があり、これを内集団バイアスという。自分が批判されていなくても、自分が属する集団が批判を受けると対抗する態度を見せる(非当事者攻撃)のはこのため。この現象はネットでの炎上、延焼によく見られる。
1 「ゆとり世代」に対しても多様なタイプがあることを認めているので、過度のカテゴリー化ではありません。
2 特定個人への属性を述べているだけなので、カテゴリー化ではありません。
3 「今の中学生」に対する偏見があります。過度のカテゴリー化といえます。
4 箸を使うことは間違いのない事実です。過度のカテゴリー化ではありません。
したがって答えは3です。
問4 平成29年末現在における日本国内の在留外国人の状況
(1) 中国 730,890人 (構成比28.5%) (+ 5.1%)
(2) 韓国 450,663人 (構成比17.6%) (- 0.5%)
(3) ベトナム 262,405人 (構成比10.2%) (+31.2%)
- 法務省:平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)より
したがって答えは1です。
問5 異文化接触場面
1 正しいです。多国籍の学習者同士が1から何かを作り上げる過程で異文化接触が生じます。
2 自分のことを伝えるだけなので、異文化接触場面とは言えません。
3 スポーツは全世界共通のルールに基づくものなので、異文化接触場面とは言えません。
4 調べて発表するだけでは異文化接触場面とは言えません。
したがって答えは1です。